
ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊻最期の言葉
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️㊺危篤 は、こちら。
🍪 超・救急車
八雄市に向かうひかりのリムジンで、3人とも無言で目を閉じ、聖への想いを巡らせている。
聖先生…すぐ行くから、もう少し待って!
カイワレは組む掌(て)を眉間に当て、力をぎゅっと込め強く祈った。
もし、間に合わなかったら…。
ネガティブモードになるたびに、頭を左右に動かし弱気を振り払おうとした。
そして、《ひかりの水辺》の水を口に含んでは、気持をリセットしようとしていた。
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お抱え運転手の卓越したドライブテクニックで、法定速度をギリギリ守りつつも、アプリで調べたルート所要時間より30分も早く到着した。
しかし時刻は、22時を過ぎている。
3人はリムジンから飛び降りて、病院の夜間通用口へ駆け込み、夜間警備員から聖がいる緩和ケアフロアの案内を受けた。
病棟のエレベーターを降りると、シンと静まり返るフロアにはかすかに医療機器の音が響いている。
消灯時間が過ぎているため廊下は薄暗く、ナースステーションだけが明るく照らされており、看護師が何人か待機していた。
「大根です、大根 太士朗です。河愛 聖の親族です!」
「こちらへどうぞ」
看護師がカイワレを足速に案内した。
面会できるのは親族だけのため、ポーちゃんとひかりはナースステーション横のソファに腰を下ろした。
「聖先生、頑張って!!」
ポーちゃんはソファの上で体育座りになり、今にも泣きそうだった。
ひかりはそんなポーちゃんの頭を両手でそっと、抱き寄せた。
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特別個室に移された聖は、呼吸も浅く目はうつろで、まさに虫の息だった。
「聖先生!」
カイワレはその姿に吸い込まれるように激しい勢いで聖に近づこうとしたが、看護師らに制止させられた。
聖はカイワレの気配に気づいたのか、一瞬視線をこちらに配った。
そして最期の力を振りしぼり、カイワレを呼んだ。
「たい……し…ろ」
制止していた医師や看護師らが、カイワレに聖への道を開けた。
カイワレはすかさずベッドのそばに寄り、聖の手を握り見つめると、
「あり…がと」
途切れる声で、聖は見つめ返した。
「聖先生!」
すると聖はゆっくりと瞼を閉じ、静かに息を引き取った。
「伯母さん!!」
初めて親族として呼びかけたカイワレの叫び声が、聖に届く事はなかった。
しかしそれが聞こえたかのように、聖の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。