20211130_ぷわぷわな再会
あのクラゲ?に出会ってから、早いことで2ヶ月近く。
11月も終わりに近づき寒くなってきたこの季節。
今日までに、クラスでは大人しくしてたのに急にメッシュ入れて
イケイケになったとややいじられるようになったり、
プリマジのためプリズムストーンに通うとよく出会うになと
ちょっとずつ仲良くなったり。
小さなきっかけでいろいろ変わるものと、なんだかんだ楽しんでる自分。
さてそのきっかけとなったクラゲについて。
ぷにゃ曰く、マナマナはこちらの世界で見つかってはいけない存在らしく。
にな曰く、この辺りの誰かのパートナーという訳でもなさそうで。
つまり、迷子か何かでずっと一人でいるんじゃないかと。
心配半分で探してはいるのだが、全然見つからない。
「そんなお困りなサニちゃんにぷにゃからのプレゼントなのにな~
尋ね人ステッキ~」
その名前大丈夫?
「になが勝手に言ってるだけだから大丈夫なのにな~
ぷにゃによると、この杖の上の部分にマジにまつわるものを入れると
それを使ったマナマナの方に倒れる素敵道具なのにな~」
「ふむふむ。けどあの子のマジにまつわるものって?」
「えい」
「……ったー! 髪! ひっぱった!」
「えへへ、ごめんなさいなのにな~」
笑顔で謝罪の言葉だけを述べるになは、手際よく私の黄色い部分の髪を
ステッキの上の部分に入れた。
そしてステッキを立たせ、そっと手を放すと。
ぐるんぐるん。ぐるんぐるん。
ぱたっ。
「あっちなのになー!」
「……まぁ、とりあえず行ってみようか」
時々ステッキに導かれながら歩くサニとにな。
いつかあの子やになと出会った公園にたどりついたが、
そこからはステッキの倒れる方向が定まらなくなってきた。
ぐるんぐるん。ぐるんぐるん。
ぐるん……ぐるん……ぐてっ。
「安定しないのにな~」
「ぷにゃの道具ってさ、どれくらい信用できるの?」
「んー、マジが絡まないとすごいのにな~」
「マジが絡むこういう道具は?」
「五分五分ってところなのにな?」
「そっかぁ」
何度も倒した内に壊れたってこともあるだろうさ。
きっぱり諦めて目で探し始めようとすると。
「あ、あ、あ、あのぉ……」
いつぞやのか細い声のほうから現れた。
「「あぁ!」」
「ひゃぁぁっ!?」
つい大声を出してしまったサニとになに怯えて逃げ出しかける水色。
「あぁごめん、驚かせちゃったね。大丈夫?」
「は、は、はい……すいません、その、いろいろと……」
改めてちゃんとその子を見る。
クラゲ、というよりはてるてる坊主みたいな。
顔みたいなボール部分に、水色の布をまとっているような子だ。
名前はぽぽふと言うらしい。
サニ達に出会うあの日の少し前に、あの公園で目覚めたという。
だが自分がどうしてそこにいるのか。
その前は何をしていたのか。
何も思い出せず、不安で仕方なく、そして力もあまり出ず、
とりあえずチュッピに見つからないようにと飛び回っている内に
意識を失った状態で浮いていたらしい。
「そこに私がぶつかっちゃった訳か」
「みたい、です……で、たぶんそのぉ、僕のせいですよね、それ……」
伏せがちな目で見ているのはきっとメッシュのことだろう。
「んー、たぶん? これ、戻せたりする?」
「え、えっと……ごめんなさい、僕、魔法は苦手みたいで……」
まぁ、そんな気はちょっとした。
「そっか。うん、気にしなくていいよ。もう慣れてきたし」
「えっ、そうなん、ですか……?」
「元々興味がなかったって言ったらウソだしね。
染めなくても勝手に維持してくれるみたいだし、うん」
ちょっと怖いところもあるが、お得と考えておこう。
「あれ、それじゃサニちゃんはなんでぽぽふくんを探してたのにな?」
くん、でいいのだろうかこの子は。
「いや、なんていうか心配だったんだ。迷子っぽかったし。
ぽぽふはさ、今どうやって暮らしてるの?」
「えっと……あの建物の近くで、漏れ出すワッチャをもらいながら……」
そう言って見つめたのはプリズムストーンだ。
えっと、私たちチュッピの感情が高まると出るのがワッチャだっけ。
で、マナマナはそれをエネルギーにしてマジを使うと。
ぷにゃに教わったところだ。
「んん、ワッチャだけで生きてるのにな~? おなか空かないのにな?」
「はい、僕はそれで、大丈夫です。
ごはん、食べたくなる時もありますが……」
「それはあんま大丈夫って言わないんじゃないかな」
乗りかかった船だ。
元からその気でいたから、ひとつ提案をしようとして。
「ねぇサニちゃん」
覗きこむになの視線からも、そういう意思が見えた。
よし、腹を決めよう。
「うん、そのつもり」
「そうなのにな!
