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【本】酒場と本屋と街のこと

   本は、たぶん、読むほうだと思う。
   比較的に、と言おうとしたけど、そんなもの比較しても仕方がない。仕方がないとも、違う。比較するものでもない。
   なら、読む「ほう」だも、上手くなかった。でも、本を読む、じゃ意味がわからない。
   なら、どうする。

   本が好きだ。

   これでいい。
   これなら週に二三冊読んでも、十年に一冊でも、間違いはない。
   あらためて口に出すと、それは、本が好きだ。で、あって、読物が好きだ。では、ない。
   本が好き、なのだ。だから、本屋が好きだ。

   町田で時間ができた。

   はなしは急に展開する。

   雨の土曜日の15時半。と、なると、足をむけるのは馬肉の老舗柿島屋。老舗と言ったが、創業何年とか、知らない。調べればなんでもすぐに判明る時代だ。それも、調べるなんてほどのものではない。と、ゴタクをならべながらも、いま、こうしているときも文明の利器に頼っている。が、すくなくとも柿島屋は、ずっとずっと町田にある。

   町田──正確には横浜線の淵野辺へは、多摩川線、東横線、大井町線直通田園都市線と乗りつぐ。法事のために訪れた。いつもなら、カバンになにかしら本を入れてくるのだが、それがないのは昨日深酒をして、翌朝のきょうあわてて家を飛び出したから。ひとり酒場で、本がないのは心許ない、が、幸いにしていい街にはいい本屋がある。
   
   町田だったら久美堂。

   目についた文庫本をさっと選んで、するりと酒場の戸口をくぐるというのは、ネットでの購入じゃできないこと。と、その本がとてもステキだったと、本のことを書こうと思ったが、酒場と本屋と街のことになった。

   飲みながら、活字を追っていく。時折、肴に箸をのばし、献立に目をやり、隣卓の会話に耳を取られて、ふたたび活字に気をもっていく。
   気取ってそんなことをやっているわけではなく、家でも、まぁ、そうなんだけど、外で買ったばかりの本だと、何行も、なのか、何行かしか、読めない時がままある。が、その様式スタイルが好きなのだ。

   いい本屋がある街は、いい街だ。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。