見出し画像

短編小説Vol.01「制服はよく燃えると聞いたので」

人為的に植えられた桜が予定通りにきれいに咲いている。
あーただ感動的だ。
軟弱な感性が、通り一遍の感動を感じている。
隣にいる親も桜の綺麗さをありきたりな言葉で表現している。

15歳の入学式。
誰がためにこれをやる。
ただの仮染めの儀式は退屈だ。
面倒だな。
これから始める高校生という名の囚人生活に期待感なんて持てない。

校長が自分と同じ変な格好で前に立つ。
ファンファーレでも吹いてくれるのだろうか。

そうだ。抜け出そう。
そして本当の儀式を一人でやろうではないか。
嘘をつくのは得意だ。

校庭の真ん中で儀式開始だ。
あんな長い儀式ではなくて、この儀式は単純明快。
着ている新品の制服を燃やすだけだ。
校庭のど真ん中で燃やすだけだ。
これが俺の教養だ。モラルだ。

だってこの世の中で全て仮染めだもの。
僕がやるこの儀式だけが、不変の本物なんだもの。


そんなことを思いながら、校長の挨拶を背筋を伸ばして聞いていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?