異文化間ケア 介護士@オーストラリア
来年は、日本人高齢者と外国人介護士の異文化間ケアについて研究しようと決めました。本格的な研究はこれからですが、研究計画書を書くためにいくつかの文献を読んで思ったことを少し。
日本人高齢者が無意識に重視することの一つに「礼儀」や「マナー」があります。でも、外国人介護士にとっての良い介護とは、家族のようなケアであることがあります。そのため、言葉遣いや態度がフレンドリーになりすぎることがあり、日本人からするとこれを「マナーがなってない」「失礼」と捉えることがあります。言語の壁に次いで障壁になることのようです。
逆に日本人は一定の距離を保ち、マナーを重視しますので、日本人介護士が外国人高齢者をケアする場合には、そのことが壁になることは少ないのではないかと思われるかもしれませんが、逆の意味で壁になってたなぁと今自分の経験を振り返ると思います。
私が介護士を始めた頃、クライアントさんと一定の距離を保ってお仕事をしていました。子どものことや夫のこと、過去のこと等を聞かれるのがとても嫌で、あまり話をしなかったですし、クライアントさんのプライベートなこと(ご家族のことや過去のこと等)を私から聞くことはしませんでした。いつも与えられた仕事をすることを徹底していました。フレンドリーすぎるクライアントさんが苦手でもありました。
でも、いつだったか、何がきっかけだったか覚えていませんが、聞かれたら子どものことも夫のことも過去のことも包み隠さず話をするようになったんです。そうしたら、クライアントさんたちは、私の子どもたちのことををまるで自分の孫のことのように思い、成長や成果を一緒に喜んだりしてくれるようになり、私の家族もひっくるめてすごく大切に思ってくれているんだと実感することが増えたのです。そして、私もこの人のために頑張ろうと思ったり、逆にクライアントさんのことも意識して聞くようにすることで、その人の喜ぶこと悲しむこと、人柄をもっともっと理解できるようになりました(それまではタスクを完了すること重視しすぎていました。話を聞くことも同じくらい大事だと今は思います)。そして、そのご家族ともグッと距離が縮まって、訪ねてきたお友達に対しても、家族のように紹介してくれたりして、介護のお仕事自体もやりやすくなりました。文献を読んだ時、外国人介護士がしている「家族のような介護」というものがどういうものか今ならわかりますし、それが日本人からすると受け入れ難いこととして捉えられてしまうことも分かる気がします。
もちろん、お友達ではないので、一定の距離感は大事です。だから初対面で夫の仕事や収入まで聞かれるのは、やっぱり嫌ですし、私も私からずかずか踏み込んで聞くことはしません。話したかったら聞きますよ、というスタンスです。
日本人高齢者が外国人介護士からケアを受ける時、ちょっとマナー悪いと感じても、「マナーが悪すぎる!」と腹を立てるのではなく、それが文化の違いから来るものかも、とちょっと考えてみるのもいいかもしれません。そうすると、距離がグッと縮まって、いい方向に進むかもしれませんよ。マナーよりお互いを思う気持ちがもっと大事だと思うのです。