シン・ウルトラマン感想 カラータイマーと童心
「シン・ウルトラマンにはカラータイマーが無い!?」
この数か月程、ネット記事やテレビニュースで何度も見たこの謳い文句。そして成田亨氏による初代ウルトラマンデザイン案ではカラータイマーが存在していなかったのであるというトリビアが紹介されるまでがワンセットだ。
カラータイマーが後付けられた理由については諸説あるが、その中にはタイムサスペンス的なハラハラ要素を持たせるために導入したというものがある。
本当にそれが理由だったかはわからないが、実際子供達からすればタイマー点滅はウルトラマンのピンチという一大事であり「負けるなウルトラマン!」と画面に釘付けになる瞬間を生み出している。それは現代でも同じで、ライブショー等ではカラータイマーが鳴ったウルトラマン達を必死に応援する子供達の姿を見ることが出来る。
しかし大人になると、カラータイマーが鳴ってもウルトラマンは最後に勝つという安心感がどうしても心の中に生まれてくる。子供の頃はウルトラマンの勝敗に目が離せなかったが、今はそれよりもドラマシーンや精巧なミニチュア特撮を注視している。
しかしシン・ウルトラマンは、そんな私を幼少期ウルトラマンガイアを見ていたあの頃に戻してくれる作品だった。
先ほど私達大人はウルトラマンが最後に勝つと知っているので、あの頃のような真剣な応援が出来ないと言ったが今作ではそうはいかない。
それもそのはず、ある程度ウルトラシリーズに触れている人であれば"初代ウルトラマンは最終回でゼットンに敗北する"ということをを知っているからだ。
知識があるが故、もしかしたらウルトラマンが負けるかもしれないと疑心暗鬼になりながら作品を観ることになる。タイマー点滅にドキドキしていた童心が再び自分の中に芽生えてくるのを感じた。
また、その童心を増幅させるための装置が前半~中盤に散りばめられた原作オマージュシーンの数々だ。リブート映画ということもありファンならニヤリとする演出が沢山あるのだが、中にはかなりマニアックなものもある。
普通にウルトラマンを見ているだけではわからないようなネタを随所で拾っており、正にオタクが喜ぶ演出と言ったところ。
これにより「いや~、このネタ拾うかね~」という大人ならではの優越感にひたることが出来る。そうして大人的な作品の楽しみ方が板についたところでクライマックス、一気にウルトラマンの勝敗を心配する童心を蘇させる。この緩急があまりにも絶妙で、自然に子供の頃に還らされた。
応援上映でもなければショーでもないので声は出せない。ましてや本来そんな年齢でもない。でも自分は確かに心の底で「頑張れ!ウルトラマン!」とさがなら子供のように叫んでいた。他のお客さん達も、固唾を呑みながら心の奥底で叫んでいたはずだ。静寂に包まれたシアターだったが、まるでウルトラマンフェスティバルのライブステージのように全員が一体となってウルトラマンを応援しているように感じた。
シン・ウルトラマンにはカラータイマーが無い。でもこの作品はタイマー以外の方法でサスペンスを生み出し、自分に無くしていた童心を取り戻してくれた最高の作品だったと思う。