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「泣き」 のち 「笑い」
大好きな叔母が亡くなった。
私は,小さい頃から,たくさん叔母に面倒をみてもらった。
勝手口から,
「こんちわー」
と顔を出し,手作りのたくあんや煮しめ,そして,農家から買ったりんごをよく届けてくれた。
いっしょに,買い物や温泉にも行った。
叔母との思い出は尽きない。
「今までありがとう」
心を込めて,お別れの花を手向けた。
釘打ちの音に,もう会えないのだと胸が締め付けられる。
棺を乗せた車は,叔母の実家があった町を通り,中津川に架かる上の橋を渡って,北山の火葬場へ向かった。
その後を,私達を乗せたマイクロバスが続く。
叔母は荼毘に付された。
再び,マイクロバスに乗り込んだ。
帰りの車中,誰も何も話そうとしない。
上の橋の手前で,信号待ちをしていた時,バスの中が急にざわめき出した。
「どうかしたの?」
「塚ちゃんがいるって!」
「えっ,塚ちゃん?どこ?」
窓の外に目を向けると,橋の擬宝珠の前で,A.B.C-Zの塚田僚一さんがテレビのロケをしていた。
輝く素敵な笑顔だった。
「おー,塚ちゃんだ!」
「ほんとだ!塚ちゃんがいる」
「みんなで手を振ろうか」
「喪服を着た人達が,バスから一斉に手を振ったら,さすがにヤバいでしょう」
バスの中が,どっと沸いた。
悲しかった分,たくさん笑った。
一緒に泣いて,一緒に笑って,
バスの中は,まるで一つの家族のようだった。
アイドルってすごいな。
一瞬で,私達を笑顔にしてくれるのだから。
叔母も,私達のすぐそばで,
「えっ、塚ちゃん?どこどこ?」
と笑顔で話しかけているような気がした。