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ドライピッカーの話
特定の製品を槍玉に挙げるようなことはしたくなかったけれど、製品カタログや営業トークがあんまりだったのでツッコミを入れざるを得ない
すでにYoutube側でトーク済みなのでここではそのまとめをします
1時間ぐらいのアーカイブなので見てもらえると私が嬉しい
カタログやSDSを参照しながら進めるので用意しておくと便利です
↓リンクを用意しましたのでこちらからどうぞ↓
見出しから誤解を招く表現
事実 洗浄作業が汚れの原因だった!
カタログ見出しから誤解を招く表現を載せていて驚きしか無い
・バキューム不足
・不適切な洗剤の選定
・リンスの不足
洗浄作業の失敗はこれらの原因が考えられます
間違った洗浄作業が汚れの原因だった!
あたりの文面に変更しましょう
まさかCRIをご存じない?
カーペット洗浄をする時、洗浄力だけで洗剤を選んでいませんか?
リンレイさんはCRIをご存じないのでしょうか?
まさか2021年にもなってそのような選定をする作業者がいるとは思えませんが……
↑CRIの洗剤のテストに関するページ↑
詳しい内容はページ内のテスト基準を参照いただくとしまして、
ざっくり説明すると
洗浄効果:水より効果的ですか?
再汚染率:水より汚れを引きつけませんか?
pH:極端に酸性やアルカリ性ではないですか?
テクスチャの変化:パイルを変形させたりしませんか?
蛍光増白剤の有無:蛍光増白剤は使用してはいけない
耐変色性:作業前後で色の変化はありませんか?
これらが洗剤の評価基準としてあげられ、効果の出たものを公開するテストプログラムが2004年から開始しています
17年……今までなにをしてたんですか?
残留洗剤どころかそもそもの作業手順がおかしい
カーペット洗浄後の残留洗剤には4種類のタイプがあります
↑この文言のあとにいかにもそれらしい雰囲気で残留洗剤が悪さをしますよと書いていますが、洗剤の選定と作業手順がおかしい
実験方法に関する記載がないので断定はできませんが、おそらくエクストラクションが必要なタイプの洗剤をセミドライで使用していますね、リンス作業が足りてないんだから残留洗剤が悪さをするのは当たり前じゃん!
洗剤は説明書をよく読んで正しく使いましょう!
バキューム作業だけでずっとキレイとは……?
スマートドライシステムは、洗浄作業をせずバキューム作業だけでずっとキレイを実現します。
スマートドライシステムとは、ドライピッカーの使用を中心としたリンレイさんが提唱するカーペット管理方法です
ずっとキレイ、いい言葉ですね。我々清掃業務に当たるものが目指す理想の境地でもあります。ずっとキレイを実現するためには日々付着する汚れを除去し続けることが肝要です
カーペットの汚れは大きく分けて以下の2つになります
ドライソイル:バキュームで除去できるもの
(土砂、ホコリ、髪の毛など)
ウェットソイル:洗浄作業でのみ除去できるもの
(タンパク質、油分、糖分など)
バキューム作業だけでずっとキレイを実現しますということは、ドライピッカー群を使用することで、ウェットソイルがバキューム作業で除去可能なドライソイルに変化することを証明する必要があります
カタログ2ページ目、美観向上のしくみを調べていきます
美観向上のしくみ……?
土砂で汚れている状態(画像省略)
まずバキュームかけろよ。ドライソイルが取れなくなるまで念入りにアップライトバキュームで作業するんですよ、次の作業工程に移るのはそれからです
土砂で汚したカーペットを用意しました
実際に現場で使用した掃除機のダストバッグから取り出した汚れを使用したので限りなく実環境に近いと思います
アップライトバキュームで念入りに作業するとこうなります
……十分キレイになってしまったので残りの項目を評価できないのですが、続けてみていきましょう
ドライピッカーを散布する(画像省略)
ドライソイルが残ってるところに液体を散布してはいけません!
まずは徹底的にドライソイルを除去するところから始めましょう
パイルが徐々に起毛し始める(画像省略)
お前は何を言っているんだ?
パイルが潰れる原因は
重量物が乗っている
(パイルの起毛力以上の重量物が乗っている状態)
パイルが損耗している
(繊維が損耗して起毛力を失っている状態)
汚れが堆積している
(上記2つの要因になりうる状態)
主にこの3つです、原因を除去しないとパイルは起毛しません
仮にドライピッカーにそのような効果があったとしても、繊維の性質を著しく変化させているのでは、それは清掃とは言えません
バキュームで土砂が回収されるようになる(画像省略)
最初からアップライトバキュームを使えばいいのです、ドライピッカーを使用する必要性はどこにもありません
ちなみに、アップライトバキューム以外をカーペット上で使用するとこんな感じになります。ひどい有様ですね
土砂が付着・堆積しにくい状態になる(画像省略)
結局ここまでドライソイルの話しかしていません
ウェットソイルは一体どうなっているのでしょうか?
施工例の画像が怪しい
オフィスビルの場合、通常1~2ヶ月でドライウォッシュ効果が発現し、美観が回復します。(画像省略)
それっぽいビフォーアフターの画像が載っていますが、どうして遠景の写真しか撮影していないのでしょうか?
