立つ。
私は初めて立った。周りは面白そうなものばかり。私よりも大きな人はみな一様に笑みを浮かべている。
私は、なんとなく隅に立っている。皆は仲良く遊んでいる。
私は、皆から離れて立っている。ドッヂボールとか花いちもんめとか、そういうの、好きじゃない。
私は、何故か一人で立っている。合唱コンクールとか体育会とか、団結力が必要なのだそうだけど、その団結の輪に、私はいない。
私は、孤独に立つ。大きくなった人たちは、私への態度を放置から攻撃に変えた。更に大きな人たちは私に逃げるようにいう。逃げるべきは私だろうか。あいつらは私と同じ人間だろうか。
私の足から力が抜けていく。もう立っていられない。でも、相変わらず皆は両の足で立っている。ずっと変わらず笑っている。
私は心地よく立つ。頬を撫でる風が、全身を包む陽光が私を抱きしめてくれた気がした。緑の葉しか見えない木が、見守ってくれる気がした。
もう、私は寝た。全身から芯が抜けていく。思い出すものは、全てつまらないものだった。
私は立つ。初めて見た景色のなかには、満面の笑みがあった。
11/1 #244