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138億年の時間の中で☆第36話☆「9年間」
3学期に入ってから高等部卒業までの日数を数えるようになりました。9年に及ぶ通学、電車送迎生活も終わろうとしています。
いつの間にか私の前を歩くようになった長男の背中は、たよりなさそうだけどたくましくもあって、学校という自分の居場所に向かって歩みを進める姿は本当にまぶしく映ります。
1年目。電車の長距離移動が心配だった。先頭車両で車掌さんの姿のマネを楽しんでいたね。案ずるより産むが易し。通学の負担よりも学校へ行くのが楽しさのほうが大きくなっちゃった。
2年目。電車内のマナーを完全に理解。私はほとんど教えていない。給食の時間に逃げ出したりと、随分と自由に過ごしていたみたい。大人しく弱々しかった君はどこいった?
3年目。通過駅の名前は完璧。学校が楽しくて、自分からいそいそと荷物の準備を完了させていたね。この頃は担任の先生をおちょくったり、低学年の子たちと一緒に学校中でおにごっこ。
4年目。登校が早くなり、電車も混み合う時間に。阪急電車ではぶつぶつ独り言がでるようになったね。ちょっとビックリするけど、不適切な言葉は出てこない。他の乗客の不安にならないように、私はあえて会話っぽくなるように返したりしていました。モチベーションが育たなかったことで運動会は欠席。一年くらい出なくても大した問題じゃないよ。
5年目。まさかの「ママ、家帰れ」。一人で登校できるからと付き添いを嫌がるように。私から逃げ出すものだから、三ノ宮駅で汗まみれになって探したことも1回2回じゃない。しっかり、思春期。バッチリ反抗期。運動会は積極的に参加。去年の不参加をしっかりバネにしたんだね。
6年目はコロナ禍。ステイホームを満喫していたかのようだったけど、「学校いきたい」「コロナが不安」と突然号泣したことがありました。君なりに異常な状況を理解して、やり過ごそうとしていたんだね。過剰な不安をあおらない事は大人側の責任。
7年目。新快速車内で一人トイレに行くようになったね。変な習慣がついたなあ。陶工の授業で、素敵なお皿や湯呑をたくさん作ったね。また先生をイジリをはじめたね。先生はおもちゃじゃないよ。
8年目。帰りの下車駅が変わることが増えたけど、「今日は六甲道で降りるから阪急には乗らないよ」と教えてくれたり。私の方が頼るようになっちゃった。苦手な授業は時間割表から消すなんて、なんとも愛しく、こざかしいマネをするようになったのもこの頃。
9年目。最後の一年。一日一日が貴重。一緒の時間を味わいたい。・・・なんて思っているのは私だけ。本人はいつもと変わらず「今」だけにフォーカスして過ごしている。
最後の一年で急に成長したね。仕事体験を通して誰かにサービスを提供することが楽しくなったり、語彙も増え、会話力も上手になりました。叩くように弾いていたピアノだけど、今は指を一本一本うごかして、静かに音を聴いている。それまでの何でもない毎日の中で感じる喜びや悲しみ、戸惑い、期待・・・を十分に経験することが進路先を決定するときに活かされたね。
人を信じていいのだと思えるようになったんじゃない?
世界は思っている以上に君をウェルカムしてくれると感じられるようになったんじゃない?
存在への自信がたっぷり育ったんだね。
そしてもうすぐ卒業式。
すでに手の中にあった色んな豊かさ。宝物。
ないものねだりばっかりの私に、小さな輝きを見つる力をつけてくれたのは、君なんだよ。
涙はその日まで、とっておきます。