20211212_にな先輩のプリマジ講座
プリマジスタとしての登録を無事に終えて。
初めてのライブを終えて。
次は、何をすればいいんだろうか。
プリズムストーンに併設されたカフェでジュースを飲むサニ。
外はもう寒いこの季節。
その視線はどこに向いているという訳でもなく、
ただただぼーっとしていた。
「あ、サニちゃんだ~暇なのにな~?」
「あぁ、にな。そんな感じー」
綺麗な色のアイスティーを持ってきたになはサニの前に座る。
「あれ、ぽぽふくんは一緒じゃないのにな~?」
「あぁ、ぽぽふならここに」
そういってコーデのフードの中を見せるサニ。
その中ではぽぽふが丸まって寝ていた。
「おねむなのにな~」
「普段ずっと寝てるんだよね。やっぱ本調子じゃないのかな」
「ライブの後は元気に浮いてるのにな~」
「うん、ライブだよーって起こす時はふにゃふにゃだけど、
終わると元気なんだよねぇ」
「ライブにはちゃんと出てくれるだけいいのになー」
ちょっと目がじとっとするにな。
そういえば、最初の頃に何度か会ったっきりぷにゃの姿を見てない。
「ぷにゃは一緒じゃないの?」
「その話しちゃうのにな~?」
じとり具合が一段と強まる。
「ぷにゃはお勉強が好きだから基本ひきこもってるのにな~」
「そうなんだ。最初の頃はよく一緒にいるからそういうもんかと」
「あの頃はぷにゃが珍しくどこそこ行きたいって言ってきたのにな~
やっとパートナーの自覚が出てきたと思ってたのにな~」
ずずっと吸い込まれていくアイスティー。
これは、地雷を踏んだってやつだろうか。
「ライブにだってあんまりついてきてくれないのになぁ」
「えっと、それどうやってライブしてるの?」
プリマジのステージは魔法で作られている。
とは言っても、基本は運営のシステムが担っているので詳しく知らない。
だがライブの途中に挟むイリュージョンにはパートナーである
マナマナの協力が必要なはずだ。
「ライブ中にパートナーが入るドローン知ってるのにな?」
「うん」
「あれを遠隔操作してるの。本体はおうちでまったりなのにな~」
ずずずっと。アイスティーは全て消えた。
「そんなことできるんだ」
「ぷにゃはマナマナが得意じゃないって言ってたのにな、
だからオメガのシステム? を勉強してマナマナを操作してるとか
言ってたのにな~」
「なるほど分からん」
「になもよく分からないのにな~」
になとしてはちょっと思うところがあるというは、
喋っていた雰囲気から十分に察せた。
ふだんにこにこになになしてるけど、そういう表情もするんだ。
「とと、ちょっとぐちになっちゃたのにな。
サニちゃんの相談に戻すのにな~」
「ぐちはぐちで楽しいけどね」
(悪口はよくない、のことわざ的なのにな)
「ん、なにそれ?」
「悪口はよくないってことなのにな~
まぁまぁ置いといて。サニちゃんは歌が好きだったのにな~」
「そだね。プリマジもそっから入ったし」
元々は配信サイトとかでいろいろ漁ってたけど、
この片田舎で気軽にライブが楽しめる場所があると
雑誌で知ったのがきっかけだった。
「そうなのにな。
じゃあやっぱり、ステージでのライブがメインになるのにな~」
「そうなんだけど、それだけでいいのかなって」
一日にステージを使えるプリマジスタの数には限度がある。
まぁ、都会に比べてここならダブるってことは少ないみたいだけど
それでもいい時間はすぐに埋まってしまう。
「ステージだけだとあんまりプリマジできないってことなのにな?」
「そそ。だからそれ以外でも何かできないかなって、
考えてたんだけど」
「一人でいた時のあの顔はどう見ても考えてない顔だったのにな~」
そうなのだ。
何をしたらいいのか全然思いつかない。
ぽぽふも普段は寝てるからあんまり話し合えないし。
「ふっふっふ、これは先輩プリマジスタのになちゃんが
ひと肌脱ぐしかないのにな~?」
「おぉ、何かいい案ありますか先輩!」
「ふっふっふ、先輩になちゃんに任せるのにな~!」
………………
…………
……
それから数日の間、サニはになに連れられていろいろな体験をした。
コーデショップでいろんなコーデを試着したり、
いろんなSNSにアカウントを作って宣伝したり、
ぷにゃの作った変な道具で怪しい実験をしたり、
迷いネコ探しに奔走したり。
そして今日、ひとつの結果を出した。
「なんていうかさ、ちょっと違うよね……」
「うすうす感じてはいたのにな……」
にな自身も疲れた様子だし、あまり責めないであげよう。
「いろいろやってみるのは楽しかったよ」
「そう言ってもらえると救われるのになぁ」
「でもやっぱ、私はステージが好きなんだなって思っちゃった」
いろんな体験は確かに楽しかった。にながいてくれたおかげもあるだろう。
でも、それだけではやっぱ物足りない。マジになれない。
「サニちゃんって結構戦闘民族なのになぁ」
「歌がすきなだけだよ。
それじゃ、今日のステージ行って来るね」
「元気なのにな~」
プリマジスタとひとくくりにしても。
競技として切磋琢磨してる人たちもいれば
趣味として日常にしてしまう人たちもいるだろう。
ステージはあくまでおまけで、別のゴールがある人もいるかもしれない。
私にとっては、このステージが原点で、目標なのだ。
ここでより輝けるために頑張っていこう。
「サニは、ステージが好き?」
「あれ、ぽぽふ起きたの?」
「うん、サニのワッチャで、起きました」
フードからもぞもぞと出てきて、並走するように浮かぶぽぽふ。
「僕も、サニのステージが好き。わちゃわちゃする」
「そっか、ありがと。ぽぽふのためにも一発行ってきますか」
「うん。僕も、頑張るから」
「マナマナ関係はよろしくね」
「もちろん」
ぽぽふについても、分からないことだらけだ。
どうにもマナマナは本来パートナーとしてしかこっちには来ないのだとか。
記憶喪失というぽぽふには、今のところ私のパートナーとして
こっちに来たという話で表向きには通しているけど。
……ま、難しいことはいっか。
ワッチャを集めていけば、ぽぽふの記憶を取り戻せるかもしれないって
ぷにゃが言ってた気もするし。
今は目の前のステージを楽しもう。