上記の拡大画像は3,000円程度のスコープで撮影できます
カタログの3ページ目に移りましょう
奇妙なトラブルケース紹介
ウィックバック:カーペットを洗浄した時に、パイル内部や基部の汚れが毛細管現象で表面に浮き上がる現象を言う。
特に潰れたパイル内部に汚れが溜まっていると、洗浄しても汚れが取り切れず、ウィックバックが発生しやすい。
汚れが溜まった状態で洗浄作業を開始してはいけない!
ウィックバックが発生する原因は
日常のバキューム作業不足
洗浄前のバキューム作業不足
洗浄中のエクストラクション作業の不足
大きく分けてこの3つです、作業スケジュールの見直しや作業手順の遵守が必要です
目地スキ:カーペットを洗浄した時に、接着強度が低下しカーペットが浮き上がる現象をいう。
特にツーステップ方式による洗浄を繰り返すことにより、目地スキが発生しやすい。
目地スキの原因は洗浄作業ではない!
洗浄作業が目地スキの原因とするならば、少なくとも以下の項目を証明する必要があります
洗浄液がタイルカーペットの下部へ侵入すること
洗浄液の散布量は1㎡あたり200ml、コーヒー一杯程度の量ですね。張り合わせた隙間から侵入する可能性は0ではないですが、ビチャビチャになるような量ではありません
洗浄液が接着剤の接着強度を低下させること
カーペット洗浄に使用する洗剤は粘着剤の除去に効果があるようなものではない、というかそんな物使ったら製造工程で接着剤を使用してるタイルカーペット自体がバラバラになるわ
じゃあ、目地スキの原因って一体何なの?
什器の移動、ほつれたパイル糸を引っ掛けたことによる物理力
フリーアクセスフロアからの配線の処理が不適切な時に起きる汚れの侵入
これらが原因で起きる事象です
あらゆる作業にはトラブルがつきものですが、トラブルの原因を正しく把握してないのは論外です
続いて、カタログの4ページ目に向かいます
販売してるアップライトバキュームの性能について
リンレイさんが販売してるアップライトバキューム、スイングバックライトシリーズの性能、気になりますね?
これも洗剤の選定時に取り上げたCRIの方でテストプログラムが行われています
詳しい内容はテストプログラムの112~115を参照いただくとしまして、以下の内容に関してテストされます
汚れの除去:カーペット上、内部の汚れをどれだけ除去できますか?
ホコリの封じ込め:空間中に舞い上がるホコリの量をどれだけ少なくできますか?
テクスチャ保護基準:バキュームの継続的な使用でテクスチャにダメージを与えることはありませんか?
リンレイさんはテスト結果の一覧に上がってきません、そもそもがワックスメーカーなので機材はOEMの可能性がありますね。会社沿革を辿っていくとそれらしき情報に当たることができます
ビルの高層化時代を迎え、米国清掃機器のトップメーカー・クラーク社と日本における総代理店契約を締結、輸入販売元となる。
なるほど……改めてクラーク社で調べて
Clarke、2004年にNilfiskと事業統合、現在はNilfiskのブランドとして存続中
……ClarkeとNilfisk両方で調べます
残念ながらどの製品もBronze判定です
どうして結果を出してるメーカーにOEMの依頼をかけないのでしょうか?不思議ですね
続いてSDSを見てみましょう
SDSから製品仕様を予測する
製品カタログにはウェットソイルについての記載がなく、それの除去効果を証明する資料もありませんでした
SDSから製品仕様を把握し推測してみましょう
3.組成、成分情報
水:45~50%
変性シリコーン:50~55%
エタノール:5%
除菌剤、香料:微量
製品の成分情報から効果を予測します
ドライピッカーの散布、乾燥、バキューム作業で効果が現れると謳っているので、乾燥後に残るものが効果の肝になります
変性シリコーンオイル(エマルジョン)が主成分に該当します
CAS番号が非公開なので同定できない以上、類似の製品から機能を推測します。変性シリコーンオイルエマルジョンで繊維処理に使われるものが対象になります
信越シリコーン:風合い改良剤(柔軟性、平滑性、ボリューム感)、撥水剤
旭化成ワッカーシリコーン:平滑性向上剤、柔軟剤、撥水剤
日本レジン株式会社:風合い改良剤(柔軟性、ボリューム感、反発感、平滑性)、撥水剤
該当する製品をいくつか見つけることができましたが、どうにもウェットソイルの除去に役立ちそうな内容ではありません
実験するしかないですね!
実験しよう!
実験内容、結果についてはすでに動画で公開しています
こんな感じで汚したカーペットをドライピッカーを使って作業していきます
中心部の拡大画像はこんな感じ
散布、乾燥後念入りにアップライトバキュームをかけたものがこちら
これをお客様のもとに持っていって「キレイになりました!作業終了です!お金ください!」とはわたしには言えない
ちなみに、IICRCで提唱されているHWE方式で洗浄した結果がこちら
ドライピッカーを使う必要性が全くわかりません
リンレイさんからの反論をお待ちしております