川崎ブースターの沖アリ訪問日記 vol.2
※vol.1はこちら↓
2024年12月7日(土)
朝8時。いよいよ沖縄へ出発。
飛行機に乗るまでに降りる駅を間違えて一駅走り、予約していた有料の特急を乗り過ごして倍額を払って次の電車に乗り、その最中にキャリーケースがぶっ壊れ二度と取っ手が伸びなくなったりしたが、どうにか予定通りの飛行機に乗ることができた。
私が最後に沖縄に行ったのは、高校の修学旅行だ。
当時は日程の大半が雨。シュノーケル体験で借りたシュノーケルは壊れていて溺れかけ、その後見学先の紅イモ農家では飼われていた馬に噛まれて病院送りにされ、全治二か月の怪我を負った(代わりに一生分のエピソードトークを手に入れた)。
良い思い出が無いとは言わないが、ろくでもない思い出も多い。
今回も幸先が悪いなと思いつつも、久しぶりの南国に私は心躍らせていた。
地元が湘南なせいか、海が近い場所は大好きだ。鬱陶しいくらいの潮風も強い日差しも懐かしい。朝焼けも夕焼けも星空も楽しみだ。
午前11時到着。沖縄は雨だった。
雨……雨か。
降り立った瞬間「わ~あったか~い!さすが沖縄!!」となるのかとひっそり期待していたが、「まぁ寒くはないかもな」ぐらいだった。これは沖縄がどうこうというより、東京が暖かくなりすぎていることが問題な気がする。
しかし飛行機を降りると重く湿度の高い空気が漂っていて、確かに海が近いことを感じた。
飛行機からバスに乗り込むと、バスは一面クリスマス仕様だった。沖縄もクリスマスとかするんだなと失礼なことを考える。
私は万年夏であって欲しい人間なので、なんとなく裏切られた気分だ。こちとら夏気分で来ているのに。
空港で待っていると、例の友人が迎えに来てくれた。
取っ手が壊れてただ重いだけの鞄と化したキャリーケースを失笑され、「この壊れ方はもう直らないので、新しく買い直して頂いた方が良いかと」と客対応された。友人は那覇空港勤務だ。
昼ごはんの選定は友人にお任せしたところ、空港内のポーたまに案内された。
私は明太マヨを選び、テイクアウトをして時短のため友人の車で食べた。
初めてスパムが美味しいと思った。スパムってあぁやって食べるのが正解なんですね。何度か食べたことはあるものの、どちらかと言えば苦手意識の方が強かったのでびっくりした。スパム、美味しいじゃん……。
運転してくれている友人の口に赤信号になるたびポーたまを押し込みつつ、まず向かったのは「沖縄こどもの国」だ。
若干不気味な動物たちが出迎えてくれたが、思った以上に中は広く綺麗に整備されていた。雨は降ったり止んだり、まぁ大体降ったりと動物園向きの気候ではなかったが、そのせいか他のお客さんも少なくゆっくり見ることができた。
まずは入ってすぐのワンダーミュージアムへ。
てっきり夜の動物園的な室内施設かと思いきや、ハンズオン展示が盛りだくさんの科学館だった。雨なせいか遠足らしき子供たちがひしめき合っていたが、その合間を縫って見学。
この施設が思いのほかすごい!バブル時代に作られた似たり寄ったりな展示が並ぶ科学館もあるなかで、子どもの発育を様々な方向から伸ばせるような展示が沢山あった。特に、恐らくここの職員の方が作られているであろうオリジナルの展示が良い。いかにもなサイエンスだけじゃなく買い物を疑似体験できるような展示もあって、数学じゃん!!と興奮した。
展示自体は子ども向けだが、大人も教育の目線から楽しめる良い科学館だった。
じっくりワンダーミュージアムを見学した後は動物園へ。新しい建物も多く、見せ方も面白いな~と思っていたらどうやら新エリアは2022年にリニューアルしたらしい。良いタイミングで来ることができた。
真っ当な推薦文はどこの観光サイトでも見られると思うので、個人的に面白かったポイントを挙げておく。
・不親切すぎる案内放送
リスの檻に入れるゾーンがあり、リスを逃がさないように入口と出口は二重扉になっていた。
人が通るとセンサーが反応し、恐らく「一枚目の扉が閉まってから二枚目の扉を開けないとダメだよ」的なことが放送で流れるようになっているのだが、バリバリのうちなーぐちなので何を言われたのかわからない。
一応上記の内容は何となく理解できるようになっていたが、そのあとに続く言葉が「ちゃんと守らないとナントカだからね」的な言葉だったので(知らない言葉すぎて記憶は曖昧だが)ナントカが理解できない軟弱内地人間は怯えるしかない。守らないと……守らないとどうなるんだ!?
