【落語】9.18 落語道場 山の穴
これ、このタイトル、もはやどちらもわからないひとの方が多いのかもしれません。深川江戸資料館で行われた、落語会『落語道場 山の穴』のこと。ちなみに、司がつけたのは、三代目圓歌一門青年部です。つまり、まぁ、そういう落語会。この会、三代目直参の三遊亭歌扇が裏方も表方もがんばってくれました。ありがとう。
今回の出演者、落語界の序列を香盤と呼びますが、香盤順ですと、
三遊亭歌橘 三代目圓歌門下
三遊亭鬼丸 三代目圓歌門下
三遊亭 司 三遊亭歌司門下
三遊亭歌扇 三代目→若圓歌門下
こういう順で、ちなみに『藝人に歳なし』と言いますが、年齢順ですと、鬼丸、歌扇、歌橘、司の順。歌扇以外は前座という青春時代をともにした、前座仲間でもあります。
でも、ゲストであり、手前師匠歌司も含めて、三代目三遊亭圓歌一門という、大きな家族といったほうが、感覚は近いです。あ、そうそう、楽屋には四代目圓歌門下の歌実もおりました。わたしと歌実は、三代目の孫弟子ということになります。
一目あがり/入船亭扇ぱい
うちの一門に現在前座がいないので、入船亭扇遊師匠のお弟子さん、入船亭扇ぱいが楽屋全般手伝ってくれました。そんな前座さんの高座は『一目あがり』を10分で。
うん、ひいたり、うけたりする間とアクセント、息づかいまで扇遊師匠そっくり。前職のこともあり、しゃべりに対する研究心が強いのか、もともと耳がいいのか。でも、おすのと、待つのが出来ない。もちろん、前座だから及第点だけど、キレイに模倣できてもウケないのか、と。それでも噺が達者なので、サゲでちゃんと反応が。前座の高座も、こういう噺もそれで、よし。
紙入れ/三遊亭歌扇
前半三本ぐらいが、落語会の雰囲気をつくるあたり。まして、裏方までやっていた歌扇は大変だったと思う。こういう会って、かえって高座がないほうがよかったりしますが、でも、高座だけが息抜きの場所とも。
いつものマクラから、『紙入れ』。この噺か『締め込み』かなとおもってましたが、こっちできたか…ということは、割とよく聴いてます。前座がきちんとつくってくれたので、後半トントーンと受ける。
洒落番頭/三遊亭 司
ハイ、わたし。『紙入れ』が出たところで、色っぽい噺がふさがれます。前の反応からして、ご通家が多いわけでもない ── だいたい、そんな厄介な客は圓歌一門の会に来ない、もち時間20分、うしろは師匠で中入り、そんなことを考えながら噺を決めます。
深川江戸資料館にくる途中、三遊亭圓窓師匠の訃報が入ったので、圓窓師匠が小噺から仕立てあげた、圓窓五百噺より『洒落番頭』を。
軽いネタ、わかりやすいネタ、背景が複雑でないネタ、で、この噺。
百 川/三遊亭歌司
人間の…と言っていいかも知れないが、師匠のここ数年の、そして人生最大の課題は、『藝人の老い』であると思う。そこへいくと、やっと、自分の描いている歌司から、現状の歌司の喋りをつかみかけたのかな、とマクラを聴いて思いましたが。
ムリに長い噺をやらなくても、それこそ昔話と軽い噺でいいと思うんですが、鬼丸兄さんが言ってた「歌司師匠、やりたいんだよ」というのもよくわかります。ここは、わたしがよくつかう「演る」ではなく、行動全般の「やる」でしょうね。藝人はその衝動で動いているようなものですから。そして『藝人の老い』は、師匠だけではなく、藝人総ての課題でもあります。
ちりとてちん/三遊亭歌橘
いつまでも変わらない、かきっつぁん。カキツ兄さん、あし歌兄さん。やっぱり、定番のマクラから。わたしは飽きと照れで、決まったマクラってあまり振れないんですよね。あ、マクラは「振る」と言います。そういえば、そう言うね。このあがり位置、あぁオレの位置と逆の方がよかったかなぁ、とか思いました。と、いうのも、中入り後は客席がざわついていて、少々演りづらいので、若手の定位置でもあるのです。
兄さん、見た目はおもしろヤローなんですが、噺はいやにきっちりしてます。
新巌流島/三遊亭鬼丸
題名はサゲが類似している古典を避けるため、なので『電車にて』とかつけるところなんですが、この題名。漫談の題は当人が申告しない限りは、前座のセンスです。だから、わたしがつけるなら『泪の圓歌劇団』か『あっちゃん』ですかね。
さて、鬼丸兄さんは FMラジオ、NACK5で平日午後の帯番組のパーソナリティを勤めています。その界隈では人気の兄さん。わたしはその時間、たまむすび聴いてます。ごめんね、兄さん。
ラジオもそう、この日の高座もそう、兄さんは普段の「おしゃべり」のように、三遊亭鬼丸として喋ることができる、少なくともそう聴こえる、稀有な落語家です。
最後の電車の噺 ── これも敢えて噺ね、も、最初のころは世間話のような、マクラ?漫談?おしゃべりだったのが、15年ぐらいすると、この部分が異様に「落語」になっていて、不思議と感心いたしました。
圓歌一門なんだから、誰か漫談だけで降りなきゃな。は、鬼丸談です。
ひさしぶりの一門の会は、とてもたのしかったです。つぎはいつになるやら、あるのやら。わたしもたのしみしております。