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18-19 PL 第30節 Arsenal × Manchester United
前節のノースロンドンダービーで勝ち点3を目前にしながらも、残念ながら引き分けに終わってしまったアーセナル。その後のELでレンヌとアウェイで対戦し1-3で敗戦。調子は下降気味だ。
対するユナイテッドは、スールシャールが暫定監督に就任してから負けなし。直前のCLでもパリ・サンジェルマンに逆転勝利を勝ち取り、チームの状態は上向き。好対照の両チームが激突する。
トレイラが前節のレッドカードで今節は出られず、さらにムヒタリアンが背中の怪我で欠場。そんな中でエメリが選んだアーセナルのスターティングメンバーは、最近の流れとは少し異なりオフェンシブなメンバーとなった。
PLでの前回対戦時レビューはこちら
18-19 PL 第15節 Manchester United × Arsenal
■チーム概要
【HOME】
・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:3-4-1-2
ボール保持:3-4-1-2
ボール非保持:5-2-3
【AWAY】
・マンチェスター・ユナイテッド(監督:スールシャール/暫定監督)
フォーメーション
基本:4-4-2
ボール保持:3-4-3
ボール非保持:4-4-2
■前半の試合展開
アーセナルは3バック+2CHの5枚でボールを循環させつつビルドアップ。WBがユナイテッドのSB-SH間の中間ポジションに位置取りすることでフリーになることが多くビルドアップの出口となる。また、ビルドアップ時にはエジルが下がってボールを循環させつつ、ミドルサードからはマティッチの脇で受けたりとフリーに動き回ってボールを上手く前進させていた。
ユナイテッドは4-4-2で守備セット。2トップで3CBにプレッシングを試みるもそこまで強度は高くない。また、どちらかというと左SHのポグバはCBまでプレッシングに行き、右SHのダロトはWBを見るような西遊非対称の4-3-3でプレッシングを行うときもあった。アーセナルの左サイドへ誘導しているような感じだ。恐らくこの狙いは、コラシナツを前へ上げさせて、その裏を突こうという事だと思う。左CBに入っているモンレアルは元々SBをメインポジションにしていることから対人の強さがないので、ユナイテッドとしては、ここを一つの狙い所にしているように見えた。
良い試合の入りを見せたのはアーセナル。丁寧なビルドアップから相手陣地深くまで押し込み、何度かペナルティエリアにも侵入を試みる。DFラインは高めに設定。前線の2枚オーバメヤン、ラカゼットのプレッシングも功を奏しておりロングボールを蹴らせることに成功していた。ラインをコンパクトに設定していた事で中央に厚みが出て、セカンドボールの回収率を高めていた。ラムジー、ジャカの運動量の多さもこのセカンドボール回収率を高める要素の一つだったように思う。
良い流れで試合に入ったアーセナルだったが、初めのビッグチャンスはユナイテッドに訪れる。前半9分。左サイドのルーク・ショーがポグバとワンツーでWBナイルズを突破。そのままルーク・ショーがアーリークロス気味に早いタイミングでGKとDFの間へ早いクロスを供給。中で待っていたのはルカク。シュートするも上手くミートできずボールはクロスバーに弾かれてゴールならず。その後もこぼれ球を拾われて2次攻撃につなげるも最後はポグバのヘディングシュートをGKレノがキャッチ。分厚い攻撃だったがギリギリのところでアーセナルが凌いだ。
試合が動いたのは前半12分。アーセナルは相手陣地で左右に展開しながらチャンスを伺う展開。右サイドのナイルズとラカゼットでDFを押し込み、バイタルエリアでフリーになっていたジャカへバックパス。ジャカはトラップしてそのまま得意のロングシュート。シュートはブレ球となりGKデヘアの逆をつくような形でそのままゴールに吸い込まれる。ジャカの素晴らしいロングシュートでアーセナルが先制に成功する。
先制後もアーセナルが主導権を握り形で試合が進む。ビルドアップでは3CBの数的優位を上手く使い、サイドではWBが幅を広く使う。ビルドアップから前線へのリンクでエジルが自由に動き回って攻撃のスイッチを入れる。守備時には前線から積極的にプレッシングを実行してセカンドボールを回収する。危険だったのは自陣までボールを運ばれた時。このときはWBを押し込まれ5-2-3のような形で守るため、CH脇がどうしても空いてしまう。ここを起点にサイドチェンジからピンチを招くシーンが何度かあった。
対するユナイテッドは、25分頃からフォーメーションを変更してくる。ダロトとルーク・ショーをWBに。守備時は5-3-2、攻撃時はポグバがトップ下のように振る舞う3-4-1-2のような形へ。WBを採用したのは、中間ポジションで浮いていたアーセナルのWBを捕まえることが主な狙いだろう。
ユナイテッドが噛み合うフォーメーションに変更したことで、アーセナルがビルドアップの出口としていたWBを塞がれる形に。徐々にアーセナルがビルドアップで上手くいかずフィニッシュまでいけなくなってくる。お互いにボール奪取後は縦に早い展開となり、カウンターの応酬を繰り広げるものの、スコアは動かず1-0のまま前半が終了。アーセナルが良い入りから先制に成功するも、ユナイテッドのフォーメーション変更で試合の主導権は徐々にユナイテッドへ流れた前半だった。
■後半の試合展開
