
『MaXXXine』鑑賞
タイ・ウェスト監督による『X エックス』『Pearl パール』に続くミア・ゴス主演三部作の最後を飾る完結編。
A24製作として初の続篇モノで、一作目からたった2年というハイペースでトリロジーを撮り終え完成させた本作。

一作目『X エックス』での惨劇を生き延びたマキシーン・ミンクスのその後を描く最終章の舞台は、実在した連続殺人鬼ナイトストーカーや悪魔主義崇拝のサタニック・パニックが世間を震撼させていた1985年のLAハリウッド。
成人向けの新作ホラー映画『ピューリタン2』の主演オーディションに合格し、ついに本物のスターになるという夢を実現しようとしていたマキシーンだが、彼女が秘密にしていた過去がナイトストーカーの影と共に忍び寄る…というあらすじ。
一作目『X エックス』では『悪魔のいけにえ』を筆頭とした70年代グラインドハウスホラーへのオマージュ、二作目『Pearl パール』では1950年代のミュージカルやディズニー映画などのテクニカラー風の映像や演出にインスピレーションを受けていたが、
今回は70年代後期のジャッロ映画および80年代のスラッシャーホラーの要素とスタイルで以てマキシーンの物語を完結へと導いてゆくことになる。

「ハリウッドスターを夢見ることの危険な魅力とその裏にあるポルノと暴力」という三部作に通底して描かれるテーマは本作でも強調されてるものの、
正直ミア・ゴスの演技もストーリー展開も個人的に大傑作だった前作『Pearl パール』のそれを超えることはなく、また『X エックス』ほどスラッシャー要素が強いわけではないので「ホラー映画としての完成度」は三部作の中で最もパンチが弱く感じられた。
物語の背後に誰がいるのかは一作目を観ていれば大方の予想がつくし結局それを裏切ってこないので、舞台の背景にナイトストーカーがLAを跋扈しているという設定も雰囲気作りに貢献していてもサスペンスとしてあまり有効に機能してるとは言い難い。
ただ相変わらずザラザラとした粗いフィルムの質感や、音楽、衣装、当時のハリウッドの街並みといった能天気で安っぽかった80年代という時代の再現に抜かりはなく、
スラッシャー映画へのオマージュ、とにかくヒッチコックの『サイコ』への敬愛っぷりは凄く良かった。
またタイ・ウェストで80年代オマージュホラーといえば『The House of the Devil』を忘れるわけにはいかない。

『チャイナタウン』のジャック・ニコルソンみたいなケヴィン・ベーコン、
かつら丸出しなジャンカルロ・エスポジート、
その辺の女優よりも存在感が抜きん出る映画監督役のエリザベス・デビッキなど、
豪華なキャスティングが花を添えてて前二作から予算増えたんだろうなーとわかる(いやしかし『X エックス』が100万ドルの低予算だったとか信じられない)。
ホールジーやリリー・コリンズが思いの外チョイ役だったのは残念。
展開も予想通りで裏切りもなく三部作の完結編として前2作と比べるとパンチが弱いと感じるものの、
21世紀の令和にこんなグラインドハウス映画を提供してくれたタイ・ウェストとA24に感謝。