見出し画像

Walt Disney Archives と図書館情報学

この記事はklis Advent Calendar 2018 23日目の記事です!

はじめに&自己紹介

こんにちは,えいみどんと申します!筑波大学知識情報・図書館学類(以下klis)卒で,現在は図書館情報メディア研究科(slis)にいます。klisのころはシステム主専攻でした。今年度で卒業なので記念にと思って,klis Advent Calendarに初参戦してみました。

私のことを知ってる人は「ディズニーが好きな人」として認識している気がします(笑)そのとおり,私は「ディズニーが好きな人」です。もっと正確に言えば「ディズニー映画のストーリーとキャラクターデザインと音楽が好き」で,「ディズニーのテーマパークに行くことが好き」です。

そして,私はディズニーランドのエンジニア部門である「ディズニー・イマジニアリング」の大ファン。

イマジニアリングの成果物の中でも,オーディオ・アニマトロニクスが大好きで,ディズニーランドに行くと,オーディオ・アニマトロニクスを使ったアトラクションに行くことが多いです。有名どころだと,「カリブの海賊」や「ホーンテッド・マンション」がそれにあたります。

私は,その中でも,オーディオ・アニマトロニクスをふんだんに使ったショーを見ることができる「魅惑のチキルーム」と「カントリーベア・シアター」がとりわけ好きです。魅惑のチキルームは元祖オーディオ・アニマトロニクスを使ったアトラクションなんですよ。カントリーベア・シアターは元々,ミネラルキングスキーリゾートのためのアトラクションで,スキーは昼間しかできないから,夜にも楽しめるアトラクションを作ろうと,ウォルトがディズニー社のアニメーターのマーク・デイヴィスに熊を使ったアトラクションの構想をお願いしていたという話があってだな…。

あっ,違う違う。今日はディズニー・イマジニアリングの話をしにきたわけではないです。笑

さて本題へ

今日は,ウォルト・ディズニー・カンパニーの1部門である「ウォルト・ディズニー・アーカイブス」について紹介します。「結局ディズニーの話するんかい!」と思った?(笑)実は,ウォルト・ディズニー・アーカイブスは,klisが学んでいる図書館情報学と非常に関連の深い部門なので,是非是非この記事で話したいと思ったのです。

この記事には正直オチとかはないんですが,私はこの記事で「大好きなものが,自分の学んできた学問によって支えられている事実が嬉しかった」ことを伝えたいです。高校生の頃の自分に教えてあげるような気持ちで書こうと思います。ちなみにめっちゃ長いです。

そもそも,ウォルト・ディズニー・アーカイブスってざっくりなあに?

ウォルト・ディズニー・スタジオにある,ディズニーのアニメーションや実写映画,テーマパークに関する物品の収集・保存・資料調査部門です。この部門は1970年に創設されて,今でもディズニーの歴史を保存しています。

デイヴ・スミスとウォルト・ディズニー・アーカイブスのはじまり

1966年にウォルト・ディズニーが死去したあと,ウォルトの部屋は書類や資料の整理だけされたままでした。それからウォルト・ディズニー・カンパニー(以降ディズニー社)は,放置されていたウォルトの資料の保管や活用をすることを考えました。そこで活躍したのがディズニー・レジェンドの1人でもある,デイヴ・スミスという人物。

カリフォルニア生まれカリフォルニア育ちのデイヴは,カリフォルニア大学バークレー校で1963年に図書館情報学(!!)の修士号を取得しました(図書館情報学の大先輩だ!)。学生時代はずっと図書館でバイトをしていたそう。

卒業後はワシントンのアメリカ議会図書館(Library of Congress!! klisの授業でよく出てきましたね)で1年半インターンし,その後,カリフォルニアに戻り,カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のResearch Libraryで調査図書館員として働いていました。

ウォルトが亡くなった1966年もデイヴはUCLAで図書館員をしていて,当時,様々なbibliographyに関する仕事をしていました。ウォルトの死をうけて,デイヴはディズニーの文献調査に興味を持つようになり,ディズニー社に連絡を取っていたりしたそうです。

そして1969年になり,ディズニー社ではウォルトの死後から放置されていたウォルトの部屋の遺品をどうにかしようと考えはじめ,同じ時期にUCLAがディズニー社にウォルト・ディズニーの資料をUCLAの図書館に所蔵することを提案します。

そういった様々な偶然が重なり,デイヴはディズニー・スタジオで保管されてきたものを調べる仕事をはじめます。これがウォルト・ディズニー・アーカイブスへの第一歩となりました。

ウォルトの遺品整理からウォルト・ディズニー・アーカイブスへ

UCLAとディズニー社は,ディズニーの資料のアーカイビングについてミーティングをしました。デイヴもそのミーティングに参加します。ディズニー社は当初,ウォルトの生涯に関するものを保存することだけを考えていたのですが,デイヴは社史の編纂の必要性を感じます。しかし,当時のディズニー社にはアーカイブに関する知識のある者がいません。

そこで,デイヴはUCLAの仕事を2ヶ月間休職し,カリフォルニア州バーバンクにあるディズニー・スタジオでウォルトの年表や出版記録のリストをつくることを依頼されたのでした。

任期の最後,デイヴはディズニー社にアーカイブスの創設を提案します。そして1970年6月に,ウォルト・ディズニー・アーカイブスは正式に発足したのです!!

