創造主とつくられたものの悲しみ、あるいはサカルトヴェロの野良犬たち
東京ディスティニーランド一人芝居/サカルトヴェロ凱旋公演【福岡篇】
東京ディスティニーランドの新作「魂の行方」(君たちはどう生きるかvsインディ・ジョーンズ運命のダイヤル)を見に行った。
灼熱の箱崎。歩いていると蒸発しそうな午後1時前。
東京さんは『「娘たち」 by Company COLL』の公演で黒海に面した国ジョージア(ちょっと前までグルジアと呼ばれていた国)へ行って、無事帰ってきた。
別府に本拠地を移してからの東京さんはなんだかいっぺんに宝箱を開けたように変化し、深呼吸し、生まれ変わり、その分疲れてた(気がする)。
案外筆まめにSNSを更新し、Spoonラジオを更新し、変化の断片をダダ漏れにしてくれる(でも内側の内側はわからない)。
その確認も兼ねて、今日は観劇。
どちらも未見の映画「君たちはどう生きるか」vs「インディ・ジョーンズ運命のダイヤル」の東京ディスティニーランド版
東京さんは実際にあった事件や記述、映画などをモチーフとして(これって嫌な言い方だな)作品を作る。
ウルトラマンからサロメまで、何人もの登場人物を入れ替わり演じる。
いちばん最初に見たのがいつだったか忘れてしまったけど、いつも心に突き刺さったままの破片はいつも
『想像することの苦しみ』と『創造されたものの悲しみ』のふたつ。
今回もさらに鋭く、初見の方でもその物語の「芯」がうかがえるようなお芝居だった。
「君たちはどう生きるか」も「インディ・ジョーンズ運命のダイヤル」も見てないので、映画のどの部分をぶった切って調理してるかはわからなかったけど、4時間の中編だった。
肉体表現としてのバトルシーンがいつもより少なく、過激に暴力的出なくとも、「怒りと悲しみ」がビシビシと伝わった。
宮崎駿とインディージョーンズへの深い愛情が渦を巻いて、音を立てて落下する。見えるはずのないアニメーターが踊り、コンプライアンスと理想に抹殺されるハリソンフォードは鞭をふり、4大天使は血みどろだ
フランケンシュタインと怪物、さらにはメアリーシェリーの三角関係
物語をつくるということは、その登場人物の人生を作ること。
物語は語られなくなれば死ぬのか?
物語が死んだら、その登場人物も死ぬのか?
登場人物たちの生死はどこで決まるのか?
鉛筆ひとつで、キーボードひとつで登場人物の生死を決めることができる「創造主」に責任はないのか?
東京ディスティニーランドのお芝居の中で登場人物は悩み、苦しみ、自分が「物語の中でしか生きられない」という絶望を知る。
物語を作るものも同様に「超えてしまった一線」に苦しむ。
東京ディスティニーランドは言う。
「物語の創造主は、キャラクターたちに幸せになってほしい」と願っていると。
想像の世界で真っ当に生きようともがくキャラクターを抱きしめ、その主張を聞く。物語は毎回違う地平に着地する。
僕らは「今日だけの彼ら」を見ることができる。
お芝居を続けよう。物語をつくり、更新し続けよう。
登場人物を想像し、憑依し、体力の限り演じる。
今回のお芝居の新しいテーマは「老い」だったと僕は思った。
昔の若い自分と出会うことや、少女時代の母と出会うこと。
若き自分との戦いという「勝ちも負けもない戦い」に僕らは日々巻き込まれている。
若さに価値があるという思いと、経験がモノを言うという思い。
「老いること」は「残りの人生」を想像することだ。
「もう最後なんだから好きにやらせてくれ」
人生を戦って、多くの人のために働いた彼らが最後に行き着く「自我」のお話だった。
「芝居を続けたい」「もっと面白くしたい」
東京さんはサカルトヴェロへいき、新しい地平に降りた。
僕も創造者の端くれだと自覚しているが、東京さんは「24時間、マイにつずっと想像について考え、反芻しろ」という。そうすることでしか「創られたキャラクター達」を幸せにすることはできない、と。
東京さんの「ラストアクションヒーロー」への想い
前に好きな映画をきいたら「ラストアクションヒーロー」だと教えてくれた。近くのレンタル屋さんにはなかったのでネットで探して借りた。
それを見た時「ああ、そうだったんだね」とはっきり分かった。
物語の中の人物は、映画のキャラクターは「誰かに創られた」とか「誰かが自分を演じてる」なんて微塵も思わずただ「自分の人生を生きてる」んだ。
勝手に殺したり、戦わせたりしていいもんじゃないんだ。
深い愛情に包まれたこの映画を、東京さんは生きてる。
そしていつも「精一杯やれ!」と全ての登場人物へゲキを飛ばす。
東京ディスティニーランドのお芝居は見る側にも覚悟がいる。少なくとも僕は「調子の悪い時」にはきつい。
最近もうまくいかないことが多くて、今日もキツイかな?とは思ったけど、疲労の倍以上の栄養をたっぷり注いでもらった。
ありがとうございます。
また、いつか。
別府にも行きたいです。