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18-19 PL 第23節 Arsenal × Chelsea

前節のロンドンダービー、ウェストハム戦で手痛い敗北を喫したアーセナル。試合に敗れただけでなく、エメリがエジルを必要としていないといった類の噂が流れているなど、アーセナル周りは非常に悪い雰囲気が流れている。唯一のポジティブな面としては怪我人が戻ってきたことぐらいか。
そんな中でチェルシーをホームに迎えて挑むビッグロンドンダービー。第22節終了時点でチェルシーが4位、アーセナルは勝ち点差6で5位。さらに同じ勝ち点で6位にマンチェスターユナイテッドも迫っているという状況。勝てば4位との勝ち点差は3となり引き続き今後に希望が持てるが、負ければ一気にその差は9となり、プレミアリーグは早くも諦めなければいけないような状況に。まさに6ポインターの試合だ。
アーセナルは、ビッグロンドンダービーを勝利し勝ち点とともにチームに良い流れを引き戻せるのか。注目の一戦。

PLでの前回対戦時レビューはこちら
18-19 PL 第2節 Chelsea×Arsenal

■チーム概要
・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:4-3-1-2

・チェルシー(監督:マウリツィオ・サッリ)
フォーメーション
基本:4-3-3

■前半

試合開始早々からホームのアーセナルが前線から積極的なプレッシングを行う。特にチェルシーの心臓となっているジョルジーニョに対してはラムジーがマンマークにつくことでビルドアップを阻止。オーバメヤン、ラカゼットの2トップが2CBに、ジョルジーニョにラムジーがつきビルドアップをサイドへ誘導。SBへボールが出た時には3センターが横へスライドしてプレッシング。無理な体勢でボールを蹴らせて回収する。もし前線へパスが出てもソクラティスが潰す。アーセナルの守備が非常に機能した状態で立ち上がりから積極的なプレーを見せる。

攻撃面ではチェルシーがボールを保持し前へ出てくるということもあり、ボール奪取後は縦へ早く展開する形が多く見られた。特にチェルシーの左SBアロンソはオーバーラップすることが多く、その裏のスペースをラカゼットが狙いチャンスを創っていた。

そのアーセナルに対し、チェルシーはフォーメーションの穴をついてくる。アーセナルの3センターがスライドすることでできる逆サイドのスペースを狙い、サイドチェンジを上手く使いながらボールを前進させる。また、ラムジーがジョルジーニョについていたことでジョルジーニョ経由でビルドアップできない時にはCBのダビド・ルイスから中長距離のロングフィードで打開を試みていた。

前半10分頃までお互いに攻守で何度か良いシーンを作り、好ゲームを予感させる立ち上がりに。

そして14分。アーセナルがコーナーキックから先制。
ショートコーナーからベジェリンへ、ベジェリンが低いクロスを上げてこれをラカゼットがトラップ。トラップ直後にトントンッとドリブルでシュートコースを作ってニア天井をぶち抜く爽快なゴール。この試合、コーナーキックではショートコーナーを繰り返し利用しており、おそらく試合前に用意していたのだろうと思われる。

先制したアーセナルだったが、その後は3センター脇を効果的についてくるチェルシーの攻撃に手を焼き防戦一方に。ただ、自陣深くで守る先にオーバメヤン、ラカゼットの2トップもしっかりとプレスバックし、強固なディフェンスで枠内シュートを打たせない。ボールを奪った時にはカウンターでラムジーと2トップが駆け上がり非常にハードな試合展開が続く。

アーセナルには苦しい時間帯が続いていたが、39分にまたもやセットプレーからゴールを奪う。トレイラが蹴ったフリーキックを大外にポジショニングしていたコラシナツがマイナスへヘディングで落とし、そのボールをダイレクトでソクラティスがクロス。アウトサイドに引っ掛けた絶妙なクロスがコシエルニーへ通り、ヘディングは出来なかったものの肩で押し込み貴重な追加点。アキレス腱断裂から復帰したコシエルニーの嬉しいゴールとなった。

前半終了間際の45分、チェルシーのコーナーキックからアロンソのヘディングがバーに当たるシーンがあったものの、スコアは動かずアーセナルが2点をリードした状態で前半が終了。ボールを保持していたのはチェルシーだったが、守備から入りゲームを思い通りに展開できたのはアーセナルだった。

■後半

2点ビハインドのチェルシーだが後半も戦術は特に変えずにスタート。ボールを保持し、サイドを深くえぐる攻撃を狙う。アーセナルも前半同様に前線では3枚が積極的にプレッシングを行い、3センターがスライド守備でなんとか守る展開。

63分、攻め込むもののなかなか得点が奪えないチェルシーはコバチッチに替えてロス・バークリーを投入。

アーセナルは徐々に運動量が落ち始め、前線3枚のプレッシングが弱くなる。前線のプレッシングから自陣まで攻め込まれた時にはプレスバック、ボール奪取したらカウンターとハードなタスクをこなしたのだから当然といえば当然だ。そこでエメリはラムジーとラカゼットを67分に交代させる。そしてナイルズとイウォビを投入。イウォビが左WG、ナイルズが右WGで4-3-3のような形に。

