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もしも君が家出したならば

10月は2回も福岡に帰った。年に一回、観光大使をやらせてもらってる地元みやま市のお祭りでしか帰らないから、これは異例の大事態。
一つは弟の結婚式。もう一つは、地元みやま市を舞台にした映画の試写会。どちらも完全なる人生に刻まれる大事態、大メモリー。


弟である坂田家の三男、望の結婚式は、まさかの、いやもうそれは覚悟の上の、余興も頼まれるという大事態。大仕事。大プレッシャー。相方のぶきよも同席し、余興で漫才をすることに。もう普通に僕の両親の還暦祝いも、地元の中学の友達との呑み会も、友達の結婚式も、なんなら13年前に兄ちゃんの結婚式にも参加してるからもはや普通に親族。弟も当たり前のように親族席に呼んでいる。
友達の結婚式での余興もかなりの数をやらさせてもらったが、流石に直属の兄弟の式での余興はえげつない高カロリー。普通に兄弟の前でボケたりするの恥ずかしいんだよ未だに。兄弟でコンビ組んでる人たち考えらんないよ。ダイタクさんなんて双子だぞ。逆にありなのか。親子コンビなんてたまったもんじゃない。完熟フレッシュさんなんて凄すぎるだろ。むしろ愛のみ。じゃないと照れて照れてしょうがないよ。


結婚式となると、坂田家の親族も大集合で。久しぶりに会う親戚の兄ちゃん姉ちゃん、おいちゃんおばちゃん全員に「おぉ〜芸能人〜!太ったねぇ〜!」とイジられる。もし芸能人に会っても絶対ダメだよ言っちゃ。こんな大集合は冠婚葬祭でしか無くて、今回はそれはそれは嬉しい集まりで、そりゃもう笑って許すよそれぐらい。器も太りましたよあたくしは。イェイ、イェイ。ダブルピースバーガー。月見も添えて、スーパームーン。月に変わっておめでとう。お仕置きしてよ本当に。


披露宴の前に、両家の顔合わせ兼ねての挨拶。弟が順番に親族を紹介していく。張り詰める緊張の中、なんとか場をほぐそうと紹介を待たずに食い気味で


「次男の光です。」


最大級にひょうきんな顔で挨拶した。ここ数年でも上位に入る、信じられないぐらいウケた。そりゃそうだ。日常にこんな奴はいない。緊張と緩和。教科書の1ページ目をフルスロットルでやらせてもらった。


多分、新婦側の親族にも、どうやら芸人が紛れ込んでるとの情報はうっすら入ってたみたいで。しかし全く売れてもないから、知名度も無い僕の顔を知ってるわけがない。本当に芸人なのか?そんな不確定な不安な中、飛び出たイレギュラーなひょうきんに


「あぁ〜君かぁ☺️」

安堵と確信の緩和。これはちょっとでも売れてたら起きない緩急が生んだ笑い。売れてなくて本当によかった。いい加減にしてくれよ。


余興の漫才は新郎新婦のお色直しの後。緊張してガバガバ酒を呑んでたら、新婦のサプライズで、会場の前に呼ばれて、兄弟3人で花道を通ることに。


子どもの時以来の横一列の整列に照れてしまって、盛り上げるかととっさに弟をおんぶで運ぼうとしゃがんだら、弟どころかノリで兄ちゃんも乗ってきたので、謎に僕が2人を歯を食いしばりながらおんぶして運んだ。なんで1番苦労してる僕がまだもがいて、長男の兄ちゃんが1番上で1番大笑顔なんだよ。むしろ1番身体もデカい、新郎の望がおんぶする側じゃないのか。
兎にも角にも、なんだかんだここ最近で1番の2人の笑顔を見れたので良しとするか。こんなの子どもの時一緒にプレステやってた時以来だもんな。俺は顔歪めてたけどさ、いいんだよ。2人は知らないだろうけどさ、俺こないだまでギックリ腰だったんだぜ😊


お色直しが終わり、新婦の友人代表がYouTuberを模してとんでもないVTRのサプライズ。友達親族総出演の、本当にプロの人が編集やったんじゃないかというハイクオリティ。素晴らしい時間だった。


その後に僕たちの出番。まさかの新郎側の余興は実兄の漫才。なんでだよ。望の友達、はっぱ隊とかアキラ100%さんやってくれよ。それかケツメイシとかオレンジレンジとか歌ってくれよ。なんなら弟は2個下だから、弟の地元の友達は僕の直属の2個下の後輩。小中一緒でほぼ全員一緒に遊んだこともある、僕が中3の時の中1。直も直。


