角膜内皮障害はこんな病気
角膜内皮障害はこんな病気
眼球の表層にある角膜は黒目の部分に相当し、5層に分かれています。このうち、最も内側にあるのが角膜内皮で、ここが傷つき、角膜に浮腫(むくみ)、混濁が生じた状態を角膜内皮障害といいます。
角膜内皮は角膜内皮細胞から成っていて、目の中を流れる水分が角膜内に侵入するのを防ぐ働きをしています。しかし、角膜内皮細胞は一度傷つくと再生しないため、細胞数は減る一方で増えることはありません。細胞数が減ると細胞の面積を拡大して機能を果たしますが、減りすぎると補完できなくなります。すると、角膜の層に水分が入り込むため、本来透明な組織である角膜が濁ってしまいます。
角膜内皮障害の原因
角膜内皮が傷つく原因には、以下があります。
(1) 外傷
(2) 目の手術
(3) レーザーによる虹彩切開(閉塞隅角緑内障発作の治療、予防のため)
(4) 急性緑内障発作
(5) 目の中の炎症(ぶどう膜炎など)
(6) 先天性、遺伝性の内因疾患
(7) コンタクトレンズの使用
(8) 加齢
角膜内皮障害の症状
角膜内皮障害が進行すると、角膜の浮腫のため視力が低下します。さらに進行すると、角膜の最も外側の層(角膜上皮)に水疱(すいほう=みずぶくれ)やびらんを生じるため、強い痛みが出るようになります。このような状態を「水疱性角膜症(すいほうせいかくまくしょう)」といいます。
角膜内皮障害の治療法
視力が低下した場合には角膜移植が必要となります。以前は、水疱性角膜症に対して角膜の5層すべてを移植する全層角膜移植が行なわれていましたが、最近では角膜内皮細胞層のみ移植する方法が主流になってきています。
角膜内皮障害早期発見のポイント
角膜内皮細胞の数は、正常では2,000~3,000/mm2※で、500/mm2以下になると水疱性角膜症を発症します。角膜内皮細胞が減少していると水疱性角膜症の前兆となりますが、眼科で特殊な撮影機器を使用した検査が必要となります。
※1mm2あたりの細胞の数
内眼手術(白内障手術や緑内障手術など)の前には、ほとんどの施設で角膜内皮細胞数を確認しています。数が極端に少ない場合は、手術によって水疱性角膜症になる危険があることを伝え、手術を勧めない場合もあります。
角膜内皮障害予防の基礎知識
ハードコンタクトレンズを使用している場合、角膜内皮細胞の減少が目立つ場合があります。コンタクトレンズ診療において角膜内皮細胞の撮影は保険適用ではないため、通常は行なわれませんが、心配な場合は医師に相談してください。コンタクトレンズ使用による角膜内皮細胞減少を認めた場合にはコンタクトレンズの使用は中止し、眼鏡に変更したほうがよいでしょう。
急性緑内障発作(緑内障の一種である閉塞隅角緑内障〈へいそくぐうかくりょくないしょう〉の急性発作)を起こしたときや、閉塞隅角緑内障の予防のため、レーザーによる虹彩切開を行なう場合があります。しかし、レーザー虹彩切開は角膜内皮障害を起こすことがあるので、同じ治療効果のある水晶体摘出(白内障手術)を行なうことが最近は多くなっています。