「既視感のある左右の違い」20-21 PL 第35節 アーセナル×ウェスト・ブロムウィッチ レビュー
来シーズンのCL出場に向けて最後のチャンスだったELで敗戦したアーセナル。プレミアリーグからはELを含めてヨーロッパの大会へ出場することが難しくなり、アルテタ続投に疑問を抱くサポーターも多くなってきている。アルテタがこのまま続投するのであれば、今節を含め残り4節で来シーズンに向けて期待の持てる内容を見せる事が必要だろう。
対するウエストブロムは、残留争いの崖っぷち。今節で負けるとプレミアリーグからの降格が決定する。残留請負人であるサム・アラダイスが意地を見せるのか。まさに背水の陣で挑む今節。
プレミアリーグでの前回対戦時レビューはこちら
■ チーム概要
【HOME】
・アーセナル(監督:ミケル・アルテタ)
フォーメーション:4-2-3-1
【AWAY】
・ウェスト・ブロムウィッチ(監督:サム・アラダイス)
フォーメーション:4-1-4-1
アーセナルは敗戦したELから中3日。さらに今節から中2日でチェルシー戦が控えていることもあり、ダーンオーバー気味の布陣に。ジャカが怪我により離脱し、ティアニーもELで出場したもののコンディションが万全でないということもあり、左SBにはサカを起用した。
■ 前半①:前回対戦時の再現
試合開始早々からウエストブロムが仕掛ける。前から圧力をかけてプレッシング。ボール保持からクロスを主体にした攻撃。アーセナルがクロスを跳ね返しては再度クロスが上がってくるような、ボールがポンポンと空中を飛び交うゲームに。なかなか落ち着かない立ち上がりとなった。
開始から5分ほど経過し、ようやく落ち着いてボールを保持できるようになったアーセナル。ウエストブロム陣内で右から左へとボールを運び、セバージョスからDFラインの裏を突いたサカへのスルーパス。サカのクロスがDFに弾かれるもこぼれ球をチェンバースがシュート。ブロックされたボールをペペが再度シュート。これは枠を外れたが、DFラインの裏をついたサカのランニング、セバージョスのスルーパスは見事だった。
ここ数節で左SBに起用していたジャカからサカに変わったことで、基本戦術も変更。ビルドアップ時にサカは高い位置へ移動して主に左サイドの幅を確保。右SBのチェンバース、CBのホールディング、マガリャンイスの3枚に、エルネニーとセバージョスの2CHの3-2でビルドアップ。右サイドはSHのペペが幅を取る形に。スミス=ロウは主に右サイド、ウィリアンは主に左サイドとのコンビネーションで相手を崩していく。
16分、アーセナルが右サイドでボールを保持。ウエストブロムの守備陣を集めておきながら、ペペが逆サイドのサカへ大きく展開。ロビンソンと1対1になったサカはドリブル突破からペナルティエリアのポケットへ侵入。グラウンダークロスを試みるも、中の選手がこれに合わせられず。その直後もまたセバージョスからサカへのスルーパスが通り、GKと1対1に近い状況に。しかしウエストブロムのDFが決死のスライディングでこれを阻止。ゴールにはつながらなかったものの、サカの素晴らしいプレーでアーセナルは左サイドを制圧していた。
右サイドで深く押し込み密集を作っておき、逆サイドにスペースを作って左SBで勝負を仕掛ける。この狙いは前回のウエストブロム戦でも用いられており、まさに前回対戦時の再現となっていた。
■ 前半②:怒涛の2得点
再三のDFライン裏へのスルーパスの効果もあってか、ウエストブロムは全体的に深い守備ラインに。アーセナルは楽にパス交換ができるようになり、ウエストブロムを深く押し込むことに成功する。
28分、アーセナルのボール保持からスミス=ロウが左サイドでボールを受けて中央へリターン。そのまま中央へランニングしてサイドにスペースを空ける。そこへウィリアンが入りボールを受け、DFラインの背後を取ったサカへ。そのパス交換の合間に、するするとペナルティエリアへ侵入しDFの視界から消える動きでゴール前に入ったスミス=ロウ。そこへサカのクロスがドンピシャリ。スミス=ロウが見事な左足のボレーでゴールへ叩き込みアーセナルが先制に成功する。選手各々がポジションチェンジしながらパス&ムーブを繰り返して生まれたゴールだった。
