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猫の学生証にて

2022年10月28〜30日、武蔵野美術大学の芸術祭(学園祭)のねこ部ブース「ムサ猫商店」にて、ムサビの学生証モチーフの「ムサ猫icカードステッカー」を販売しました。(ねこ部とは、ムサビに暮らす猫(ムサ猫)を見守るサークルです。)

ムサ猫icカードステッカー(全6種)


商品の紹介のツイートは「いいね」が400件を超え、3日間の販売では各日約30分で売り切れてしまいました。まさかそんなに反響があるとは思わなかったので十分な数を作っておらず、500枚の学生証は瞬く間に完売となってしまいました。私としてはムサ猫学生証に込めた思いをお客様に直接伝えながら販売したいと思っていたのですが、それが叶わなかったのが心残りです。その思いをここに残したいと思います。

まず、前提としてムサ猫学生証は「なめ猫免許証」のオマージュです。(知らなかったらお手数ですがgoogleで検索してみてください)

小学生時代、駄菓子屋でなめ猫のカードくじを何十枚と集めていました。「なめ猫」自体、というよりそのカードくじの一部の「なめ猫免許証」が特に好きでした。かわいい猫の写真が入っていて、かつ当時の自分は持っていなかった免許証を所有できる、大人になったような感覚が子供にはたまらなかったのだと思います。

この段階ではまだ免許証でした

時は流れて、2022年 大学4年生の秋、私にとっては最後だけど初めて参加した芸術祭。何を作ろうと考えていた時に『「武蔵野美術大学」の芸術祭の「ねこ部」のブースで買った』という体験の形を残したいなと思いました。(顔写真下の発行日も本物は3月発行ですが、その年の芸術祭の初日にしているのはそれも体験の記念になると思ったのでその日付に)

本物の学生証とムサ猫学生証

実は芸術祭の2日目に学校から「本物っぽくなければ(販売しても)いいんだけどね」と怒られました。が、私自身は「本物と似てなければ面白くない、本物と似ているとこに意味がある」と思っていました。(本物との区別は「猫の写真」が入ってることと本物と「色が違う」ことで十分区別できるはずと思ったのであれでGOにしました)
本物に似てないのを作るくらいなら、新たに猫カフェの会員証みたいなそういうデザインに作り直した方がいいと考えていました。

でもあえて学生証に近づけたのは「ムサビの芸祭の」「ねこ部の」ってことを強めたかった意味と、なめ猫免許証のような「リアルな大人体験」がみんなが持っている子供心に刺さると思ったからです。

ちなみに色は猫が体表に持ってる色をねこの本質として使いたかったので、全体のピンクは猫の肌や肉球の色、黄色(これは結果的に本物と同じになってしまいましたが)は猫の目のイメージで決定しました。

学生番号は本物に則って入学年の西暦下二桁(ムサ猫たちはそれぞれ何年からムサビにいたのか分からないので、制作時2022年だったから「22」」、学科番号(人間観察学科は222(ニャンニャンニャン))、下三桁は個人の番号(

クレア

🐱クレア→校門にいて学生からの認知度もno.1だったと思うので「001」

ふとし

🐱ふとし→クレアちゃんのを踏まえて、ふとしも校門のところにいるから連番にしたくて「002」

しめじ(左)とふくさん(右)

🐱しめじ•ふくさん→「482(しめじ)」、「293(ふくさん)」は当て字ですが、バラバラだけどそういう共通点でこっそり繋がってる、一見合わなそうだけど気が合う感じも出したかったのでこんな感
じに

お母さん(左)、トリ(中央)とモフ(右)

🐱トリ•モフ→「トリ、モフ、お母さん」の3匹で家族、な感じがしたので(制作当時の私からの印象ですが)まず3匹の「3」。お母さんがいなきゃ2人はいないのでお母さんは「01」(実際にはお母さんの学生証は作りませんでしたがお母さんの存在を匂わせたかった)、どっちがお姉ちゃんかわからないけどモフの方がお姉さんっぽいから「02」、トリは妹っぽいのと3匹のなかの一番最後(トリ)だから「03」)


学生証なのでやっぱり学科名とかも入れたくて(デザイン的にも空いてると間延びしてカッコ悪かったです。)人間観察学科って名前を考えました。私のエゴですが、人間が猫から色んな影響受けてるみたいに猫も人間と共存してる感じを出したくてこの名前にしました。
学部はそのままムサビにある学部名を、どっちかっていうと造形学部よりは造形構想学部に近いかなと思って使いました。

名前のローマ字表記の一部、しめじの「SI」とふとしの「SHI」で し の表記が違いますが、これは間違えではありません。本物の学生証では表記は統一しなくてはいけないと思いますが、字面と猫個人のキャラクターを考えてわざと使い分けています。しめじはローマ字にした時に「JI」とシンメトリーな感じが似合うなと思い「SI」、ふとしは名前にどっしりした質量を感じるので、より重そうな「SHI」にしました。

右下の肉球のはんこはふくさんの肉球をトレースしています。

個猫情報保護のためモザイク

ふくさんは今のねこ部が把握している限りでは一番歳が上で、ムサ猫のドン(だと私が思っている)なので最終決定はふくさんに委ねた感じになります。

トレースしたふくさんの肉球の向きや大きさも、人間が押したっていうよりも猫が踏んで押したみたいになるようにわざとランダムっぽい感じに(あくまで「ぽい」だけで、それぞれの猫の性格や体格、印象に合わせて)配置をしました。

顔写真も1000枚近くは撮ったと思います。(クレアちゃんだけはなかなかエンカウントできず、当時のねこ部の部員さんが撮ったものを使わせていただきましたが)ちゃんと証明写真(正面をまっすぐ見ている)っぽく、でも人(猫)相が滲み出てる写真を選びました。
最初はよくある証明写真みたいに背景を無背景にしようと思いましたが、ちらっと猫たちが生活してる場所が入るのは悪くないなと思ったので、あえてそのまま使用しました。

やっぱり自腹でお金を出して作ってるので、ある程度お金を回収しなきゃという気持ちもクリエイターとしてあり、6匹にしぼって制作•販売しましたが、本当は全員のを作って、「ムサビに(少なくともねこ部の人間には)愛された猫たちがいた」っていう証明を学生証という形でしてあげたかったんです。だから最後のところはねこ部の名前で締めました。

あと、これは完全に後日談なんですが、ムサビは学生証が卒業の時に回収されちゃうので実物は卒業生の手元には残らないんですよね。でもムサ猫学生証があれば記憶の形として実際に残る。だから定期的に大学時代の記憶を呼び起こす装置、また大袈裟に言っちゃうと歴史的な資料にもなると思う(この頃の武蔵美の学生証のデザインはこうだったんだって)ので、あえて本物っぽく作ってよかったなって今になって思います。

長くなりましたが、私のこだわり、いや、こじらせが詰まった猫学生証がどこかでかわいがってもらえていたらとても幸せです。

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