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千早茜『透明な夜の香り』について-愛着と執着の違い

こんばんは🌱ひさしぶりの投稿になってしまいました。涼しいとか肌寒いをあっという間に通り越してすっかり寒くなりましたねえ。
今回は小説の中に出てきた言葉で考えたことを書いていこうと思います。ネタバレは無いので、小説を読んだことがない方も安心してください。

小説について

千早茜さんの『透明な夜の香り』は2020年4月に集英社より刊行されました。調香師がお客さんからの注文を元に様々な香りを作るお話です。「プルースト効果」なんて言葉もある通り、香りはいつまでも記憶に残ると言われていますね。皆さんも香りによって過去を思い起こした経験はありますか?香水などが好きな方にはぜひご一読いただきたい小説です。初めて千早さんの小説を読みましたが、穏やかでありながら凛とした空気を携えた作品だなという印象を持ちました。

今回のテーマ

こちらの小説の中で、「執着と愛着の違い」を問われる場面がありました(正確な文章や場面をメモしておくのを忘れていました、、申し訳ないです)。
この場面を読んだ時、ちょうど「他の人に取られたくないからあなたと付き合いたい」という思いに対する違和感を言語化することがわたしのプチテーマだったので、「執着と愛着の違い」という言葉にピーンと反応しました。

「執着」と「愛着」の違いとは?

まずは、わたしが思う「執着」と「愛着」の違いを説明したいと思います。一言で表すと自分のことしか考えないのが執着で、相手のことを思いやるのが愛着かなと。
「執着」は、相手を信頼していない・自分に自信が無い・相手の変化を受け入れられないから芽生える感情で、「愛着」は、相手の存在だけでなく、相手の変化や自由も含めて相手を大切に思う感情ではないかなと考えました。

「他の人に取られたくない」は判断基準

では、なぜ「他の人に取られたくないから付き合いたい」という言葉に対して違和感を抱いたのでしょうか。それは「他の人に取られたくない」という本人の欲望のみが、付き合いたい理由に反映されているように聞こえたからではないかなと思います。相手を好いているというより、相手を所有したがっているような感じ。一般的には、大切な家族・大切な友人は複数人いて、大切な恋人は一人しかいないのが当たり前とされていますよね。その「当たり前」が執着に拍車をかけるのではないかなと。その「たった一人」は誰から見ても特別な立場じゃないですか。誰も反論できない「確立した存在」になることに憧れるから、あなたの恋人になりたい・あなたを恋人にしたいという欲求に繋がるのかなと思いました。
付き合いたい理由が複数あって、告白するかしないか決断する時の判断基準が「他の人に取られたくない」であるのは構わないと思います。むしろ、そうやって判断することが多いですよねきっと。ただ、付き合いたい理由が「他の人に取られたくないから」のみだと、私のことは何も考えていないのかな、自分さえ良ければそれでいいと思ってるのかなと思ってしまいますよね。
わたしはどちらかというと自由でいることに幸せを感じることが多くて、執着を感じると逃げたくなるし、愛着を感じるとその人を信頼できるようになります。だから「他の人に取られたくない」という言葉を聞いて違和感を抱いたのかなーと思いました。
告白する側・付き合いたいと思っている側は相手のいろんなところに惹かれて好きになって、好きでいるだけで満足できない気がしてくるから、告白するかしないか迷うのだと思います。で、その判断基準が他の人に取られてもいいかどうか。
告白する方が「他の人に取られたくないと思ったから付き合ってほしい」と伝えると、告白された方は「え、自分のものにしたいから付き合ってくれってこと?」って思う場合も、もしかしたら相手によってはあるかもしれないですよね。今回わたしが考えたことを当てはめると。だから、告白する方は「あなたのこういうところに惹かれて、いいなと思って、そのうえ他の人に取られたくないと思った」と言ったほうが、気持ちが真っ直ぐ伝わるのかなーなんて思いました。

まとめ

小説に出てきた言葉を元に自分の考えを深めたり、考えを少し先に進めたりするのはやっぱり楽しいですね。同じ言葉を読んでもわたしよりもっとずっと早く核心に辿り着く人はたくさんいらっしゃると思うのですが、今後も自分のペースでウンウン唸りながら考え続けていたいなと思う今日この頃です。
言語化できるようになるまで違和感はありましたが、「他の人に取られたくない」と言われたのはちょっとだけ嬉しかったです(大して需要のない惚気をかましました大変申し訳ございません)。相手から執着じゃなくて愛着を感じられたから嬉しかったのだと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました。明日もいい日になりますように🌙