見出し画像

【エッセイ】 エンパス! 現実主義の母と私と幽霊と 8. 接客業には向いてない

 今振り返ってみれば、あれはエンパス体質ゆえの事だったのかと納得する事が多々あるのだが、当然ながら当時は自覚すらしてなかったから「なんで?」といろいろ悩んでいた。

 大体は人付き合いでの事なんだけど、その中でも私は特に接客の仕事が苦痛だった。
理由は、とにかく疲れる。この一言に尽きる。

 ところで私は学生時代、当然だが月のお小遣いなんてもらった事がなかった。
 年に一回、親戚達にもらったお年玉の中から1万円はもらえたのだが、それで12ヶ月分の日々のやりくりをしなければならず、ノートや靴下、身だしなみ用品などを買うとすぐにお金はなくなってしまう。

 中学生になった当初はテニス部に所属したが、ラケットやユニフォームなど必要なものが買えなくてすぐ辞めた。(まあ、後に孤立したから辞めてしまってよかったが……)

 ラケットなんて練習用と本番用を買わなくてはならなくて、練習用は5千円ちょっとだったので買えたけど、本番用は2万ぐらいしたので諦めた。当然親が買ってくれる訳じゃなかったしね。
 でも弟が同じテニス部に入った時、母は必要なもの全てを買ってあげていた。待遇の差があるのは分かっていたけど、やっぱりそれは落ち込んだ。



 高校生になったと同時に私はバイトをし始めた。バイトはほとんどがお店のレジ打ちで、そこを辞めてもまた違うお店のレジのバイトをやっていた。その理由は経験のある仕事の方が不安がないしスムーズだから。あと、多少慣れていれば雇った側にも迷惑にならないだろうと思ったからだ。

 でもエンパス体質の人って、こういうレジとか接客業には向いてないとつくづく思った。
 いや、考えようによってはよく気が付くし相手の気持ちを察せるので適しているのかもしれないけれど……
 とにかく私には合っていなかった。こんな中途半端なエンパスだから念を遮断する方法が分からないし、うまく受け流す事が出来なかった。

 特にスーパーのレジの仕事は一日に何人もの人と対面しなくてはならないし、5時間立ちっぱなしは当たり前、休む暇なく手を動かし常に笑顔で気を利かせ……。

 まあ疲れる。休憩挟んでも1日10時間のレジ打ちは体力勝負もいいところ。疲れて疲れて、体感的には毎日長距離マラソンしてるみたいに私はグッタリへろへろで、疲れで気分悪くなってトイレで吐くし、1日3本アリナミンを飲まないととてもやっていけなかった。

 でも、その頃からなんとなく不思議には思っていた。同僚は全然平気そうな顔をしてるから。
 疲れはしてるんだろうけど、みんなそれなりに疲れてるだけ。私のようにグッタリ疲労困憊、足元フラフラ、帰りにトイレで吐いてる人なんていないのだ。
 だから自分がよっぽど虚弱体質で体力がないからだと思っていたし、みんなだって疲れてるのに自分はなんて情けないのだろうと、恥ずかしくも思っていた。

 本当に今なら分かるが、あれは無意識にお客さんからの感情を受け取ってしまっていたのが原因だったと思われる。
 何故なら接客中、私の感情の起伏がやたら激しかったからだ。急に怒りが込み上げたりイライラしたり悲しくなって落ち込んだり……。
 感情に感化されるばかりではなく憑依に近い現象が起こっていたのだ。

 接客は笑顔でいなきゃいけないのに難しい時があってストレスで。でもエンパスの自覚さえなかったから、当時はずっと悶々としていた。



 ところでバイトを始めてから、また新たな不思議体験をするようになっていた。

 それは次の職場のワンシーンを見せられるというもので、予知みたいな、ふとした瞬間に急にその映像が脳内に飛び込んでくるのだ。

 最初見せられた時は「なんだ?」と思った程度ですぐに忘れてしまったが、日々が過ぎ、実際次のバイト先で働いている時に急にハッと気づくのだ。「あ! これ! 今の会話も状況も全くあの映像と一緒だ!」って。
 不思議な事に本当にあの時脳内に飛び込んできた映像そのままの景色、人物、会話の内容まで同じに再現されたのだ。

 私は結構、人間関係がうまくいかなくて転職を繰り返してきたのだが、その度に次の職場でのワンシーンを見せられた。
 途中からはそのシーンを見せられる度、「ああ、また私、ここを辞める事になって転職するんだな」と慣れた感じでその予知を受け取っていた。


次の記事はコチラ↓ No.9



 最初の記事はコチラ↓ No.1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?