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第3のおじいちゃんのあこがれと愛情

「おじいちゃん、ありがとう!」

子どもたちが電話で話をしています。
相手は第3のおじいちゃん。
リンゴを送ってくれたお礼を伝えました。

ん?第3のおじいちゃんとは?

うちの子どもたちには、おじいちゃんが3人います。
決して、家庭環境が複雑なわけではありません。

今日は、第3のおじいちゃんのお話です。

第3のおじいちゃん誕生前夜

今から10年ほど前。
私たち一家は、親戚の葬儀に出席するため、義父母と共に義父の出身地を訪れました。もうすぐ2歳になる長男も一緒です。

葬儀後の食事会でのこと。

お腹がふくれて場の雰囲気に飽きてしまった長男が、勝手にうろつき始めてしまいました。長男は人見知りをしないので、いろんな人のところへ行ってはニコッと笑い、場の雰囲気を和ませます。
しかし、親戚にあいさつ回りをしていた私たちは、長男を見失わないよう必死です。目で長男の動きを追いながら、親戚とお酒を酌み交わします。

私たちの様子を見かねた義父が、長男の遊び相手を買って出てくれました。おかげで私たちは安心して、親戚へのあいさつ回りを無事済ませます。

長男は、義父にいっぱい遊んでもらってご機嫌。その姿をニコニコと見つめる人がいました。

義父の兄です。
夫からすると伯父、私からは義伯父にあたります。

義伯父には、跡取りがいません。
当然、孫もいない。
なので、孫と遊ぶ義父が新鮮だったようです。

遊んでいる途中、長男がおもちゃのボールを落としてしまいました。ボールは、義伯父の足元へ転がっていきます。

「どうぞ」

義伯父がボールを拾って、長男に渡してくれました。

「ありがとう」

長男はにっこりとお礼を言うと、義父のもとに駆け寄ります。長男の後ろ姿を、義伯父はじっと見つめました。その視線は、とても温かいものでした。

第3のおじいちゃん、誕生

名古屋へ帰った後、義伯父は何かと長男のことを気にかけ、お手紙やお年玉を送ってくれるようになりました。まるで孫のためと言わんばかりに、色々とよくしてくれるのです。二男が生まれてからは、二男に対しても同じようにしてくれました。

最初はありがたく受け取っていたものの、ずっと続くので、私たちはだんだん戸惑うようになりました。こちらからもお歳暮やお中元は送っているものの、それ以上に受け取る金品が多いから、本当にこのままでいいのだろうか。

もしかして、うちの子たちのどちらかを養子にして、跡取りにするつもりだろうか。大げさと思われるかもしれないけど、それほど義伯父は子どもたちをかわいがってくれていたのです。

私たちの心配を知ってか知らずか、ある日義伯父からまた手紙が届きました。手紙にはこう書いてありました。

「これからは子どもたちに、私のことをおじいちゃんと呼ばせてください」

ん?おじいちゃん?

とうとう義伯父は、おじいちゃんを名乗るようになってしまいました。

第3のおじいちゃんが、ここに誕生したのです。

いや、ちょっと待って。

おじいちゃんが3人って…
何も知らない人からしたら、ややこしい!
訳アリ家系って疑われちゃう!

それとも、養子縁組計画のひとつか?
距離を詰めて慣れてきたところで、「養子にしたい」って切り出されるのか?
それは嫌。絶対イヤ。
子どもたちは私たちが育てるんだ。

落ち着け私。落ち着くんだ。

とにかくまず、状況を把握するために、私は正しい続柄を調べました。

義伯父から見たら、うちの子たちは「姪孫(てっそん)」にあたります。決して孫ではありません。

「甥の子供」って何て呼ぶの?行政書士が家系図で解説 より借用

逆に、息子たちから見たら、義伯父は「伯祖父」にあたります。おじいちゃんではないのです。

「祖父の兄弟」って何て呼ぶの?行政書士が家系図で解説! より借用

それらを乗り越えてまで、「おじいちゃん」を名乗りたい義伯父。
さて、どうしたものか。

義伯父の「おじいちゃん」へのあこがれ

そこで私と夫は、義父母に相談することにしました。

孫じゃないのにおじいちゃんと呼ばせること。
もしかして、養子縁組を考えているのではないか。
今までたくさんのお金や贈り物をいただいているから、義伯父がどういうつもりか気になってしまう。

心配なことを全部正直に話しました。
義父母は、私たちの話を真剣に聞いてくれました。

義父母から見ても、義伯父の振る舞いはやりすぎだと感じていたようです。なので、私たちの心配を理解してくれました。

後日、義父が義伯父に確認してくれました。

どうやら義伯父は、本気で「おじいちゃん」と呼ばれることに憧れているようです。あの会食の場で義父が長男と遊んでいるのを見かけて、心から羨ましく感じたとのこと。だから、子どもたちと仲良くなって「おじいちゃん」と呼んでもらえるようになりたかったらしいのです。本当の孫でないことはもちろん承知の上で、今後もおじいちゃんと孫のような付き合いをしたいとのこと。

私と夫が心配していた養子縁組については、全く考えていないし今後も予定はないと断言したそうです。

その話を聞いて、私たちは安心しました。

義伯父は悪い人ではない。
むしろとてもいい人だし優しい。

義伯父が望むのなら、これまで通りの付き合いを続けていこう。子どもたちには、「おじいちゃん」と呼ばせよう。せっかくなら、みんながハッピーになる方法を選びたい。
それが、私と夫が出した結論です。

第3のおじいちゃんとのこれから

私たち一家と義伯父の交流は、もちろん今でも続いています。普段は贈り物を贈り合い、数年に1度、義伯父のもとへ遊びに行きます。

義伯父は子どもたちの成長を楽しみにしていて、子どもたちの顔を見るたび喜んでくれます。細い目がなくなってしまうほどにこやかに笑って、私たちを精一杯もてなしてくれるのです。

うちの子たちは、人に恵まれているな。

優しく愛情深い人たちのおかげで、今日も子どもたちはすくすく育っています。これからもずっと、第3のおじいちゃんと子どもたちが仲良くしてくれるのを、願っています。

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