慎重に一枚ずつ扉を開けて入った。
・厳重に守られたリュウキュウアカショウビン
事前に大学時代に沖縄で生物のフィールドワークを行っていた同僚に沖縄のオススメを聞いたところ、「沖縄のアカショウビンは色が鮮やかで可愛い」という情報をもらった。
調べてみると確かにマゼンタ色をしていて魅力的だ。野生で見るのは難しいかもしれないが、動物園なら見られるかもしれない。
見られたが、だいぶ遠目だった。隙間はあるのでリュウキュウアカショウビン本鳥がその気になれば近寄れるのかもしれないが、生憎その時ではなかったらしい。
モザイク状の鳥を眺めて終わった。
・ウチナーソウルフードアニマル
酷いよ。こいつが何したって言うんだよ。「美味しい」ということしかわからない看板が動物園にあっていいのかよ。食べてみたい。
存分に動物園を楽しみ、遂に沖縄アリーナへ。
ライカムの駐車場になかなか留められずうろうろしたり、シャトルバスに並ぶ人のキングズグッズを見てはワクワクしたり、シャトルバスの到着場所から沖アリ入口までの道が思ったよりフンワリしてるなと思ったら前を歩いているキングスブースターの方が「なんでこう、道なき道を毎回……」とボヤかれていて面白くなったりしつつ無事入場。
結構ギリギリの到着になってしまったのでアリグルもショップも見ることなく着席。見やすい。
でもこの時点では正直、予想の範疇を出ないなという感想だった。
勿論席は見やすいし綺麗だしアリーナも大きいが、他のアリーナでもあまり見づらいと思ったことはないのでそこまでの感動はなかった。
ちょっと事前に期待値を高めすぎちゃったかな~~と思いつつ試合開始を待った。
そして試合終了。
沖アリ最高~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!
手のひらを鮮やかに翻して申し訳ないが最高だった。
沖アリは演出に物凄く力を入れているという訳でもないし(勿論映像や音響は最高だったけど)、応援練習も(見落としてなければ)無かったしチアやゴーディの盛り上げも必要最低限だったが、今まで見てきた試合の中で一番楽しかった。
自分はデカい音が好きなので結構演出の良さもそこの試合を見に行くかどうかを決める上で重視しているくらいだが、演出の良さが誤差になるぐらい試合中が楽しすぎた。
結局沖アリが最高と言われる所以は施設の良さは勿論のこと琉球ブースターが作り出す空気感と、ひいてはバスケをカルチャーとして根付かせようとこれまで頑張ってきた沖縄県にあるんだなと痛感した。
モデルケースにしようとしたって一朝一夕には絶対真似できないものだ。
たまにこういう成功事例を引き合いにチアやマスコット不要論を唱える人がいるが、それは違うと思う。むしろチアやマスコットには、まだ盛り上がり方がわかっていないブースターが多いなか助けてくれている立場だ。
勿論毎回大声張り上げて盛り上がっている人もいるだろうけど、それでも首都圏のアリーナに行くと隣りの人が1Qから声を張ってる試合なんて体感3分の1くらいな気がする。初っ端のディフェンスからコールしてる人はかなり少ない印象だ。アリーナ全体で見れば声は上がっていても、自分の両隣がどっちも騒いでいることなんてほとんどない(常に1階席に座っていたらそんなこともないのかもしれないけど)。
別にそれが悪いとも思わないし最初から自分は静かに見る!と決めているならそれはそれでいいと思う。でも結局4Q終わりに近づくにつれて露骨に声は増えていくから、応援スタイルの違いというよりギアの上げ方がまだわかっていない人が多いのかなという印象だ。
というか私がそうだ。
スーパープレーが決まってワーワー騒いだり勝って叫ぶことはできても、最初から大声でコールすることはあんまりない。周りで声を張り上げている人がいないとなんか、ちょっとしづらいというか…。
多分、今までの試合で一番声を張り上げたのは昨シーズンの天皇杯準決勝、千葉VS宇都宮の時だ。ろくに分からないまま席をとったらアウェーサイドだったため周りが全部ブレックスブースターで、しかも20点差もつけられていたのでちょっとでもアウェイコールを崩せないかと必死に大声を張り上げていた。
個人的に、アウェーの方が自分が大声を出さなきゃ!!と思って頑張って声を出している気がする(この時は千葉ホームだったが自分の周りだけ見れば完全にアウェーだった)。ホームはまぁ、アリーナ全体が皆応援してるし……。
なんて舐めたことを考えたら、沖アリは最初っからギアフルMAXだった。
名古屋戦だったことも勿論関わっているだろうとは思うが、思わず笑っちゃうぐらい最初から皆叫んでた。まだ見てない人は良かったらバスライを見て欲しい。ティップオフの瞬間から4Q残り18秒くらいのコールが聞こえる。
