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【老舗】こんな日は銷夏鍋といきますか
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座敷に渡された板を前に、どかっと遠慮なくあぐらをかく。流した汗の水分を補うように、まずはビールからはじめようか。
どぜう鍋にごぼう。植木屋さん、鯉の洗いをおあがり、で、鯉の洗いももらって、浅草にきたら、これは、もう、アサヒ一択。
やがて、真っ赤に熾された炭火と底の浅いどぜう鍋。ひらきかまるか?そりゃ、もちろん、まるでしょ、まる。あの苦味と割下の甘さ、ごぼうと葱がいいんじゃないの。
食べ方おわかりですか?って、そう親切に訊いてくれる、配膳のおねぇさんが生まれる前から、多分、この座敷にはあがっているはず。ありがとう、でも、だいじょうぶ。と、ごぼうをわさっと、葱をどっさりと。泥鰌には火が入ってるので、ぐつぐつっときて、こぼうがこころなしかしんなりしてきたら、山椒をかけて。
あとは、はふはふのぐびぐび。ぐびぐびのはふはふ。炭火の熱さが、暑い夏にむしろ心地よく。ひとりでこの鍋に対峙する先輩方の、その美しさ。サラリーマンの先輩後輩と思われるふたり組が、わしわしとおひつの飯を喰らうのも、これまた、いい。
銷夏鍋、これに極まる。
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