「光くん、楽しみにしとるけん!」

「光くん、今日漫才すっとやろ!?」

「光くん、帰りどげんすっと??」


もう完全な地元の後輩。なんならこいつらの兄ちゃん姉ちゃんが僕の同級生だったりする。


「おいお前たち、わかっとるよな。めちゃくちゃ盛り上がれよ。頼むぞ」

「わかっとぉって!任せてばい!!」


直属の後輩に公式にサクラをお願いする。ビールをつぎながら、賄賂ど真ん中。出来レースによろしく。当たり前だよ、カッコつけてなんていられない。弟の晴れ舞台、スベることは一切許されないのだ。


「それでは、新郎様のお兄様のコンビであります、サンシャインのお二人です!!」


司会の方ががなり、僕たちは飛び出した。


「どーもー!!新郎の兄で、サンシャインです、お願いしますー!!」


流暢に自己紹介し、ここまでに至る経緯を軽く話す。


「実は13年前、兄の結婚式にも、のぶきよと余興させて貰いまして。その時はまだ1年目のペーペーで、売れてないし知名度も実力もない、全然上手く盛り上げられませんでした。その時に誓ったんです。もし、弟の結婚式がある時は、その時までに絶対に売れて、テレビにバンバン出るような人気者になって、めちゃくちゃ盛り上げてやろうと!そしてあれから14年、、、まだ売れてません!!!」


「恥ずかしいよ!!!!!!!」


こんなツカミをしなくちゃいけないなんて本当に恥ずかしいよ。何が恥ずかしいって、これはウケますね〜とのぶきよと事前にネタ合わせしたことが恥ずかしいよ。


恥と引き換えに盛り上がる会場。


「なので、もう一回僕ら登場からやり直すので、皆さん嘘でもいいんで、めちゃくちゃ僕らが売れてるていでよろしくお願いします。華丸大吉さんが来たかのような歓声で。弟夫妻の為ですからね、お願いしますよ皆さん!!!」


参列の皆さん全員に盛大にパスをして、アイコンタクトで新郎の友人席にいる後輩たちに合図を送る。


(ここやぞ、頼むぞお前たち。)

(任せてばい、、)


会場の扉が開く。スポットライトが当たる。BGMがさっきより大きい。気の利いた音響さんだぜ。


「どーもぉーーー!!!!!!!!!」


M-1、キングオブコント、R-1、東京芸人なのにオールザッツ、その年に全ての賞レースを制覇した者にだけに贈られる拍手と声援が会場に巻き起こった。


ヒラリークリントンばりに会場の皆に指を刺し、歓声の中を小走りでステージまで駆け上がる。


最高に盛り上がった。ありがとう。ツカミはばっちり。さあ、ここから本ネタ。ついてこいよ。飛ばすぜ!!!!!!!!




めっちゃくちゃに、ややウケ。




そりゃそう。禁じ手だからね。そりゃ出だしがピークだよ。



てかおい、何してんだ後輩たち。何満足そうな顔で微笑んで見てたんだよ。ここからだから、本ネタで盛り上げてくんないと。何もう仕事は終わりましたみたいな、ととのいましたみたいな顔してんだよ。こっちは水風呂オンリーで震えてんだけど。


なんとか余興は無事終了。親戚のおいちゃんおばちゃんに、「いや前の時よりは、よかったたい。落ち着いとって、安心したばい。落ち着いとったねぇ〜」


よくねえよ!落ち着いてねえよこっちは!


致死量の汗をかいたが、弟もまんざらでもない顔で喜んでたし、新婦の友人たちからも写真撮ってください!サンバイザーで撮りましょう!サンバイザー!!と笑ってくれたから良しとしよう。あれのぶきよのギャグなんだけどね。親族もニコニコしてたし良しとしよう。良しとさせてくれ。



久しぶりに家族大集合して、とてもいい時間が過ごせた。なんだあの穏やかな柔らかい時間は。愛にできることはまだあるよ。ありがとう、弟よ。そしておめでとう。生まれたばかりの姪っ子を抱っこするのが慣れてなくて、抱かせてもらったのに危なっかしくて心配させてごめんよ。両腕次までにオリハルコンのサイドギャザーに改造しとくから。もし娘ちゃんがグレて家出しても大丈夫だから。東京で芸人仲間たちと溢れる愛で盛大に甘やかすよ。好きなものはなんでも買ってあげるし、全力で変顔してあげるし、TikTokも一緒にやる。培ったコネで会いたい芸能人にも全員会わせてさ、それもこれも君のお父さんお母さんが素晴らしいからなんだよって伝えるから。伝えるからさ。


テーブルの上に置かれた弟からのメッセージに


「東京からわざわざすいません。漫才皆楽しみにしとるけん。死ぬまで芸人でおって下さい。」




君のお父さんが言ってくれたから。叔父さんは今も芸人なんだよ。





いつも応援、購入、サポートしてくれる皆さんありがとうございます。全ては血となり肉となり人生になります。

ここからは心臓に向けて、日々の想いと思い出を。

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