機動力のある事業開発と新産業づくり|SUNDRED Industry-Up Days: Spring 2021 Day 2 レポート
みなさん、こんにちは。SUNDREDパートナーの深田昌則です。
SUNDREDによる半年に一度のカンファレンス「Industry-Up Days」が終了しました。今年はWithコロナ対応としてオンライン開催とさせて頂きました。初めての3日間開催と言う大型バージョンでした。これまでSUNDREDが取り組んできたたくさんの「産業づくり」を一度に詰め込もうとした反省もあったため、今回は3日間開催としたんですね。そのため、6つの新産業をじっくり話せるようなフォーマットになりました。さらに各日にはキーノートと称するテーマディスカッションのコーナーも設けていたので、その日ごとの中心的テーマも分かるようにしていました。
結果的には、本当に盛りだくさんの内容となり、長時間お聞きになった皆さんは本当にお腹一杯になったのではないでしょうか。またもちろん、興味のある部分だけつまみ食い的に参加された方も多かったと思います。それはそれでいいんです、そのために我々のようなDay司会(その日を総括する司会というかコメント役。実際には別に総合司会がいた)が、こうやってサマリーをまとめているんですよね。また、インタープレナーとして参加している「公式イベントレポーター」による記事もどんどん掲載されていきますので、そちらもご参照ください。
「新産業の科学 – エコシステム発想の事業開発 – 」
さて、私が司会を務めたDay 2のテーマは「新産業の科学ーエコシステム発想の事業開発」でした。企業内でイノベーションや新規事業開発の取り組んでいるみなさんには、それぞれ悩みがあるのではないでしょうか。その中でも、個社で取り組むことの限界や、さらに事業を成長させるためのアライアンス戦略など、様々に複雑な課題も山積しています。現在はさらにデジタル・トランスフォーメーションの時代でもあり、新しい社会システムを創造していかなければいけないと言う経営環境でもあります。そんな中、企業内で新規事業開発に取り組んでいたり、その仕組みを国際的な観点から整備しようと言うゲストにもお越し頂き、パネルディスカッション形式のキーノート・セッションを開催しました。
キーノート・ディスカッションに登壇したのは、日立製作所/ハピネスプラネットの矢野和男さん、Japan Innovation Networkの西口尚弘さん、パナソニック/BeeEdgeの深田昌則(私です!)と、SUNDRED代表の留目真伸さんがモデレーターとして参加しました。
エコシステム発想の「4象限モデル」と、企業内では「海兵隊」的な新規事業の取組み
まず、留目さんの提唱する4象限モデルとは「Healthcare(健康維持)、Asset(資産)、Self Development(自己開発)、Environment(生活環境)」にもとづく新作業テーマ量産のフレームワークのことであるとの説明があり、これらの新産業はすべて個社ではなく「エコシステム発想」で構想しないと事業開発がスケールしない点を強調。
矢野さんからは、社内事業開発や社内ベンチャーとしても取り組んできたが、むしろ企業内で新事業を成長させるには米軍の「海兵隊」的な機動力を持った別部隊(いわゆる出島組織)が必ず必要。西口さんはこれは世界中で共通課題だとして、イノベーション・マネジメントシステムISO56000シリーズの整備に取り組みながら、イノベーションを企業活動のメインストリームに位置づける必要性を強調。私は新しい資本主義のカタチを先取りする取組みとして、Game Changer CatapultとBeeEdge導入した兼務と資金調達の新しい方法論と、社会課題起点とパッション、エフェクチュエーション的な活動を紹介。
その上での議論として、具体的には研究開発と事業開発を同時に推進することを前提に、データ獲得を元に新しい産業を生み出すコミュニティー作りがこれからの事業開発=新産業開発が重要だという議論が続きます。企業に属する個人の役割も、社会や企業の「OS(オペレーションシステム)」をアップデートし、つくりたいという未来をつくるためにオープンに越境しながら社内外で新しいルールやしくみを楽しく作っていく時代になっています。企業や組織を実際に今現在変革しようとしている現場の話を元に、理解が広がったセッションとなりました。
「ハピネス・シフト」を提唱する新産業「ハピネスキャピタル産業」
キーノートセッションに続いて、SUNDREDが進める新産業プロジェクトを2件紹介。Day 2は「ハピネスキャピタル産業」と「プレコンセプションケア産業」を紹介しました。
「ハピネスキャピタル産業」は、人のハピネス度を様々な方法で測定し、行動、食、医療、健康、生産性など、複数のデータを組み合わせることでハピネス・トランスフォーメーション(HX)を目指すプロジェクトです。
慶応義塾大学システムデザインマネジメント研究科の前野隆司さん、キーノートにも登壇頂いたハピネスプラネット/日立製作所の矢野和男さん、三井不動産の光村圭一郎さんを交えて、幸福・ハピネスとは?Well-beingな暮らしとは?を議論しながら、計測可能で科学的なハピネスへの実現の道を事業として取り組む話となりました。特に単なる方法論としての「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」から「HX(ハピネス・トランスフォーメーション)」へ、SUNDREDとしては留目さんから「ハピネス・シフト」の社会実装を始動するという発表がありました。
妊娠について考え、ケアしていく社会作りに取り組む新産業「プレコンセプションケア産業」はいま始まったばかり
「プレコンセプション」とは、受胎のこと。「プレコンセプションケア」は女性やカップルが妊娠について考えるとともに、社会としてそれをケアしていくことです。
国立成育医療研究センターの荒田尚子さん、MEDERIの坂梨亜里咲さん、ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ ジャパンの曽山明彦さん、北海道大学COI/日立製作所の吉野正則さんに加え、モデレーターとしてSUNDRED CSOの吉田直樹さんが参加して議論を行ないました。
少子化が大きな社会課題と言われながらも、日本人の妊娠・出産に関する知識レベルは他国に比べて低く、また社会の仕組みもまだまだそれをサポートしているとは言い難い状況だということに改めて気づかされました。そこで我々は何ができるか、すべきかと言う議論が進みました。
女性やカップルに将来の妊娠のために健康管理を提供するためには、医療・教育・地域保険・職域活動を含む全体の社会システムの構築が必要になり、まさにエコシステム発想の新産業作りが必要になっていると言う話です。今年は国としても成育医療基本法の基本方針も設定され、まさに今まず「対話・共話」から共創プロセスを開始したばかりと言う新しい新産業分野でした。
新産業共創に取り組むSUNDREDに参加する方法も紹介
新産業セッションの終了後には、企業としてエコシステム発想の新産業作りに参画頂く方法に加え、個人として越境して繋がる「インタープレナー」として参画頂く方法も紹介されました。SUNDREDでは、各企業から新規事業部門や研究開発部門の方々に新産業共創プロセスに参加頂いていますが、対話・共話によって新しい産業を生み出していく活動にまだまだ新しくご参加頂けます。企業によっては新しい産業のプロジェクト自体を生み出していきたいと言う方もおられるかも知れません。スタートアップやインタープレナー、産官学の有識者が入り交じり、新しい産業を生み出していく活動にご興味がある方は、ぜひこちらからお問い合わせください!