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未来は誰にもわからない

2025年の年越しの瞬間は渋谷の英鮨にいた。いつもの外の喫煙席のテラスに。テラスというには仰々しい、洒落乙とは真逆のビニール一枚でテーブルを囲った、冬場は僕ら芸人しか使ってないんじゃないくらい極寒の、てんで秘密にもなってない秘密基地。とにかく居心地がいいんだよな此処は。いつものメンバー、ダイタクさんにかたつむり本鮪兄さん、シカゴ実業山本プロ野球兄さんことプロ兄、そして芸人で日本一かっこいい名前、岸健之助ことネルソンズ岸さん。そしてのぶきよと僕。いつものメンバー。ここにダンビラやキンボシ有宗やワラバランス盛田、ド桜がいたらもうそこは東京や。東京の渋谷で、今年も年を越す。一体もう何年目だ、芸歴と一緒だから14年目か。毎年渋谷で年を越してもうそんな経つのかよ。


大晦日、無限大ホールでの年末恒例のお祭りライブ。ここ最近はカウントダウンが無くて23時くらいに終わるから、各々バラけて呑みに行く。家族がいる人は家に帰って、独り身たちはそれぞれ初詣や近くの呑み屋に。昔カウントダウンがあった時は、売れてるお兄さん達が年またぎのライブをやって、超若手は25時〜29時まで4時間ぶっ続けでネタライブだった。芸人もお客さんもスタッフさんも半分どころかまぶた8割閉じの限界突破。全員疲れ果てて全くウケない重すぎる空気、負の一体感。本当に無くなってよかった。いくら正月とはいえ深夜1時〜5時にあんなにお笑いを過剰摂取したら猛毒だ。若かったから出来たものの、アラフォーだらけの今の無限大芸人であれやってたら、死人が出てたぜ。


今年はムゲンダイ食堂なるものが出来て、支配人お手製カレーや豚汁、イワクラちゃんのチキン南蛮、ロジャーさんのソーキそばなどがケータリングであって至福の果てだった。「飯はパワーだよ」あの日の深キョンが心の中の時枝ユウジに語りかける。愛じゃなかったっけ?そう言って笑って目を凝らしたら、カゲヤマのタバやんさんだった。イワクラちゃんの代わりに唐揚げを揚げていたエプロン姿のカゲヤマのタバやんさんだった。いい加減にしてくれ。ムゲンダイ食堂の公式お姉ちゃん。お姉ちゃんてなんだよ。美味すぎてもうどうでもいいよ。結局メシなんだよな。美味いメシは笑顔になる。仲の良いやつらと笑いながら食うメシは最高だよ。お残しは許しまへんで。


最後のライブはチームごとに別れてコーナー対決。僕らダイタクさんチームは「東京よしもと伝説の復活祭」というコーナー。僕ら東京のパパ、山田ナビスコさんが東京よしもとの兄さん方とやってきた数々のコーナーから、ルーレットで選ばれた企画をやることに。選ばれたコーナーは


「バリカンつな引き」


なんでだよ!


真ん中にバリカンがあって、つな引きで引っ張られて先頭の人がバリカンで後頭部まで刈られたら負け。


なんでだよ!!


つな引きに負けたら刈られるんじゃなくて、勝負中に刈られるってなんだよ。後頭部までて。


年の瀬に、なんでアラフォーのおじさんたちが汗だくでこんな罰の極みやらなくちゃいけないんだよ。伝説だから、じゃないんだよ。


しかしこれは今から10年前くらいに、ネルソンズVSバビロンというライブで初めて開催されて、これを機に和田さんがボウズになった伝説の企画。そっからネルソンズさんはおもしろ荘でも優勝して、破竹の勢いで売れたきっかけの企画。その伝説が再び。これご利益あるかも。


