君と見たジュラシック・パーク
趣味はなんですか?
何度もする応酬
蟻地獄みたいに
面接のように準備は必須だ
そんなこと答えられずに
契約を得ようなんて
バカげている
そうだろ?
趣味は映画です
僕も好きです
まあ大抵の人は好きだろう
そこからは探り合いだ
邦画が好きなのか洋画が好きなのか
字幕派なのか吹き替え派なのか
最近見た映画は何か
1番好きな映画は何か
邦画が好きなのはマイナス
吹き替え派はマイナス
マーブルはマイナス
くだらない損切り
最近実は映画を見ていない
ふと頭の中でよぎる
そんなので
本当に映画なんて好きなのだろうか?
見ている人は
年間100本の視聴を誇る
でも好きなんだよなあ
ただ見てしまうと
どうしても途中で再生ボタンを止めるのがイヤで
それだから見るまで
腰が重くなってしまうのだ
かといって映画館に行くと
終焉までいやがおうにも逃げられない暗闇が
けして怖くはないのだけど
それも億劫になってきてしまっている
あけすけに話すと
今まで映画と過ごした短い時間が
言葉として空気に触れることで音波になることで
侵される気がして
必死に最近の話題作を探す
実際見たしね
そう、実際俗物的で即物的な映画は嫌いじゃない
だけど学生時代は
ヴィム・ヴェンダースを勉強として見たりしたものだ
したんだけど
バグダッド・カフェだって
見たんだけど
実際俺も好きだって語られたって
実際あらすじなんて忘れたし
監督の名前も知っているだけだし
詳細なんて語れないし
心ここに在らずで
流行りの映画をはにかみながら伝える
そんな女に惹かれる男なんて
ろくなもんじゃないし
だけどそれで言ったら
ジュラシック・パークはすごく好きだ
なぜだか飛行機にあれば見てしまう
1話目の兄弟がたまらないんだよなあ
特にお姉ちゃん
なぜだろう
あの日
なぜかうちに泊まってくれた
しごく顔の綺麗な男の子と
指ひとつ触れずに
一緒に見たものだ
大学生にもなって
そんな醜態
見れたもんじゃないけど
その後、リングを見た
1人では見れやしないので
書を捨てよとは
正しかったのだろうか
いずれにしろ
自分の父親に呪いのビデオを見せに車を走らせる松嶋菜々子のラストシーンは
一生忘れられない
私はやっぱり
映画は好きじゃない
それを見るのは
義務に等しいからだ