「側頭葉てんかん」と診断された私、実は年間発生率100万人に1人の超レア病「インスリノーマ」だった
「あなたは側頭葉てんかんです。」と、診断を受けた。これが5年前の話。
いろいろあって、低血糖症状があると指摘され、検査入院を経て、
年間発生率が100万人当たり1.4人のレアな腫瘍、「インスリノーマ」という病気をもっていたことが判明しました。
この5年間「側頭葉てんかん」だと思っていた病気は、膵臓にできる腫瘍の「インスリノーマ」だったのです。なんだ、その病気はーー!!
なんでこんなにも長い間見つからなかったのか、なぜ「インスリノーマ」は膵臓の病気なのに脳の病気である、「てんかん」と診断されてしまっていたのか。まじで意味わからないですよね。
側頭葉てんかんと診断されている方で
「てんかん薬を飲んでも効かないな…」とか
「薬は増えているのに発作らしき症状が一向に治まらないけど何で?」
といった悩みを持つ方に、届けばうれしいです。
もしかしたら、私と同じケースかもしれないから…
誤診だった側頭葉てんかん、どのように診断に至ったのか?
きっかけは5年前、急にお客さんとのミーティング中に居眠りのようなうつらうつらした状態になり、力が抜けてしまいました。それだけでなく、お客さんに話すはずだった提案内容と全く異なった提案を口走り始めていたのです。
その後、帰りの電車に乗っても、(たしか大江戸線だった)
「知っているはずの駅名が全く知らない土地のように思える」
「知らない世界にいるようで怖い」
などなど、奇妙で知らない感覚が次々に襲ってきて発狂しそうになっていました。東京にいるはずなのに、異世界にいるような感覚…ものすごく怖かった…
正気を取り戻してから、
「これはやばい。MRIとか撮りに行ったほうが良い」
そう考えすぐに頭のMRIを撮りに病院へ。
結果は「異常なし」
「おいおいマジかよ、じゃあなんであんなおかしいことになったんだよ、何科にかかりゃいいんだ…」と途方に暮れ、とりあえずメンタルクリニックにいった。
あまりに意味がわからなすぎて、心の問題?!となったんだと思う。
すぐにメンタルクリニックに行った所、心的には大丈夫とのこと。
ただ、私の症状を聞いた先生が
「MRIではなく脳波などを撮ってみては?」と別の先生を紹介してくれた。
紹介先は、心療内科とてんかんを専門にしている病院で、脳波をとった結果「側頭葉てんかん」と診断されました。
側頭葉てんかんでよくある症状と私の症状
この図にもあるように、側頭葉てんかんは、
発汗などの自律神経発作
不安感や未視感
(見慣れているはずの光景や物事が、まるで未体験の事柄であるかのように感じられること。 例えば、いつも通っている道が、見知らぬ街路であるかのような感覚に陥ること)などの精神発作言語認識
このあたりに影響があることがわかります。
他にも、側頭葉てんかんの症状をこのように書いている先生もいます。
つまりですね、
「けいれんする」
「目の前がピカピカする」
などのいわゆる「てんかん」ぽい、わかりやすい症状の出方ではなく、
汗をめっちゃかく」みたいな症状
ぼーっとする感じで気が遠くなる
みたいのも側頭葉てんかんの発作になるというわけです。
私の症状も本当に多種多様でした。
鼻の下や背中にバァーと汗を大量にかく
テレビの向こう側の出来事が自分事に感じられる(例えば紛争のニュースを見てコレが解決しないと会社に行けないのように思い込む)
家の天地が逆に見えたり、左右が反転して見える
よくわからない妄想にとりつかれて歩いていると気がつくと知らない場所にいる
力がはいらなくなり、立つこともできなくなる
地図の通りに行けばいいのにわからなくなり目的地にたどり着けない
テレビの中の芸人の目が逆目に見える
PC上の文字が文字化けして見える
手足が冷たくなる
時間感覚がわからなくなる
遠くに見えるはずのものが近くに見えたり距離感がわからなくなる
隣の人にこう思われてるみたいな妄想が暴走してその妄想にとりつかれる
風呂で意識がとぶ(頭と体を洗う手順を反芻しながらこなすけど風呂から出て着替えられないとか)
頑張って準備しているんだけど一向に前に進まない(化粧とか)
ゆらゆらとして焦点が合わず、片目をつむらないとちゃんと見えない
とにかく眠い。発作が起きたあと眠くなり、寝るとわりと治る
ごはんを食べたり、体が温まると治る
わけがわからなくなり、身近な人を殴ったり、タクシーの運転手さんに喧嘩を売ったりする
根詰めた作業などすると識字ができなくなり、文章が読めなくなる
妙なハイテンションになり空回りし続けてしまう
こんな感じ。覚えていないだけでおそらくもっとある。