ようし、やってやるぜ。


じゃねえよ。嫌だよボウズは。まんじゅうだから似合ったものの、芸風変わっちゃうよ。


なんだかんだ、ああだこうだ言ってチームのみんなで散々くだりをやって、さあ、つな引き開始。


「やばいやばいやばい、引っ張れ!引っ張れ!おい!なにしてんだ、もっと引け!危ねえ!ふざけんな!まじやばいって!おいっ!!!」
 

怒号と悲鳴が飛び交う中、交じり合う笑い声。大さんのホイッスルで先頭が続々と入れ替わる、地獄のロシアンルーレット。全員が汗だくで必死に綱を引き続け、叫ぶ。


元々ボウズの和田さんが一回きりの拒否権を使う。何してんだよ。でもこれはもうお約束。お約束は守らなきゃ、お約束じゃないじゃん。約束ってやぶったらダメだもんな。


相手チームのカゲヤマたばやんも拒否権を使う。


「髪は女の命だよ!!!」


何を言ってるんだ。食堂のお姉ちゃんこと先輩のおじさんは、1人の女性として叫んでいた。


大晦日に俺たちは何をしてるんだ。


白熱するつな引き。交代して先頭にいたかたつむり本鮪さんが、首を傾けて避けて、元々刈りあがっていたサイドにバリカンが走る。


「ただの散髪じゃねえか!」

「なに散髪代浮かせてんだよ!」


おおよそ大晦日どころか、つな引き中に聞こえるわけの無い会話。


そして結果、のぶきよの真ん中にバリカンは走る。駆け抜けてバリカン。


試合終了。負けたのはのぶきよでした。のぶきよでした。


信じられない盛り上がりを見せたバリカンつな引き。他のチームも素晴らしいコーナーだったが、結果優勝したのは、ダイタクチーム。バリカンつな引きの勝利。のぶきよの残り少ない毛命と引き換えに、手にした勝利。劇場は歓喜に包まれた。しかしニッ社チームの新喜劇も最高だった。まじで全員であれ参加したい。天才だよ辻さん。かっこよすぎるよな。


逆モヒカンから、裏で綺麗にバリカンで五厘刈りに仕上げたのぶきよ。信じられない可愛さ。可愛げの果て。全芸人から絶賛の嵐で。まんざらでもないどころか、胸を張るのぶきよ。大人なのにマルコメ味噌のCMすぐ決まるんじゃないか。大晦日、除夜の鐘打つの飽きて寺から逃げ出した小坊主が劇場に迷い込んできた。どこでひと休みしてんだよ。


中学生ぶりに友達を坊主にした。一学年2クラスしかいないのに、剣道部と野球部みんなでノリで坊主にしたもんだから、女子みんなにキレられたのを思い出した。可愛い娘たちはみんな隣中学のサラサラヘアーのサッカー部たちと付き合った。なんだか一瞬で全部思い出して泣きそうになったけど、今も中学と変わんねえなと思った瞬間に涙は目ん玉の根元まで引っ込んだ。


大晦日、2024年最後の無限大のライブは大盛り上がりで終了。僕ら英鮨に行って、またもやいつものメンバーでいつものように美味い酒とメシでガハハと笑いあう。


コーナー優勝してもらった賞金でのぶきよが全奢りしてくれた。全く酒飲めないのに、全く酒飲んでないのに、つな引きで負けて坊主になったのに、負けてコーナーて勝ったのに、てか五厘なのに。五輪の年に五厘、こりゃ縁起いいすわ!と奢ってくれた。


なんでだよ!!!!!!!


ちょうど僕はというと、半年前からエレカシ宮本さんみたいな髪型にしようと髪を伸ばしてる。
2025年、ここに来てサンシャインは坊主とロン毛のコンビになろうとしている。誰が想像しただろうか。未来は誰にもわからない。わからなくていい。世の中わからないことだらけだ。わかることはただ1つ、この仕事を愛してる。それだけだ。僕らの馬鹿みたいなもので、みんなの、あなた方の抱えてるどうしようもないモヤモヤしたものが少しでもふっ飛んでくれたら幸いだ。


年末はMUGEZINもダイタク生誕祭も、とんでもなかった。2024年を振り返ろうとしたけど、
この1週間のことで全部吹き飛んじゃったよ。12月はなんだかとても濃くて、思い出すには時間が足りないなぁ。ダイタク生誕祭は最高だったなぁ。


配信が皆さんのおかげで延長して、1月11日まで購入試聴できるみたいなので万歳。是非これを機に沢山の人に見てほしい。余興がもう全員素晴らしすぎた。ダイタクさんや、お客さんの顔も、あの熱も、空気も、温度も。配信が終わったらあの日の夜のことはしっかりとここに書こう。忘れないように。忘れないんだけどさ。


2025年、しっかりと日々を生きよう。出来るだけ楽しく柔らかく熱く、優しく、燃えるように生きよう。とりあえず痩せよう。脂肪を燃やそう。絶対に。太ってロン毛はシャレになってないじゃん。


いつも応援、購入、サポートしてくれる皆さんありがとうございます。全ては血となり肉となり、人生となります。


ここからは心臓に向けて、日々の想いと思い出を。


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読んでいただきありがとうございます。読んで少しでもサポートしていただける気持ちになったら幸いです。サポートは全部、お笑いに注ぎ込みます。いつもありがとうございます。言葉、全部、力になります。心臓が燃えています。今夜も走れそうです。