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ベテラン職人の創意工夫(19/100回)

僕は15年ほど前に職業訓練校で溶接を学んだのだけど、ベテランの溶接工が臨時講師として教えに来ていた。

大手の製鋼所で50年近く勤め上げた人で、溶接の技術はもちろん、ものづくりの面白さや先生が若かった頃の武勇伝まで色々話してくれた。

特に高度経済成長の頃の話は現代の常識からは想像できないことも多く、技術も情報も無い中でどうやってものづくりをしてきたのか、その体験談はとても面白かった。

当時は景気も良く、いろいろな仕事が舞い込むのだけど、作った経験はもちろん、作り方の情報も無い。
だから外国の製品を分解して研究したり、自分達ができる技術をかき集めて見よう見まねで作っていたらしい。
(戦国の世では刀鍛冶が鉄砲を作ていた!という話は何度も聞かされた)

先生はことあるごとに「ものづくりは創意工夫だ」と言って、色々試してみることを勧めてくれた。

経験や知識は誰にも奪われない。

失敗を恐れずたくさんいろんなことをやってみれば、いつの間にか誰にも真似できない技術が身につくものだと何度も教えてくれた。

失敗ばかりの不器用な職人ほど、ベテランになった時の技術の引き出しは多い。
反対になんでも器用にこなす人は自分のやり方しかできず、イレギュラーに対応できないし、人に教えることもできない。

それだけ失敗から得ることは大きいのだ。


僕がオーダーメイドで製品をつくることにこだわるのは、この先生の「創意工夫をしろ」という教えを信じているからだ。

どうすればうまくいくか考えて創意工夫と失敗を繰り返す。
その経験こそがサニーサイドスタジオの土台になるに違いない。

その土台を強固にするためには沢山の失敗も必要なんだと信じている。



昨日の記事にオリジナル製品のことを書いた。
現在、オーダーメイドで培った経験をもとにいろいろなことにトライしている。

失敗すれば確かにショックだし、惨めな気持ちになる。
失敗は経験だと言葉にできても、実際にはいつまでも引きずってしまう。
稀にうまくいくと自分は天才かもしれないという自惚れと、失敗をしてきて良かったという複雑な気持ちになる。

創意工夫は辞められない。

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サニーサイドスタジオ 高嶋洋和
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