……うん、なんか、脳に病気があるねと言われても納得の症状ラインナップ。
直近1年半くらいはかなりの頻度で、こんな発作が起きていたので正直とても大変でした。
友人の結婚式に向かう途中にぐるぐるして、動けなくなり、身につけてたヘルプカードで助けを呼んでもらったことも。
その時は、駅で休ませてもらっている間にどんどん症状がひどくなり、駅の事務所でせん妄が起きて叫び続けていたりしたけど、今考えたら完全にやばい。
「てんかんだ」という認識が無かったら、即座に救急車になるような状態だったと思う。
ちなみに全然症状が良くならないので、てんかん薬は増え続け、4種類の薬と頓服の坐薬を使用していた。
ものすごい量の薬を飲む日々が続いていた。
お酒を飲んだり、二日酔いの日は特に症状が出やすくなることが多く、酒量も大幅に減っていた。1日にビール+日本酒2合や、ワイン半分を余裕で飲む人だったのに、すっかり飲まなくなっていた。
ちなみにひどい発作の際は、一定時間眠ると良くなる事が多く、実際発作時以外も眠くなる頻度が高いので、時間の許す限り寝ていた。
これも、「てんかん薬の影響」と思っていた。
「インスリノーマ」発覚のきっかけ
2022年11月、九州に旅行に行った時のこと。
門司港近くで観光し、ランチに並んでいたら、どんどん立っていられないような感じになり、もう少しで順番という所で足の力が抜け、動けなくなり、周りの人たちに、えっちらおっちら運ばれ、港近くのベンチに寝かされた。
おぼろげに起きてはうまく体が動かず、力が入らない…
頭がぐるぐるする…そんな状態になった。
数十分後、「体が動かなすぎて不甲斐ない」という気持ちが爆発。せん妄状態でいきなり走り出し、港で盛大にコケて頭を打った。そこで、救急車を呼ばれたらしい。(気を失っていて覚えていない)
ちなみに救急車に乗ったのはいろいろ発作起こしてたけど、これが初めてだった。だって、てんかんだと思ってたから。
その後、目覚めた私。
完全に元気。
先生
「血糖値がものすごく低くなっていました。38でした」
私
「はぁ…?(なにそれ)」
先生
「通常、血糖値は70を切ると、いろんな症状が出始めます。50を切ると昏睡に陥ったりするんですよ。血糖値を上げるにはブドウ糖を入れるといいので、血管から投与しました」
私
「そ、それで回復したんですか。あ、私、てんかんを持っていて、似たような感じで倒れることがよくあるんですが…」
先生
「てんかんを原因として、低血糖は起きないと思うんですよねえ…」
え、なにそれ…どういうこと?
こんなやりとりをして、本来なら入院して、そのまま検査と言われたのですが、いかんせん九州。
「1週間以上の入院はさすがにできぬ」となり、東京の病院へ紹介状を書いてもらった。
先生
「なんかぼーっとするとか、調子が悪くなりそうになったら、ブドウ糖食べてね」
そういって、コンビニに売っているブドウ糖を渡された。
そんなんでいいのか!
その後、東京の大学病院へ行き、いきさつを伝えた所、
大学病院の先生
「低血糖がなぜ起きるのか特定するため、検査入院しましょう。1週間くらいかな」
即入院決定!
どんな検査をして発覚したのか
入院してからは、翌日から3日間の絶食試験に。
2日目の風呂上がりに「ちょっとふらつくかもな〜」と自覚してナースコール。
血糖値を測定してもらった所、まさかの血糖値20まで低下。
慌てふためき先生を呼ぶ看護師さん、
3人がかりで私の血管を探す先生たち、
口に放り込まれるブドウ糖、
意識が落ちそうになると「寝ないで!」と必死に起こされながら、ブドウ糖の投与と採血が完了。
この急激に低血糖起こしている時の血液検査の結果、「インスリノーマ」の可能性が高いと先生から言われる。
私
「なんですか、それは?」(風呂上がりで血糖値測られて倒れたそのままなので髪ビッショビショ)
先生
「インスリンてホルモンは、血糖値が上がりすぎないように、下げる作用を持つんです。あなたは血糖値が下がっているのにインスリンが大量に出っぱなしになっている。だから血糖値が下がり続けてしまう状態。コレまでの症状も当てはまる部分が大きいので、さらに検査をして確定診断しましょう」
私
「(聞いたこともない病気だな、おい…)」
ちなみに、インスリノーマをWikipediaで参照すると、こんな症状が書かれている。
これ……さっき書いた、私が抱えていた症状と、酷似しているのわかりますか。
やたら眠いとか、汗がやばいとか、めまいとか…。意識障害や錯乱。
あった、あったよ…!全部当てはまるよ!
まじかよ、インスリノーマ。
お前の仕業だったのか!!!!!!!