じゃあ、サニちゃんも今日からプリマジスタなのにな~」
……んん?
「えっと、なんで?」
「えっ、サニちゃんこの流れはぽぽふくんを
かくまってあげるんじゃないのにな!?」
「いや、そのつもりではあるんだけどさ」
「えっ、ほんと、ですか……!」
「じゃあやっぱプリマジスタなのにな~」
「そこがよく分からない」
にな曰く。
マナマナは普通のチュッピに存在を知られていけない。
知られたことがばれると、こう、いろいろとまずいらしい、うん。
だからそれをどうにかするための大義名分がいると。
それがプリマジスタになる、とのことだが。
「いやいやいや、私がプリマジスタなんて、そんな……」
「ここにきて怖気づくのはダメなのにな~
ぽぽふくんは、プリマジスタのパートナーになるのは
オーケーなのにな~?」
「ぼ、ぼくは、構いませんというか、ありがたいというか……
ワッチャをためられるのは、助かります……」
そうなんだ。
「でもさ、わたしがかくまって面倒みるにしても、
ワッチャはになからもらっても……」
「それはぷにゃが許さないのにな~」
そうなんだ……
「サニちゃんだってプリマジスタ興味あるはずなのにな~?」
「そ、それは……」
ないと言えばウソになる。
でも、あのステージに立つのは、夢のある人だけだ。
ただプリマジが好きなだけではなれないことは、知っている。
「私は知ってるのにな~サニちゃんのカバンにこれが入っているのを~」
そう言ってひらひらさせているのは。
「えっ、ちょっ、うそ! いつの間に!」
氏名の欄に私の名前が入った、プリマジスタの申込書。
いや、うん、自分で書いて持ち歩いてたやつなんだけどね。
「サニちゃん、さてはこの空欄について迷ってるのにな~?」
そう言って指さすのは、唯一空白の項目。
『あなたの夢をお書きください』
だって。
歌は好き。ダンスも好き。コーデも好き。プリマジが好き。
でも。
申込書を手に入れて書いたいつかの日に。
その先にある夢が、思いつかなかった。
プリマジは全てのコーデを集めると夢が叶うと言われており、
プリマジスタたちはステージを重ねコーデを集めている。
夢のために日々努力している。
だから輝いているのだ。
「その、思いつかなくて……」
「サニちゃんがプリマジを心底楽しんでるのは、
ステージのになにも分かっちゃうのにな~
その気持ちだけでもいいんじゃないのにな~?」
えっと、ステージから分かるものなの?
「分かるのにな~
観客のみんなの笑顔は結構見えるものなのにな~」
「そう、なんだ」
想像もできない世界。
「手段が目的でもいいのにな~
まずは楽しんでみる、夢はそのうちきっと見つかるのにな~」
「でもそれじゃ空欄のままじゃ……」
「そこは、ものは言い様なのにな~」
そう言ってになは別の紙を取り出した。
それもまた申込書のようで。名前のところには『赤築弐勿』と書いてあり。
私のでは空欄のそこには。
「世界にもっと笑顔を増やしたい」
「のにな~」
漠然と、しすぎなようで。
そうなんだろうと思えた。
今もこうしてひとつ、増やして見せたのだから。
「大層な夢なんて必要ないのにな~思ったことを書けばいいのにな~」
「そっか、うん。そうだね」
なんとなく思いついた言葉もある。
そうなったら、改めて。
「ねぇぽぽふ。その、改めて。パートナーになってもらえる?」
「はい。こちらこそ……!」
「ありがと、よろしくね」
そういってぽぽふは、触手? を伸ばして、私と握手した。
変な出会い方はしたけど。分からないことも知らないことも多いけど。
こうするのがきっと、一番楽しいはずだ。
──申込書───────────────────
しめい しんかいさに
氏名 信開サニ
誕生日 3月3日
血液型 O
魔法が使えるとしたらどうしますか
空を飛んでみたい
自己紹介をしてください
歌が大好きです。聴くのも歌うのも。
どんなプリマジスタになりたいですか
好きな歌を活かせるような
好きな食べ物
からあげ
あなたの夢をお書きください
楽しい時間をたくさん作りたい
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