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さんさーらとヤギの物語⑩ヤギの輸血

点滴治療の連続三日間の治療が終わったが、残念ながら、ユリルの状態は変らなかった。

依然として予断を許さない状態、活気がなく、一日中ずっと小屋の横に横たわり、草も食べない。

娘たちもぐったりしているユリルを心配して、この草ならどうかな、もっと小さくちぎったらどうかな、とあれこれみんなで試行錯誤の日々。

獣医さんにも、現状を報告。そこで、でてきた獣医さんからの提案に私はびっくりした。

”あとは、最後の手段の、輸血をしましょう”

輸血!?ヤギに、輸血!?

それ危なくないの?そんなパッとできるものなの??

分からないがゆえに不安もあったが、獣医さんが言うに、ヤギに輸血を行うと、かなりの確率で元気になるとのこと。

ユリルの生まれた、お向かいのおじさんのところに獣医さんと一緒にいって、おじさんのヤギから血液の提供をしてもらえないか、お願いしにいった。

おじさんは快くOKしてくれた。

”あの大きいのがいいさー。あれが親だから。”

このヤギ舎の中でも、特別に大きいオスヤギ。子供たちが”ボス”と呼んでいる、存在感抜群の強いオスヤギにドナー(血液の提供者)になってもらうことになった。

これは元気が出そうだ!!

親子ではあるが、やはり血液の型が合わない場合、拒否反応が起こる可能性もあると思うのだが、どうやって検査するのだろう?

ヤギの適合検査は、とても簡易的に行っていた。ドナーヤギから血をとり、輸血されるほうの血液と少量づつ混ぜる。

そこで、少し待って固まってこなければOK。輸血可。

ユリルとドナーのヤギの血液は固まらず、輸血が可能な状態だった。

まず、ユリルにいつも通り点滴つなぎ、ルート確保。

ドナーヤギから、血液を100mlもらう。

点滴の側管から、採取した血液をユリルへ流す。

この100mlの血液が、ユリルの救世主となるはず。

ありがとう、ボス!!

こうして、処置は終わった。獣医さんは、ユリルのためにやれることはすべてやってくれた。

輸血と輸液が終わった後、ユリルは今日一番元気そうな姿をみせてくれた。

ヤギ舎のヤギ(兄弟ヤギたちと一緒で安心したのかも)と一緒に草や野菜をもぐもぐ。

よかった!このまま元気になってほしい!!

今日もまた祈りながら一日を終える。

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