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#2 アメリカ初心者のつぶやき(前編)
私のアメリカでの最初の生活は、30代半ばでの
インターンシップだった。インターンシップというと、
学生が企業等で就労体験をすることを指すのが一般的だが、
私は社会人が海外で就労経験ができるプログラムに応募し、
渡米のチャンスを得た。
日本での会社勤務が忙しく、疲労に危機感があった。
人生一度きり。やらない後悔のない人生を考えた。
学生時代、英語が好きだったことから、海外に行くことが
できる手段を調べた。
社会人インターンシップのプログラムに出会い、
アメリカ中西部の大学で成り立っている小さな町に
1年半滞在した。
新しいことをたくさん経験した懐かしい日々だ。
インターンシップ、その後の大学院留学、就職と
アメリカ生活も長くなってきた。海外での経験により、
一度きりの大切な人生が豊かになったことを思うこの頃、
アメリカに来たばかりの頃の、結構単純で、今より
少し若かった時代を振り返ってみる。
親切
アメリカでまず感じたことは、人が親切ということだ。
アメリカの空港に到着し、回転台からスーツケースを
取る時、重かったため自分で取ることができなかった。
隣にいた男性が手伝ってくれた。それまで見知らぬ人に
助けてもらった経験がなく(あるいはその記憶がない)、
アメリカ到着は感動から始まった。
アメリカに住み始めて半年後、インターンシップで所属した
団体が主催する国際会議が首都ワシントンDC近郊で行われた。
ワシントンDCと言えば、スミソニアン博物館が有名だ。
会議が終わった後、上司からスミソニアンを見て来なさい
(業務指示みたいな言い方ね)との勧めもあり、そのまま数日、
残った。スミソニアンの最寄りの駅で初めて地下鉄Metroに
乗ったが、券の買い方がわからなかった。
券売機の前で戸惑っていた時、男性から券を渡された。
戸惑っているのに気がつき、私に乗車券を買ってくれたのだ。
その男性は無言で私に券を渡して、足早にその場を去り、
人ごみに消えた。一瞬のことで、顔を見る余裕もなく、
お礼も言えなかった。この出来事は、時が流れても
私の心に深く残っている。
日常生活でも親切や助けを受けることが多々あった。
私も人のお役に立ちたいと思った。私は日本で親切を
考えたことがなかったのか(もしそうであれば、
ちょっとひどいね)、という素朴な疑問が出てきたが、
親切や助け合いは、アメリカ生活で学び、今、私が
大切にしていることだ。
大学の恩恵を受ける
インターンシップの職場は、non-profit(非営利)の団体で、
端ではあったが大学構内にあった。大学が運営する
循環バスの経路にあり、バスで通勤した。職場の同僚の
お父様が大学関係者だったこともあり、留学生対象の
行事に誘って頂き、ナイアガラの滝へのバス旅行に参加した。
職場の上司からも、良い機会だからと大学で参加できる
行事があれば行くことを勧められた。留学生の交流会、
英語が第2言語である人達を対象にした英語クラスにも
挑戦した。
週末、同僚は大学のアイスホッケーやフットボール の
試合にも連れて行ってくれた。私をご家族の中に
入れてくれ、彼女のご主人、娘さんと試合を見に行った。
大学のスポーツ施設は立派だった。
スポーツ観戦は楽しい思い出だ。
大学にはショップがあり、大学のロゴ入りオリジナル商品が
売られていた。Tシャツ、トレーナーや野球帽など、
身に着けるアイテムがたくさんあり、老若男女、多くの人が
着ていた。赤ちゃん用の衣類も販売されていた記憶がある。
大学はコミュニティの中心だ。
学生ではなかったけれど、小さな町で大学と関わることにより、
アメリカの大学に暖かさを感じた。
#3(後編)へ続く。。。