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18-19 PL 第12節 Arsenal × Wolverhampton

前試合のELスポルティング戦で引き分け、グループリーグ突破を決めたものの、ウェルベックとリヒトシュタイナーが負傷し長期離脱が決定。特にウェルベックは深刻な怪我で今シーズンアウトの可能性もある。
ELから中2日で挑むウルヴス戦。ELでターンオーバーしたことでスタメンは大幅に入れ替え。プレミアリーグ前節のリバプール戦からは1名(イウォビ)のみを替えて挑むこの試合。ここまでアーセナルはプレミアリーグ2戦とELで1戦引き分けており3戦連続で引き分けと、勝ち切れない状況が続いているが果たして。


試合結果:Arsenal 1 × 1 Wolverhampton

得点
13分:カヴァレイロ(アシスト:ヒメネス)
86分:ムヒタリアン (アシスト:ラムジー)
交代
46分:イウォビ → ゲンドゥージ(4-3-3へ変更)
61分:カヴァレイロ → ジョタ
75分:コスタ → アダマ・トラオレ(5-4-1へ変更)
75分:エジル → ラムジー
75分:コラシナツ → ムヒタリアン (ジャカが左SBへ)
85分:ヒメネス → ギブス・ホワイト
■チーム概要
・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:4-2-3-1
保持:2-4-2-2
非保持:4-4-2

・ウルヴァーハンプトン(監督:ヌーノ・エスピーリト・サント)
フォーメーション
基本:3-4-2-1
保持:3-2-1-4
非保持:5-2-3


■アーセナルの基本ゲームプラン

【オフェンス】
CB2枚とCH2枚のボックスでビルドアップ。出口はSBがメイン。
ミドルサードからは、2ライン間のラカゼットやオーバメヤンにパスを供給したいが、ウルヴスのライン間圧縮によりスペースがない状態に。

ミドルサード~ファイナルサードでは、ハーフスペースと大外レーンを活用して深く侵入したいアーセナルだったが、ウルヴスの5レーンを埋めつつ中央を圧縮するディフェンスに苦しんでいた。

【ディフェンス】
基本はエジルを前に上げた4-4-2で守備。そこまで積極的なプレッシングは行わない。時折ウルヴスの3バックに対してサイドを上げて同数プレスを実行する時もあった。

■ウルヴァーハンプトンの基本ゲームプラン

【オフェンス】
DFラインでは、3バックでパスを回しながらWBが上がる時間を作る。時間が作れない場合は無理に繋がず前線へフィード。

ボールをキープ出来た時には、右WBのドハーティが中へ侵入。アーセナルのSBコラシナツを引きつけて大外レーンを空ける。空いたスペースへ右シャドーのコスタが大外レーンへ開き、ビルドアップの出口となる。

コスタが前向きでボールを保持した時が仕掛けるタイミング。ファイナルサードではカットインからの中央侵入か、クロスを狙う形が多かった。

【ディフェンス】
基本WBが下がって5-2-3でディフェンス。前線は3枚で中央を締めてサイドへ誘導。ただドン引きという訳ではなく、DFラインはファイナルサードとミドルサードの間ぐらいに設置し、ライン間を圧縮してスペースを消していた。

ミドルサードからは、サイドに蓋をしてアーセナルの前進を遮る。大外レーンとハーフスペースを塞ぎ横パスを誘発。DFラインも高く選手間の距離が近いので横パスをカットしやすくなる工夫をしていた。


■強固だったウルヴスの守備戦術

この試合、アーセナルが奪えた得点はわずかに1点。しかも相手ディフェンスを崩したというよりは、クロスがそのまま入るという運の良かった得点だった。(ムヒタリアンのクロスは素晴らしかったけど)

ウルヴスの守備は上でも記述したように、5-2-3のフォーメーションで3段階の流れをベースにしていたように見えた。

(1)前線中央を固めてサイドへ誘導


(2)サイドに蓋をして中央へ誘導


(3)圧縮したスペースでボール奪取

アーセナルがシーズン始めから意図的にチャレンジしていたポケットへの侵入。この対策として、”ハーフスペースと大外レーンの蓋”を実行してきたのだと思う。

9節のレスター戦10節のクリスタル・パレス戦でも同様に5バックでスペースを消されており、今シーズンのアーセナル対策として浸透してきた感じがある。

実際、アーセナルはこの5バックの守備戦術に手を焼いている。
ここ数試合、引き分けが続いているのも偶然ではないだろう。


■見応えがあった両監督の終盤の駆け引き

前半、ビルドアップのミスから失点し、0-1で折り返したアーセナル。
エメリは後半スタートからイウォビに替えてゲンドゥージを投入する。フォーメーションは、4-3-3に変更された。

狙いはサイドの数的優位を生み出すこと。のように見えた。
まず、今までのビルドアップではCB2枚-CH2枚で行っていたが、CB2枚-CH3枚にすることで中央で数的優位を作り、出口をSBだけに固定すること無く中央からもビルドアップできるようにした。

さらに、エジルが右から中央へ絞ってくることで、あえて左偏重の形を作り数的優位からサイドを押し込む形を狙っていた。

サイドを押し込むことに成功したアーセナルだったが、それでもなかなかポケットへの侵入は成功しない。

それならと、空いたスペースを活用してパス精度の高いジャカからアーリークロスを上げさせようと、エメリはコラシナツに替えてムヒタリアンを投入し、左SBにジャカを起用する。

しかし、ウルヴスも同時にスピードとフィジカルに優れたアダマ・トラオレを投入しフォーメーションを5-4-1に変更し、ディフェンスラインも下げてスペースを消し、カウンター狙いに変更する。

最終的には、左ハーフスペースのゲンドゥージからアーリークロスを入れ、ラムジーにチャンスが訪れるもコーナーキックに。そのコーナーキックをショートでつなぎ、再度左ハーフスペースからムヒタリアンが蹴ったアーリークロスがそのままゴールへ吸い込まれる形で同点に。

左ハーフスペースを使うというエメリの策は結果にはつながったものの、半ば強引なこじ開け方だった。ここまで引かれてしまうと、今のアーセナルにはそれしか無いのかもしれない。

逆にウルヴスは、5-4-1で守ってからアダマ・トラオレのカウンターでさらにゴールを脅かすシーンが何度かあり、効果的な采配だった。


■雑感

またもや引き分け。これで4試合連続の勝ち点1となった。
ここ数試合は、明らかにアーセナル対策を実行してくるチームが増えてきている。しばらく連勝を続けていたし、当然といえば当然なのかもしれない。

5レーンを塞がれた際の対策。
この打開策がチームに浸透すればアーセナルは、もう一歩強いチームになれると思う。エメリはどう対策を練るのだろう。

今はコンビネーションだけでなんとかしているが、高さやドリブルなどを武器とした質的優位が欲しいと感じた。とはいえ、最低でも冬の移籍マーケットまでは無理な話だし、獲得できるとしてもアーセナルは高額を出せない。

今のアーセナルメンバーで、この課題をどう乗り切っていくのか。
エメリがどういう戦術でアーセナルを次のステージへ引き上げるのか。
とても楽しみだ。