言葉の前提とイメージの言語化の話
言葉でなにかを伝えるときやイメージを共有する際は『言葉に対して、それぞれが持つ前提が違う』ということを、仕事でも私生活でも常に意識しておいた方がいい。という話をしようと思います。
導入として、普段の生活でも実感のありそうなわかりやすい言葉を挙げると【当たり前】や【普通】や【一般的】といった個々の経験に依存する感覚的な言葉というのは、思っている以上に千差万別なので非常にやっかいです。
他にも【家族】や【友達】とか、最近でいうと【男】や【女】という言葉も、世代間や個々の環境によってイメージの差異が激しいので、なかなか難しいなと感じています。
■ 感覚を言語化するということ
自分は最近、『アイドルマスター シャイニーカラーズ(以下:シャニマス)』のまとめ記事を作成していたので、たくさんの方が書いた感想・考察の文章や日記などを読みました。
中にはものすごく言語化の上手い人がいる一方、あまり上手くない人ももちろんいて、感覚を言語化するというのは”才能”や”練習”が必要な行為なんだというのを改めて強く実感しました。
自分はwebデザインという仕事をしているため、別の人から提示された言葉や参考資料から感覚や雰囲気を汲み取って具現化する、という作業をいつもしているので、他人から伝えられる言葉やイメージの曖昧さに振り回されたりするのは日常茶飯事だったりします。
感覚を言語化する際には、「きちんと相手に伝わるかどうか」を意識しているのとしていないのではだいぶ結果が変わってくると思います。
相手に伝えるという意味で、感覚を言語化するのが上手い人は『例え話』も上手い人が多いです。『例え話』は、伝わりづらいことを相手に理解できるものに置き換えたり当てはめたりして、伝わりやすくする手法です。
『例え話』は本質を理解していないと上手くいかない場合が多く、そもそも語彙力や幅広い知識がないと思いつかない(結びつかない)ので、自分も『例え話』が上手い人間になりたいなぁと常々考えています。
余談ですが、人を説得するときに『例え話』を多用する人は話のすり替えが上手い人が多いので、よく考えると全然違う話だけどなんとなく納得してしまったという場合もあったりするので、簡単に鵜呑みにしていると痛い目をみることがあるのでご注意ください。
■ 相手の理解できる言葉の範囲『前提』
少し話は違いますが、シャニマス初心者の方の実況放送などで、相手に伝わらない言葉や事柄をコメントしている方をよく見かけます。
例えば、
・アイドル【田中摩美々】のことを『mmm』と表記する
・アイドル【杜野凛世】が出たときに『100時間回された女』と書く
・アイドル【浅倉透】が出たら『財布ないわ』とコメントする
上記のようなコメントが一概に悪いと言ってるわけではありません。伝わるもの同士で使うのであれば何の問題もない言葉です。
しかし、初心者の方の実況放送で上記のようなコメントをしている方は、相手の理解できる言葉の範囲『前提』というものを意識していないため、そういうコメントをしてしまうのでしょう。
言葉の『前提』を意識していないと伝えたいことが伝わらないだけでなく、「伝わったかどうかお互いにわからない」という状況によくなります。
あとになって伝わっていたかどうか確認し合うことはほとんどないので、「わからないことがあったときはその場で確認する」というのが、面倒ではありますがとても大切だと思います。
似たような事例で『話の主語を抜いてしまう』ということもよくあります。
自分にとっては当たり前のように「〇〇についての話」をしているつもりで話していても、相手は「なんの話をしているのか考えながら聞いている」なんて状況はけっこうあります。
なぜ主語を抜いてしまうのかというのも、同様に相手の『前提』を意識していないからしてしまうことではないでしょうか。
『主語を省いた会話』で思い出すのはシャニマスのユニット【ノクチル】の会話です。
特に【浅倉透】関連のコミュでは、そういう身内同士の『前提』を共有しているからこその会話が多いので、読む(聞く)人によって当たり前に読み取れる人もいれば全く読み取れない人もいたりするのが絶妙で、面白いところついてるなぁといつも感心しています。
■ 仕事で遭遇するとやっかいな言葉
では、ここで個人的『仕事で遭遇するとやっかいな言葉』紹介しちゃうぞのコーナー始めちゃいますね!©にちか
『仕事で遭遇するとやっかいな言葉』の1位は【ゲームっぽい】です。
【ゲーム】という言葉は、安易に使いがちな言葉ですが、ものすごく解釈の幅があるうえに個々によって認識の差が激しい言葉です。
少し例を挙げながら説明します。
下記のA~Dの人が【ゲーム】という言葉でイメージしているのはどんなデザインだと思いますか?
A:ゲームは子供の遊びだと思っている50代男性
B:ほぼ毎日最新のゲームを遊ぶ40代男性
C:ほとんどゲームをしたことがない30代の女性
D:スマホアプリをたまに遊ぶ20代女性
少し想像してみるだけでも全く違うイメージを持っていそうです。
では【ゲーム】という言葉で浮かぶイメージをいくつか挙げてみます。
①トランプのようなカードゲーム
②人生ゲームのようなアナログゲーム
③ファミコンのようなドットのゲーム
④3Dを使ったSFゲーム
⑤レゴやマインクラフトのようなボックスのゲーム
⑥RPGのような剣と魔法の西洋風ゲーム
他にも、違うイメージを持つ人はたくさんいるでしょう。
①~⑥もまだまだざっくりとしていて具体的とは言えないので、もっと細かく掘り下げないと本当の意味でイメージの共有はできません。
オーダーしたのが社内の人間であれば、当人と細かく確認していけばいいだけですが、クライアントや代理店からの提案だった場合は、すり合わせが非常に難しいので【ゲームっぽく】と言葉だけが来たときは本当に困ります。
(ここからはただの愚痴みたいなものです)
【ゲームっぽい】という言葉が出てくるような担当の方は、本人は具体的なイメージを持っている場合が多いので『その人のイメージしているデザインはどれでしょう?』みたいな面倒なだけで全く建設的ではないクイズに延々と付き合わされることになります。
そして、このクイズが始まるとデザイナーの目と心は徐々に死んでいきます。かわいそう!助けて!
会社や立場によって違いはあるとは思いますが、デザイナーはクライアントから始まる伝言ゲームの最後尾にいる場合が多いので、ニュアンスの削ぎ落された言葉から他人のイメージを汲み取るというのは非常に難しいなと感じる今日この頃です。
以上です。
読んでいただきありがとうございました!
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