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【エッセイ】エンパス!現実主義の母と私と幽霊と 24. 闘病生活中の不思議体験
ところで、私は旦那だけでなくけっこう親族の死に立ちあってきたのだけど、死に近くなると人はそれまでにない不思議体験をしたりする事があるようだ。
感覚的に霊界と距離が近くなるから霊感が強まったりとかするのだろうか。
旦那の場合もそうで、それがいつもではないけれど、たまにおかしな事があった模様……。
それというのが、旦那は闘病中でも[なんちゃって農業]を続けていたのだけど、その時に不気味な出来事に遭遇し、何度か逃げ帰って来た事があったのだ。
決まっていつもより遅い時間帯、夕暮れ時に農地である山に入った時だった。
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何でも、ずっと誰かの視線を感じるとか、誰かが近付いてくる足音を聞いたとか、遠くから風と共に「オオォォォ!」という男の叫び声がしたとかで……。
そんな体験をした後は極端に口数が少なくなった。気を紛らわす為なのか無心で延々ベースを弾いてるし。(趣味で音楽やってた)
あとこれは本人は気付かずのパターンなんだけど、病院からお婆さんを連れ帰って来た事もある。もう死んでるお婆さんね。旦那に憑いてきたのだ、そのお婆さん幽霊が。
どうやら死にたての人だったみたいで生々しい幽霊だった。まだ生きてるみたいな質感で、美容院行ったばかりなのか髪は白髪染めで黒々しててパーマかけたてだったしね。
それから数日、玄関のドア付近に佇んでいたけど、ほっといたら居なくなった。無意識に何となく憑いてきたものはスルーに限る。
あとは魅入られたのかな? と思う出来事があって、それがパワーストーンの事なのだけど……。
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ある日、旦那はパワーストーンを販売をしている友人の所へ遊びに行った。それで帰る時、お土産にと三つほどパワーストーンのブレスレットを貰ってきて……。
その中の一つを見た時、私は思わず鳥肌が立った。何か言い知れぬ不安感というか、“得体の知れない何かが来た” という感じで心がやたらとザワザワしたのだ。
でもそう感じた事は旦那には言わなかったし、何か言えない雰囲気があった。
例によって未熟な私の事だから勘違いかもしれないし、三つのブレスレットの中でそれが旦那の一番のお気に入りだったから言い出しにくくもあったのだ。
白地に黒い糸屑のようなものがビシビシ入った石だった。旦那が腕にはめるたび私は警戒し、心にシャッターが下りてしまう。普段それが置いてある部屋にもあまり近付きたくなくなった。
そしてそれからだ。私も旦那も不運に見舞われるようになったのだ。
まず旦那は車の追突事故に遭ってしまった。
あとは組んでた音楽仲間と仲違いし、街では知らない若者にいきなり喧嘩をふっかけられた。
自作した曲が俺のパクリだと昔の同級生にしつこく因縁を付けられて、そいつの奥さんだということで私まで騒動に巻き込まれた。
家は家で今度はご近所トラブルが勃発した。
深夜に犬小屋に花火を投げ込んだとしてウチが犯人扱いされたのだ。なんでもその時間帯に電気が付いていたのはお宅だけだったと、たったそれだけの理由でだ。
それが発端でゴミ収集所にお宅のゴミは捨てるなとか、身に覚えのない事の文句を書いた紙が郵便受けに入っていたり、クリアファイル盗んだなどと言いがかりをつけられたり。
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極めつけは旦那の病状が悪化した。
闘病生活も三年、今まで元気で、なんなら癌細胞が小さくなったと奇跡の回復を見せていたのに急に転移が広がったのだ。癌性髄膜炎にもなり入院もして……。
ここで私は意を決して旦那に伝えた。実はあのパワーストーンのブレスレットが嫌な感じがするのだと。
それを聞いた旦那は意外にも納得といった顔をした。
なんでもそれを譲り受けた時、その友人は出し渋るような顔と仕草をしたという。「う〜ん」と少し暗い顔で悩んだ後、最後はまあいいかという感じで譲ってくれたとの事だった。
退院後、すぐに旦那はそのブレスレットを別のパワーストーン販売をしていた知人の所へ持っていき、訳を話して引き取ってもらった。手放した後は体調も安定したのだけど……。
ところが信じられない事に、その四ヶ月後、旦那はそのブレスレットを再び我が家に持ち帰ってきた。
びっくりして思わず固まってしまった私に対し、旦那はまるで何事もなかったような顔をして……。
あの時は本当に意味が分からなかった。何故また持ち帰って来るという思考に至ったのか、訳を話して知人に引き取ってもらったのではなかったのか――。
その問いに対して、旦那は「あれ?そうだったっけ?」みたいな感じでまるで話が通じない。あの時のいきさつなどスッポ抜け、“これは単に預けていただけ” に勝手に脳内変換されている。だからずっと取りに行かなければと思っていたと。
不気味だったし怖くなった。説明出来ない何かの力が働いてるとしか思えなかったし、どこかで観念もしたというか……。
要はすっかり魅入られてしまったのだと思ったのだ。こうなってはもう手遅れかもしれないと。
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案の定、その後は旦那の体調が急変した。癌性髄膜炎が悪化して救急車で運ばれ即入院となったのだ。そして、それが最期の入院となった。
余命二週間と告げられ、最期の入院支度をするため一旦自宅に戻った私は腹立たしさと共にパワーストーンを近くの川へ投げ捨てた。
あんなに不気味で恐怖さえ感じていたパワーストーンだったのに、この段階においての私の心情は「てめえ、よくもやってくれたな! ぶっ殺してやる!」と、なかなかに交戦的だった。
川へ沈めたからって事態が良くなる訳ではないし、これが全ての原因ではない事も、ただのこじ付けに過ぎない事も分かっている。
死ぬ前に起こった不運、同級生に因縁を付けられた事もご近所トラブルも、あれは単に現世で作ったカルマはなるべく現世にて刈り取れと、因果応報だったのかもしれないし。
きっと、全ては運命の中にあって、たまたま引き寄せてしまっただけなのだと、そんな風にも思うのだ。
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……と、まあ、これがパワーストーンにまつわる実際に起こった不思議な話。
多くのパワーストーンはサプリメント的な効果で用いられていて、私も一つ、枕元に小さな水晶玉を置いてるけど、あの時の経験から、ごく稀に因縁とか念も入りやすいものなのかなって思ってる。
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