後半、ユナイテッドはフォーメーションを変えずにスタート。ただ、CBはリンデロフとスモーリングのポジションをチェンジ。中央にリンデロフを配置してビルドアップをスムーズにすることが狙いか。
50分、後半はじめの決定機はユナイテッドに訪れる。ユナイテッド陣地のバイタルエリア付近でエジルがファール気味のプレスでボールロスト。そこからカウンターでマティッチから一気に右サイドの裏へ対角線のロングフィード。これがダロトに通る。サイドの深い位置からグラウンダーのクロスが通りフレッジがシュートするもこれはコシエルニーが体を張ってブロック。さらにセカンドボールをユナイテッドが拾い2次攻撃。バイタルエリアでラッシュフォードが前向きでボールを保持。そのままラッシュフォードが絶妙のタイミングでルカクへスルーパスを通す。一瞬GKと1対1の局面になるがトラップしたタイミングでレノが前へ出てコースを塞いでシュートストップ。決定的なピンチを防いだ。
その後も試合はユナイテッドペースで進む。アーセナルは前線プレスの際に3-4-3気味のセット、撤退時は5-2-3のような形になる。対するユナイテッドは3CB+マティッチの4枚でアーセナルの3枚に対して数的優位を作りビルドアップ、更にサイドではWBが高い位置にポジションを取りアーセナルのWBを押し込む。これにより開いたアーセナルの2CH脇を使いながら攻め込むシーンが良く見られた。
このままだとユナイテッドが同点に追いつくのも時間の問題かと思われた68分、アーセナルにチャンスが訪れる。カウンターからラムジーがドリブルで持ち上がり中央にオーバメヤン、右にラカゼット、左にエジルという選択肢。ラムジーはここで無理せず右サイドのラカゼットへ。ここでクロスを選択したラカゼットだったがキックはDFに遮られる。やむを得ずここから遅攻に切り替え。右サイドでボールを回しつつ、ちょうどペナルティエリアの角あたりからラカゼットがドリブルで思い切って仕掛ける。DFの間を強引に突破し、これをフレッジがたまらず後ろから止めに行き、ラカゼットが倒れる。微妙なシーンだったが判定はPK。ここでPKを獲得したラカゼットはすぐにオーバメヤンへ声をかける。前節ノースロンドンダービーのロスタイムでPKを失敗したオーバメヤンに「お前が蹴るんだ。そして決めてしまえ。」と言わんばかりに発破をかける。非常に胸の熱くなるシーンだった。これをオーバメヤンは冷静に最後までGKの動きを見て逆をつきゴールを決めてノースロンドンダービーの雪辱を果たす。
ユナイテッドは、選手交代で再度フォーメーションを変更。ダロトに変えてマルシャルを投入。4-2-3-1のような形に変えてくる。サイドの枚数を増やすことで厚みを持たせて押し込むことが狙いか。対するアーセナルはエジルを下げてイウォビを投入。フォーメーションを3-4-3に変更する。守備時はWBとWBが撤退し5-4-1の形で守る。ユナイテッドのフォーメーション変更に対応した形でサイドの枚数を増やした。
その後も両チームともに選手交代。ユナイテッドはマティッチを下げて17歳のグリーンウッドを投入。4トップのような形でオフェンシブにシフト。アーセナルはオーバメヤンを下げてデニス・スアレスを投入。更にラカゼットとヌケティアを交代。前線3枚がフレッシュになったことで下がって守備を行うのではなく前から積極的にプレスしながらユナイテッドの前進を許さない。
試合はお互いに最後までインテンシティが高く集中を切らさない好ゲームに。しかしスコアは動かず2-0でアーセナルが勝利を収めた。
■試合結果
Arsenal 2 × 0 Manchester United
■得点
12分:ジャカ(アシスト:ラカゼット)
69分:オーバメヤン(PK)
■交代
71分:ダロト → マルシャル
77分:エジル → イウォビ
80分:オーバメヤン → デニス・スアレス
80分:マティッチ → グリーンウッド
86分:ラカゼット → ヌケティア
■まとめ
アーセナルは試合開始からフォーメーションのかみ合わせのズレを活かし、WBの位置から効果的に攻撃を仕掛けられていた。その流れのまま早い時間帯で先制点を奪えたのは非常に大きかった。
また、この試合で勝負の分かれ目となったのは、エメリが決断した我慢の采配ではないかと思う。ユナイテッドがフォーメーションを変更して噛み合わせてきた前半25分からアーセナルが追加点を奪った69分までの間は、ユナイテッドのペースで試合が進んでいたにも関わらず、エメリは特に動かなかった。特に守備面に於いては、5-2-3で守る際のCH2枚の脇を再三使われていたものの、攻撃面を重視して見事に追加点を奪うことに成功していた。この時間を我慢し、選手を信じ、追加点につなげた采配は本当に見事だと思う。
その後もユナイテッドの采配に対して的確に対応し、手堅く試合を締めくくった。暫定監督であるスールシャールとの経験の差を見せつけたような勝利だった。
アーセナルはこれでホーム9連勝。今節でスパーズが敗れ、チェルシーも引き分け、ユナイテッドに直接勝利を挙げたことでプレミアリーグでは4位に浮上。3位のスパーズとも勝ち点差は1になった。もちろん差はまだまだ小さく、取りこぼせばすぐにひっくり返る状態であることには変わりないが、一つでも上にいることが重要だ。
これでアーセナルは、BIG6との試合はすべて消化。あとはチーム戦力的には格下とされる相手に勝ち点3を積み上げていけば、4位以上も現実的になってくる。残り8節を全勝で締めくくるぐらいの気持ちで闘って欲しいところ。
しかし、その前にELだ。ファーストレグを1-3で落としたレンヌ戦。ホームで強いアーセナルがレンヌをホームに迎えて挑むセカンドレグ。少なくとも2点が必要な状態だが、今節の調子を維持できれば逆転は可能だろう。