さらに様々な検査をして正式に「インスリノーマ」と確定。
この病気、日常生活を送ることが危なく、支障が大きいため、なるはやで手術というのが一般的なのだそう。
私はだいぶ長いこと、この低血糖状態になりすぎてて、慣れてしまったらしい。血糖値50でも「わりと普通」みたいな状態だった。
とは言っても1日のうちでずっと低血糖なわけではなくて、低血糖になるタイミングは突然きて徐々に下がる。なんなら毎日来るわけでもない。ご飯とか食べると回復する。たまたま血糖値が下がっているタイミングで血液検査するってことは普通にしてたらありえないと思う。
判明したときの血糖値20は、普通の人なら昏睡状態らしく、のんきに「ふらふらするかも〜」なんて話せているのが、おかしいと言われた。まじか
手術の詳しい話はまた別で書く予定だが、
結果、いまとても健康である。
てんかんの可能性も捨てきれなかったので、減薬しながら脳波を測定したり、経過を観察しているが、大学病院の脳神経内科の先生曰く「脳波に異常はない」とのこと。
てゆーか、側頭葉てんかんってなんだったんだよ、もー!
「薬飲んでも全然効かない」ってなって増え続けてたけど、あれ意味無かったじゃん。
大学病院の主治医に聞いた所、
「僕が診たことある、インスリノーマの患者さんの約4割が元々てんかんと診断されていた」
と、むちゃくちゃやばい情報を話してくれた。
まじかー
この記事を読んでいるてんかんと診断されている方へ
私は偶然、九州旅行で倒れたことで、発覚しました。
まさか脳が全然関係なくて、膵臓の病気だとはまじでわかりませんでした。
あまりにも症状が多様だし、膵臓を疑うなんてことには、自力ではたどりつけなかったです。
この病気のポイントはコレが揃うこと。
でもそんなの自分じゃわからないですよね。
なんと言っても悩ましいのは、普段生活をしていて、通常時には血糖値は普通の値だということ。
なので、健康診断などでもまず見つからないです。
低血糖が起きることで、発作がおきているので、発作ぽい症状があるなと思ったら、即血糖値を測ってみるのが、自分でもまずできる確認方法だと思う。
血糖測定器は通販でも買えるのですが、測定器だけでは使うことはできなくて、少量の血を出す針と毎回取り替えるセンサーが必要です。
このセンサーは薬剤師さんから買う必要があり、基本的には調剤薬局にしかないので、買った血糖測定器で使えるセンサーを調剤薬局で探す必要があるのが、少し面倒です。
私は近所の調剤薬局で血糖測定器とセンサーと針のすべてを揃えました。わざわざ探すのが面倒な方は最寄りの調剤薬局さんで一式を揃えることをおすすめします。
血を出したりするのは怖いな〜って方には、腕に貼りっぱなしにすることで血糖値を測定し続けてくれてアプリで確認できるようなものもあります。
これなら、このセンサーを買えば測定はiPhoneのアプリでもできます。1つで2週間使えるので、とりあえずその期間だけ血糖値を測ってみるならこれでも十分です。
リブレセンサーで計測しているとこんな風に推移を確認できます。
こんな風に低血糖(70以下)が確認できたら病院に行ってみてほしい。
診療科は内分泌内科や糖尿病内科が話が早いです。内分泌内科が一番確実。
もし、意識消失や錯乱などを起こしている場合は「これはてんかんの発作」と対処せずに、次に起きたら、救急車を呼んで病院へ行ってほしい。
インスリノーマだったら、確実に低血糖をおこしている証拠なので、病院で対処もしてもらえて、血糖値もわかるはず。
あと、発作ぽいときに何か食べると治るかどうか?
これはお金もかからずに確認できる方法と思う。今考えると、ごはん食べると正気に戻ることが多かったです。低血糖の状態なので糖を足したことで復帰しやすかったのだと思う。
飲んでて具合悪くなることも多かったけど、これは居酒屋でつまむものって、漬物とか魚とか唐揚げとかすぐ糖分にならないものばかりを少しずつしか食べないからだったと解釈してる。実際、そういう時の血糖値は上がらずに下がり続けていたので。
またラムネはブドウ糖の塊なので気になる人はこれを持ち歩いて、やばいなと思ったら3つ4つ食べて様子を見るのもおすすめです。もちろんブドウ糖でも良いよ。
この病気、診断までには時間がかかることが多く、平均して発症してから5年で発覚するとのこと。
「年間で100万人に1人」に発生するとかレアすぎだし、検査入院しないと確定できないので、見つかりづらい病気なのは間違いないです。
いろいろ調べてたら発覚するまでに20年かかった方もいるそう。
おそろしすぎ。
年間100万人に1人見つかるってだけで、本当はこの病気なのに診断されてないだけって人、もっともっと多くいるのではないかと思います。
「もしかしたら、私もそうかも」
そんな風に感じた方は、ぜひこの「インスリノーマ」疑ってみてほしい。
私で良ければ、いつでも相談に乗ります。
さいごに
最初に救急車で運ばれた日、私誕生日だったんですよ。
誕生日に旅先で倒れて救急車なんて、むちゃくちゃツイてないなって思いました。
でも、病気がわかるきっかけになったから、今は最高の誕生日プレゼントだなと思っています。
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