皆が声出してるけど別にそれを強要してくる感じが一切ないのも不思議な感覚だった。「別に声出さなくてもいいんじゃない?まぁこっちは声出すけど」みたいな人が8000人集まっている印象。
たまに、大声を出して応援してたら隣りの人に嫌そうな顔された、なんてポストが回ってくるけど、そんな態度がまかり通ってしまうのは現状大声を出す人の方が少数派だからだろう。沖アリでその態度を取ろうとしたら前後左右上下に嫌な顔をしないといけない。
そして当然だとは思うが、やっぱり会場全体で騒ぎまくった方が楽しい。
ハイライトにも選ばれていたが、今村のフリースローのブーイングは思わず泣きそうになった。会場でも上の方に座っていたが、それでも降り注ぐ轟音のブーイングは凄かった。あれで琉球の今村にお別れできたと言っている人もいれば、もういいから早く帰ってこいと嘆く人もいて、悲喜交々感情が折り重なったブーイングだった。昨シーズンのチャンピオンシップ決勝でようやく今村を認識したぐらいの私ですら「なんでいなくなっちまったんだよ……」みたいな気持ちにさせられた。さすがに知ったこっちゃないだろう。
そして同じくエースに裏切られた移籍されたチームとして感じたのは、やっぱり勝つしかないなということだった。
同列に語るのはさすがに申し訳ないが、移籍前のチームのブースターがふっきれるには勝つしかない。別に勝てばふっきれるという訳ではないが、少なくとも勝利は必須条件だ。今後何がどうなろうが前と同じように好きだと思うことはないが、川崎がリーグ戦で全勝ぐらいできれば昔のことだと切り離して考えられるかもしれない。多分。どうだろう。わからないけど……。
この試合も物凄く良い試合展開だったけど、でも琉球が負けていたらまだ今村に対して燻ってる人も多かったんじゃないだろうか。(勿論まだ燻っている人もいるだろうが)
これは本人の態度どうこうではなく、勝利というのはそれだけ色んな感情を吹っ飛ばせるパワーがあるということだ。
弱点だったチーム相手にしっかり勝ち切って、多くのブースターに新しい幕開けを授けた琉球ゴールデンキングスは偉大だ。
ちなみに、琉球を好きになったおかげで遡ってコーのことも好きになった。おかげで群馬を嫌わずに済んでいる。辻の力も偉大だ。
勝利には大きなパワーがあるが、逆に言えば敗北には負の感情を増幅させるパワーもある。負ければ悔しいし、憎たらしいし、悲しいし、つらい。点数以上に、きっと感じなくて良いストレスまで皆抱えている。
しかし川崎の今年のスローガンは「変化に常に勇敢であれ」。
月面に着陸したジョン・ヤング宇宙飛行士も「変えるにはリスクが伴う。変えなければより大きなリスクが伴う」と言っていた。
我々も敗北と変化を恐れず、いずれ強くなるからせいぜい今はそこで待ってろという気概で今シーズンを乗り切る必要があるのかもしれない。
ちなみに、ハーフタイムには普段は都内で会っている職場の先輩(琉球ブースター)と沖縄で再会してはしゃいだり、クーリームシチューを食べたり、ゴーディの踊りを見たりと楽しく過ごした。それはそれ、これはこれだ。
勝利の余韻に浸り、シャトルバスに乗ってライカムに戻るとまだブルーシールが開いていた。予定としては数日後にブルーシールの本店に行こうとしていたが、なんだか楽しいし興奮で暑いし食べていっちゃおうとノリで入った。
友人のオススメの琉球紅茶わらび餅を選び、レジに向かうと店員のおじさんに話しかけられた。
「キングス?」
どうやら、私がユニフォームを着たままだったので声をかけてくれたらしい。
「そうです!応援行ってきました」
「チケットある?」
なんでそんなことを聞かれているのかわからずチケット画面を見せる。
「そしたら一個小さいのおまけで付けるから好きなアイス選んでね。あとシールもあげるからね」
後で調べたらライカムとキングスは大々的に提携しているので店舗によってはこうしたサービスが受けられるらしい。そんなことは全く知らなかったので、キングス応援しただけでアイス貰えるんですか!?と驚いた。
「今村が来てたんだっけ。なんで出て行ったんだろうね。琉球にいりゃよかったのに!」
今村も愛されている。
当然この時間に働いているのだから彼は応援に行っていない訳だが、そんな人でもちゃんと相手が名古屋なことを把握していたので地元に根付いているなぁと肌で感じた。アイスもおいしかった。本店も行こう。
帰りも友人の運転する車に乗り、これから一週間お世話になる友人宅に帰った。
初めてバスケを観戦した友人も楽しんでくれていたようで良かった。日曜日は友人が仕事なので、私は一人で観戦だ。
次に友人と一緒に観戦するのは水曜日の川崎戦になる。
「水曜日の席ってどのへんなの?」
「川崎の応援したいから、アウェーのあたりだよ」
プレイヤーズ1列目であることは黙っておいた。