ステラおばさんじゃねーよっ‼️77.コナモン・パーティ〜今じゃない
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️77.コナモン・パーティ〜一挙両得 は、こちら。
🍪 超・救急車
ダイニングテーブルには、たこ焼とお好み焼を作るのに必要な具材や取り皿、箸、グラス他が所狭しと、めいめいに置かれていた。
酒の肴は、アボカドとサーモンのレモンドレッシングサラダやブロッコリーとベーコンのガーリックソース炒めで、知波が作った。
カイワレは正月に作った例のピンチョスを、ふたたび作った。
歩は生ハムで白桃を包み、カッテージチーズを上からまぶしかけた、ワインに合うツマミを作った。
そして高価なシャンパンを差し入れてくれた若森は、シャンパングラスを片手に、
「ええー、本日は御日柄も良く〜」
と挨拶ボケを始めだしたので、カイワレが代わりに、
「それでは、ポーちゃん、ひかりさん、御結婚おめでとう!」
と若森の言葉をさえぎり、乾杯の音頭を取った。
「カンパーイ⭐︎」
全員で言うと一気にお酒やジュース、お茶を飲み干し、拍手した。
「みなさん、ありがとうございます♪」
と言いながら、ポーちゃんは照れ臭そうに挨拶した。
ひかりは相変わらず微笑みをたたえながら、静かに皆の目をしっかりと見つめ、会釈とともに感謝の念を送っていた。
⭐︎
「今日はね、ひかちゃんがあまり普段食べないけど美味しい料理って事で、コナモン料理にしてみましたー!」
と歩が言うと、ひかりは、
「あゆちゃんも手伝ってくれたの?嬉しいわ!」
とひかりが応えた。
すると歩は、
「だって、わたしにとってひかちゃんは憧れのお姉さんなんだもん」
と恥ずかしそうに言った。
「あらそんな事言われたら、わたし…」
と言い、ひかりは涙腺がゆるみ涙ぐんでしまった。
すると知波がすかさず、
「どうぞ」
とハンカチをひかりに差し出した。
それを受け取り、ひかりは歩にハグを要求した。
歩はすぐにひかりの元へ飛んで行き、ふたりはきつく熱い抱擁を交わした。
「ねぇー!歩ちゃん、それ僕の役目だから!」
とポーちゃんは歩に食って掛かってきたが、
「えへへ…」
と泣き笑い、歩はひかりに身を委ねた。
⭐︎
それぞれが、それぞれの想いを持ち、このパーティに臨んだ。
若森の焼いたたこ焼やお好み焼は、とても好評でひかりから、
「もしたこ焼き屋さんやるならば、出資しますよ」
とまで言わしめた。
宴の盛り上がりも一段落したので、外の風に当たりたくて、カイワレと若森はバルコニーに出た。
そこに在るミニチェアにふたりはそれぞれ腰掛け、ミニテーブルに置かれていた赤ワインを開けながら若森は言った。
「カイちゃん、良かったな…」
酔いが廻り、感極まったのか若森が静かに泣き出した。
「…若森さん、飲み過ぎですよ」
というカイワレの瞳も見る見るうちに、湿っていった。
「何だかさ…家族って、わからないもんだな」
赤ワインをグラスに注ぎながら、若森はカイワレにそれらのひとつを差し出した。
「そうですね。1年前の僕には、到底想像もできなかった現実が、今目の前にあったりしますから」
ワインを一口含み、カイワレは口内をふたたび潤した。
「なあ、カイちゃん…こんな時になんだが…」
と勿体つけて若森が言うから、カイワレは心配になり、
「どうしました?若森さん!?」
と応えると、
武骨なライターをカチリ、カチリとやり、火を点けながら、
「嗚呼もう…限界…!ここって禁煙?」
と若森は絞り出すように声を出した。
カイワレは一瞬心配した自分にむかつきを覚えたが、
「いいですよ。灰皿になるようなもの、持ってきます」
と言い、カイワレはリビングへ戻っていった。
若森はワインを口の中で転がしながら心の中で、
「今じゃない…」
と呟いた。
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