ディズニー・カンパニー・アーキビストとしてのデイヴの最初の仕事は,ウォルトの部屋の目録づくりでした(目録といえば,知識情報演習とか知識資源組織化論とかでやったアレですね)。同時に社史をまとめるために,ウォルトと仕事をした様々な人物や,スタジオ初期に働いていた人々に会いにいき取材をしてまわります。また,スタジオ内からとにかく古い文書や作品などを集めました。その中には,本やレコードや写真,映画のポスターなどなど…。ウォルトの書いた手紙などは地下室にざっくり置かれていたので,すぐに救出してアーカイブスへ運んだりしたそう。

アーカイブスの創設には,ウォルトの兄のロイ・ディズニーも尽力してくれたそうです。デイヴはロイに頼まれて,ディズニー家の家系図を作る仕事もしていました。ウォルトとロイの生まれたディズニー家は親族が多いのと,アメリカ発祥のディズニー家とは違ったため,情報収集が大変だったとか。

ウォルト・ディズニー・アーカイブスの目的

アーカイブスの目的は,ディズニー社の社員にディズニーの歴史的な資料を提供することだと,デイヴは述べています。ディズニー社では過去の作品などを再利用したりすることが多く,映画製作時にいなかった社員たちにとって,アーカイブスは非常に役に立つ存在です。そういった資料から学ぶことで,ディズニーのクリエイターたちは今の仕事にその知識を活かすことができるのだそう…!

そういえば,おととい公開された「シュガーラッシュ・オンライン」では歴代のプリンセスが集結していたりして,とても話題になってるので,もしかしたらアニメーターたちがこのアーカイブズに訪れて,セル画時代のアニメーションに思いを馳せていたかもしれない…(これは私の勝手な妄想!笑)

また,アーカイブスは歴史的な資料や遺産についての研究結果を,社内のクリエイターだけでなく世界中のディズニーファンや研究者に公開し,そういった資料を通してディズニーの世界観を伝えているそうです。

現在のアーカイブスのスタッフのお仕事

アーカイブスの仕事は多岐に渡ります。アーカイブスに新しく資料や作品が加るときには,ダメージを与えずに長くいい状態で保管するには,どのようにするのが良いかを決めたりするそう。

また,現在は画像保存の専門員が写真の高精細デジタル化に取り組み,画像の修復などをして,司書が写真内容についての目録をとる作業をしています。高精細デジタル化により,デジタル化以前には発見できなかった写真の詳細を発見できるなんてことがあるそうです。例えば,会議中の写真に写っているストーリーボードから何についての会議だったかわかる,とか。

アーカイブスは,写真以外にもフィギュア等の3Dデータ化を行っていて,3Dデータ化することで,フィギュア自体を傷つけることなく研究や保存をできることができるというメリットがあります(なんかこういう話はよくデジタルライブラリの授業とかで出てきますね)。

あとは展覧会の企画や出版物などへの資料の提供なども,アーカイブスのスタッフのお仕事だそうです。日本に時々,ディズニーの貴重な資料がたくさんやってくるのもウォルト・ディズニー・アーカイブスのおかげです。

この内容でこの記事を書くきっかけとなったのは,夏に都内で開かれてた「ウォルト・ディズニー・アーカイブス展」に行ったことなので,展示がなかったらアドベンターに書くことが何もなかったです。足を向けて寝られない…。ちなみにこの記事の見出し画像は,「ウォルト・ディズニー・アーカイブス展」で展示されていた,ホーンテッド・マンションのオーディオ・アニマトロニクスです。あんなに近くで見れることないから,全私が泣いた。

まとめ

この記事ではウォルト・ディズニー・アーカイブスについて色々紹介しました。愛が溢れて長文になってしまったけれど,面白いって思ってくれる人がいたら嬉しいです。

もしklisの先生とかがこの記事を読んでくれていたら,授業でウォルト・ディズニー・アーカイブスについて触れてくれたら嬉しいです(チラッ)。自分が学部生の時に,授業でこういう話も聞いてみたかったなあ〜という思いから。

あとがき

ここに学部〜大学院までの思い出をちょっと書こうかなと思ってたけど,想像以上に本文が膨らんだので,また今度にしようと思います。笑

今思えば,なんとなく入学してしまったklisだったけれど,図書館情報学という学問はめちゃくちゃ面白かったです。学際的なところがすごく好きだった。就活で「図書館情報学って何なの?」って聞かれた時に色々話すのも楽しかったなあ。まあそういうのは,修論が終わった頃にでもまた書きます。


この記事を書くのに参考にしたもの

https://archive.is/20140622204520/www.mouseclubhouse.com/Interviews/dave-smith/dave-smith-early-days.htm, (閲覧: 2018-12-22).

http://www.disunplugged.com/2010/06/09/into-the-walt-disney-archives-with-disney-legend-dave-smith/, (閲覧: 2018-12-22).

ポーラ・シグマン・ローリー, ウォルト・ディズニー・アーカイブス展 公式図録, 講談社, 2018.



いいなと思ったら応援しよう!