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目指すものづくりの形と、変化を愉しむ金属の話。(22/100回)

どんなものでもいつかは必ず朽ちてしまう。
丈夫な金属も例外ではなく、時間の経過とともに少しづつ変化してく。

それでも金属は完全に形が無くなるまでには相当な時間がかかるし、きちんと作られた金属製品はとても長く使うことができる。

農鍛治だった祖父が数十年前に作った農具は、表面の錆を落とせば今でも使うことができる。
祖父が作り、祖母が畑仕事をした鍬や鎌はずっしりとしていて存在感がある。


ありきたりだけど「質実剛健」という言葉がしっくりくる。
僕の目指すものづくりは祖父の農具のようなモノなのだと思う。


金属の丈夫さはもちろん好きだし、ゆっくりとサビが浮いてくる経年変化も魅力だ。
モノはいつかは必ず朽ちるけれど、その朽ちてゆく様を何十年と愛でることができるのは素敵な体験だと思う。

人もモノもお店も歳をとる。

いつまでもピカピカでありたいという気持ちはわからなくもないが、歳を重ねること、そして変化していくことは悪では無いと思う。

変化を受け入れ、歳を重ねた皺を、体を慈しみ、積み重ねてきた歴史を誇りに思う。
そんな価値観もあっても良いはずだ。



以前、100年以上続く伝統工芸の社長の講演を聞く機会があった。

社長は「伝統とは革新の連続である」と言っていた。

何も変わらず漫然とものづくりをしていては、時代に淘汰されてしまう。
工芸という技術や伝統を守りながら、ニーズに合わせた製品にアップデートしていく。

そうやって変化し続けることで長く続き、結果として伝統になる。
何も変わららず続いていけるほど伝統という言葉は軽くないようだ。

「変わり続けることが伝統を生む」というメッセージは開業したばかりの僕にはまだまだ理解できていない。

でもせめて看板屋としては、伝統を重ねる事業に寄り添える存在でありたい。

変わり続ける事業と人。
そして看板。


数年後、数十年後の店先で変わらずお客さんを迎え入れる。

少しサビの浮いた看板で街を彩りたい。

祖父の作った農具。雨ざらしになっていたのを見つけて貰ってきた。


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サニーサイドスタジオ 高嶋洋和
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