負けられないウエストブロムは前線のプレッシング強度を上げてアーセナルへ襲いかかる。33分、アーセナル陣地へ押し込んだ状態で激しくプレッシングでボール奪取を狙う。しかし、アーセナルは負けじとパス交換からプレスを剥がしてカウンターへ。セバージョスが上手くボールを運び右サイドのチェンバースへ展開。そこからペペにボールが渡り、チェンバースはそのまま右サイド大外を駆け上がりDFのライン裏を狙う。そのランニングを活かしてペペは中央へドリブルでカットイン。そこから左足を一閃。見事なミドルシュートがゴールに突き刺さり、アーセナルが追加点を挙げる。
その後もサカが何度もDFのライン裏を取り、チャンスが生まれたものの決定機には至らず。そのまま2-0で前半を終える。
■ 後半:ウエストブロムを押さえ込んだ1手
負ければその時点で降格が決定してしまうウエストブロムは、この試合で何度か惜しいミドルシュートを打っていた左SHのペレイラをFWへ変更。運動量のあるギャラガーと共に中央で走り回る。これによりウエストブロムはトランジションの強度が増し、アーセナルは前半ほどボールを保持できなくなっていた。
アーセナルは、マルティネッリを下げてラカゼットを投入。更にスミス=ロウを下げてティアニーを投入し、ウィリアンをトップ下、サカを左SHに変更する。戦術的な変更と言うよりは、負傷明けのレギュラー格2人のコンディション調整の意味合いが強そう。
しかし66分、ティアニーのクロスが味方に合わずウエストブロムボールとなり、そのままカウンターを受ける。ピッチ中央付近でパスを受けたペレイラがそのままドリブルで持ち上がる。セバージョスが必死に後ろから追いかけるもペレイラのドリブルが速く全く追いつかず。そのままDF陣も勢いを停められずズルズルと後退し、ペレイラにシュートを許してしまうことに。このシュートが見事にゴール右サイドギリギリに決まり、スコアは1点差に。
得点を挙げたことで勢いづくウエストブロムだったが、アルテタが上手く対応する。セバージョスを下げてトーマスを投入。対人に強いトーマスを中央で効果的だったペレイラにマークさせる事で抑え込む。この采配が功を奏し、ウエストブロムの攻撃をアーセナルが上手く押さえ込んでいた。
88分には、ペナルティエリア前でウィリアンがファールを受けて良い位置でフリーキックに。これをウィリアンが直接ゴール左隅に決めて試合を決定づける。ウィリアンはここに来てようやく嬉しいアーセナル初ゴールとなった。
試合はそのまま3-1で終了。アーセナルが勝利を収め、残念ながらウエストブロムの降格が決定した。
■ 試合結果
Arsenal 3 × 1 West Bromwich Albion
■ 得点
29分:スミス=ロウ(アシスト:サカ)
35分:ペペ(アシスト:チェンバース)
67分:ペレイラ(アシスト:タウンゼント)
90分:ウィリアン(直接フリーキック)
■ 交代
56分:ディアニェ → ロブソン=カヌ
60分:マルティネッリ → ラカゼット
63分:スミス=ロウ → ティアニー
68分:ロビンソン → ディアンガナ
76分:セバージョス → トーマス
■ 試合ハイライト
■ あとがき
EL敗退でチームとしてもモチベーションを維持するのが難しい中、無事に勝利を収められたのは良かった。このまま全勝でプレミアリーグを終えれば、来シーズンから新設されるカンファレンスリーグへの切符は手に入るかも知れない。それが良いことか否かは別にして。。。
ややターンオーバー気味に戦った今節。来シーズンに向けて大きなモチベーションを失った厳しい状況の中、チームとしての真価が問われるのは次節のチェルシー戦。ビッグロンドンダービーだと思う。
思い返せば、苦しいスタートとなった今シーズン。復調のきっかけとなったのは前回のビッグロンドンダービーだった。今節勝利を収めたものの、どん底には変わりないアーセナル。再度ビッグロンドンダービーをきっかけに復調のきっかけを掴んで欲しいが、チェルシーは新監督トーマス・トゥヘルの元でCLも決勝に進みチームは間違いなく上り調子。非常に厳しい対戦相手。それだけにここでチームとして何かを掴むことができれば、来シーズンに向けて復調できるかも知れない。
見出し画像 引用元:アーセナル公式HP
ハイライト動画:アーセナル公式 You Tube
フォーメーション画像作成:TACTICALista