
ステラおばさんじゃねーよっ‼️66.白日夢〜人生最高のアップルパイ
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️66.白日夢〜猫キャラ封筒 は、こちら。
🍪 超・救急車
「わかりました。手紙、ありがとうございます。小鳥遊さん、あの…」
カイワレが話を続けようとした時、歩が背後から箱の中のアップルパイをのぞき込み、
「うわぁ、美味しそう!もちろんママも、食べるよね?」
と屈託のない笑顔で、知波に訊ねた。
「もちろん!はるばる宅配してくれたカイワレさんのためにも、ね!」
今出せる精一杯の軽口を叩き、知波は場をなごませようとした。
⭐︎
「本当に美味しい、とろけそう…。人生最高のアップルパイだわ!」
独り言を呟きながら、フォークに刺さったそれを愛おしそうに見、口に放り込んだ。
「またまた〜、大げさなんだからー」
久々に明るく振る舞う知波を見て、歩はうれしそうに応えた。
「歩ちゃんが淹れてくれた紅茶も、美味しいよ」
カイワレは笑顔で、歩に伝えた。
「それ程でも〜」
照れたふりをし頭をかきながら、歩は紅茶を啜った。
「そろそろかな、歩ちゃんの専門学校の合格発表は?」
「うん、明後日なんだよね。めっちゃ緊張するぅ〜」
と歩はおどけて、応えた。
「歩ちゃんなら、大丈夫だよ!勉強、頑張ったんでしょ?」
「うん。なんかカイワレさんに言われたら、大丈夫な気がしてきた!」
と舌を出して、笑った。
カイワレも、かすかにほほえんだ。
このふたりのやり取りを見て知波は白日夢を見ているような気分になった。
わたしの愛すべき我が子らが、こんな風に自然に会話し、相手を思いやっている…。
これって、本当は夢なの?!
痛い…から、現実よね?
つねった頬が、りんご色に腫れた。
わたしが夢で見てきたような光景が、現実に起こり得るなんてね。
ふたりの姿が光に包まれ、そのまま光の強さの中でふたりとも消えてしまうかのように思えた…夢のように。
白日夢の余韻を楽しみながら知波は、両目をゆっくりと閉じた。
そして次に気づいた時にはふたりの姿はなく、リビングソファで眠っていた。
久々によく眠れた気がする。
いまだ夢心地にどっぷりひたる知波は、ふたりの行方には気にも留めず、ふたたび目を閉じた。