mustikkapiirakka
フィンランドに暮らしている間、本当によくケーキを食べた。
ホストマザーが作ってくれたもの、買ってきてくれたもの。 職場の休憩中、仕事帰りのカフェ、友達とのティータイム、食後のデザート。いろんなところで私の前に現れて、私の心を癒してくれた。日本にいる時の倍以上の量、いや、それ以上のケーキを食べたのに体重が増えなかったのは、毎日頭を使って糖分を消費していたのでは、と考えています。
「疲れた時は甘いもの」
それは日本でもフィンランドでも一緒だった。
ケーキがあればデザートだ、と喜ぶんで、コーヒーを淹れようと突然お茶の時間が始まる。驚いたのは夜の10時に焼き上がったケーキを食べたこと。そして、11時にはみんな寝ていたこと。渡航してすぐに起きた出来事だったので、最初は太る、と少し戸惑っていたけれど、帰国前には夜のケーキは日常の一部になっていた。
この記事に一番上に載せてあるケーキは、ホストマザーが私に焼いてくれたもの。渡航して2ヶ月、生活の様子が分かってきた私がぶち当たったのが「言葉の壁」だった。
言葉に関しては勿論悩まない時がないほどだった、うまく話せない、理解できない、そうじゃないのに、なんてことが1日に何回もあって、滞在中に落ち込む理由といえば、大概言葉のことだった。
生活リズムが整って、ある程度周りが見えてくると、伝えたいことが増えてくる、でも伝えられない。伝わらなかったらどうしようと思うと言葉が出てこなくて、飲み込んでしまうばかりだった。でも、これじゃいけないと思って翻訳機を使って自分の気持ちを英語とフィンランド語に訳して、紙に書いて、ホストマザーの前で読んだ。読んだ瞬間泣いた。
私はもう大きな大人、ホストマザーの妹、でもおかしくないほどの年齢。(実際10歳しか離れていなかった)そんな私がベソをかきながら、辿々しく読む言葉をホストマザーはゆっくり聴いて、そして最後に言ってくれた。
「気持ちが知れて嬉しかった。話してくれてありがとう」
そしてその夜、彼女が焼いてくれたのがこの記事の一番上に載っているブルーベリーパイ。私の部屋のドアをノックして、コーヒーでも飲まない? と誘ってくれた。泣きはらした顔は情けなくて、結局言葉は出てこなくて。
でも、二人、椅子を並べて、横に座って、言葉もなくただ静かに過ごしたあの時間は、とても柔らかかった。
そういうふうに、誰かを包み込めたらいいなと思う。
夜のブルーベリーパイは甘酸っぱくて、ほんの少し暖かくて、多分、人生で一番美味しかった。
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