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Photo by
murasaki_kairo
【ショートショート】和解
条件:和解。誤解。
起:ぼくは彼と殴り合いをした。お互い許せないところがあって決闘になった。
承:表通りから外れた路地でケンカは起こった。いつの間にか陽は傾いて足元の影が伸びていた。
転:「二人とも止めて!」と彼女の声があった。「私が泣いていたのは目にゴミが入ったからなの。二人は関係ないの。」と言い、ぼくと彼は目を合わせた。「こいつが泣かせたんじゃないのか?」と彼は言う。「そんなわけがないでしょう?」と彼女が答える。すると彼はぼくにこう言った。「悪かった。ここに思いっきり殴ってくれ」そうしてぼくは困ったが、それで筋が通るのならと思って彼の右の頬にめがけて拳をねじ込んだ。彼は飛ばされるように倒れこんだ。けれどしばらくして起き上がった。その顔はぼくを許していた。「ぼくも殴ってくれ」と彼に言った。すると彼もぼくと同じように拳をねじ込んだ。体が奥に飛ばされた。ズガンという音と共に路地に置かれた金属製の缶が崩れた。ぼくは起き上がった。ぼくも彼を許した。そばに立って彼の顔を見た。
結:ぼくは彼と握手をした。和解の証だった。間に立つ彼女は感動の涙で頬を濡らしていた。