優しい言動
「来年から違う学校に行くことが決まって、みんなの担任の先生は4年生から変わります。」
小学3年生の3学期の出来事‥‥すごく良くしてくれた担任の先生が4月から別の学校に転勤することになったという。
私が通っていた学校では2年ごとに担任が変わるシステムで、本来であれば5年生に進級するときに代わるはずだったのに。
その年は転校していく子が多く、3学期にクラスメイトがかなり減っていて、そんなところに担任の先生まで居なくなるということで、クラス全体がざわついたのを覚えている。
そうしたことがあって、寂しい気持ちも残しつつ4年生に進級した4月のある日、転校した先生のお住まいに伺って、クラス全員からのささやかな贈り物と感謝の言葉を伝えようということになった。
ただ、クラス全員でお宅に押し掛けるのは迷惑だし、代表者を決めて少人数で伺うことにして、その人選をどうするかクラス会で決めることに。
他の先生にも相談した結果、3名程度に絞って行ったほうがいいんじゃないかということになって、そのうちの二人は学級代表ということに決まった。
増えてもあと一人だよね・・・ということになり、だれが同行するかで希望者が複数いて、なかなか決まららず時間だけが過ぎていく。
私はどうしても「最後の一人」になりたかった。
3年生に進級した時、いままでの引っ込み思案で内向的な自分を変えたくて、そのことを相談したのがその先生だったのです。
それから事あるごとに私を気にかけてくれて、ずっと寄り添ってくれたお陰でクラスメイトとも積極的に関わるようになったし、「笑顔が増えたね」っ言ってもらえたときは本当に嬉しく思ったものです。
最後の一人はなかなか決まらず、結局はくじ引きで決めようということになったのですが・・・私はくじ運があまり良くないので、なかば諦めていたところへの「当たり」。
本当に嬉しくて、飛び上がって喜ぼうとしたら「えーっ、”陽だまり“ が行くのー」と、公平にくじ引きで決めたにも関わらず、数名がクレームを付けてきたのです。
「なに言ってるの?この子たち」と思ったけれど、途端に内向的な自分が表に出てきて反論もできずにオロオロしだしたころ、学級代表の女の子がその子たちに向かって言い放ったのです。
「なに言ってるの?くじ引きで決まったことだし、文句ないはずだよね?」って・・・
それまで不満を口にしていたクラスメイトは、途端に「シーン」となりあっさりと引いて・・・そのあとすぐ、学級代表の女の子が私に向かって「ニコッ」って笑いかけてくれたのがすごく嬉しかった。
それと同時に先生に教えてもらった「自分が友達に『こうしてほしい』って思っている通りに、友達に接しなきゃダメだよ」って言葉がふと思い出されたのです。
学級代表の女の子は、私の立場になって考えて接してくれたんだなと気づいたら、「私もこうなりたい」と思ったものです。
後日、先生のお宅に伺った時にその時の様子と先生の言葉の事を話したら、その言葉がアリストテレスの「自分が友達に望んでいる通りに、友達には振る舞わねばならぬ」という言葉が元になっているのよって教えてくれました。
学級代表の女の子がしてくれたことと先生がくれた言葉・・・二人の優しさは今も色褪せることなく心に残っています。