対するチェルシーもいよいよ戦術を変更。ウィリアンに替えてじるーを投入。アザールを左WGへ移動させて前線に高さを出す。

2枚替えを行ったアーセナルだったが、その直後にアクシデントが発生する。ベジェリンが膝を負傷し交代を余儀なくされる。接触は無かったが雰囲気からも重症ではないかと予想された。(後日、前十字靭帯の断裂が判明)

アーセナルは負傷のベジェリンに替えてエルネニーを投入。直前に交代で入っていたナイルズが右SBへ、エルネニーがラムジー役のトップ下、トレイラを右SHへ、4-4-1-1のような形に。3センター脇のスペースを予め埋めておき、アザールのいるサイドへトレイラを配置して守り切る形を狙ったのかもしれない。(その直後にアザールとペドロが一時的に左右でポジションチェンジを行っていた)

80分にチェルシーは最後の交代枠を使う。ペドロに替えてハドソン・オドイを投入する。しかしアーセナルが3センターから中盤の横幅を4枚に替えたことでスペースが無くなり、しっかりと守れる形に。交代で入ったハドソン・オドイが活躍できる場面は殆どなかった。

結局そのままアーセナルが守りきって2-0のまま試合終了。ビッグロンドンダービーはアーセナルに軍配が上がった。

試合結果:Arsenal 2 × 0 Chelsea

■得点
14分:ラカゼット(アシスト:ベジェリン)
39分:コシエルニー(アシスト:ソクラティス)

■交代
63分:コバチッチ → バークリー
67分:ラムジー → ナイルズ
68分:ラカゼット → イウォビ
68分:ウィリアン → ジルー
72分:ベジェリン → エルネニー(負傷交代)
80分:ペドロ → ハドソン・オドイ

■アーセナルの守備戦術と狙い

この試合で注目すべき点はアーセナルのハイプレスを軸とした守備戦術。今シーズン、ジョルジーニョを中心としたパスワークでビルドアップを試みるチェルシー。その対策としてジョルジーニョに前線でマンマークをつける戦術を採用するチームが増えているようだが、アーセナルも同じようにまずはジョルジーニョを抑える。マンマークする選手はラムジー。無尽蔵のスタミナを誇る頑張り屋。まさに適任だと言える。

ジョルジーニョにラムジーを、2CBには2トップをマンマーク気味につけて中央からのビルドアップを阻止しサイドへ誘導する。SBへボールが渡ったタイミングでCH3枚がスライドしてプレッシング。自由にボールを運ばせない。

対するチェルシーは、アーセナルが前線に3枚使って3センターがスライドするなら逆サイドは空くよね。ってことでサイドチェンジを交えながらSBを上げてサイドを攻略してくる。特に左SBのアロンソはチェルシーのオフェンス面ではカギを握っており良くオーバーラップ、インナーラップを仕掛けてきていた。

左SBのアロンソが上がってくることを想定していたアーセナルは、その裏のスペースを何度も狙っていた。ポジティブトランジションでは、縦に早い展開でアロンソの裏のスペースを突いてカウンターにつなげる。前半早々にビッグチャンスが生まれたのもこの形。

2トップ+トップ下でビルドアップを阻止し、SBへ誘導、3センターがスライドしてプレッシング。押し込まれた際には2トップもプレスバックして自陣へ戻る。さらにカウンター時には前線3枚が果敢に上がりチャンスを狙う。ハイプレス&カウンターで非常に消耗する戦術だが、スピードのある前線に運動量豊富なラムジー、ゲンドゥージ、トレイラといった面々がいたことでとても理にかなった戦術だったと思う。

■相対的な戦術と絶対的な戦術

エメリとサッリ。この両監督の色が非常に色濃く出た試合だったと思う。

サッリはナポリ時代からそのスタイルを基本的には変えず、4-3-3でショートパスを軸にトライアングルやひし形を各所に作り、ビルドアップしボゼッションしながら崩していくていくスタイル。

対するエメリは、基本軸はショートパスでビルドアップし、サイドからチャンネルを狙う戦術があるものの、相手によってスタイルを捨てる時は捨てる。今シーズン4バックから3バック、1トップから2トップなど何度もフォーメーションを変えていることからも如実に現れている。

サッリはそのスタイルを変えない絶対的な戦術を採用するが、エメリは相手によって柔軟にスタイルを変える相対的な戦術。絶対的な戦術はハマれば強いが、対策されると脆い面も持ち合わせている。今回のビッグロンドンダービーでは、エメリが上手く対策した結果だと思う。

ただ、マンチェスター・シティしかり、リバプールしかり、トップを行くチームは得てして絶対的な戦術というものを持っており、相手の対策をも上回ってねじ伏せる強さを持っている。今回はアーセナルの対策に敗れたものの、チェルシーもその位置へ行こうと試行錯誤していることだろう。

試合には勝ったものの、エメリが率いるアーセナルもそういった絶対的な戦術が必要なのではないかと考えさせられる試合だった。