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「さきどり佐知子の早く知りたかった話」

ついて行くって決めたの。

何があっても。


グローブ島に向かう道のりは、まるで空き缶をたくさんつけて走るハネムーンドライブのようだった。


素晴らしい景色、湿度の低い乾いた風、そしてチャイニーの背中。


このまま、ずっとこのまま。

そう思っていると、チャイニーが振り返ってくれて、僕もそうだよって言ってくれた。


でも、チャイニーの運転手するベスパは、どんどん進んで行った。どこまでも速く、どこまでもスムーズに、たくさんの景色を超えて行ったの。それが少し寂しかった。


でも、行かないと、チャイニーも私も先に進めないって事だけは確かだっから。


行かなければ、幸せには絶対なれない。

行ってしまったら、地獄を見るかも知れない。

だとしたら、行くしかない。


分かってる事は。

今、私達は運命を共にしてる。


それだけが嬉しくて、チャイニーにしがみついていたの。


地獄のハネムーンドライブ。


そんな気分だった。


途中、森の中にあるバンガローによって、少し休憩したの。チャイニーは、そこで、ありとあらゆる準備をしてた。

私は、少し眠った。


夜明けと共に、私達は、また景色をいくつもいくつも超えて行った。


何気ない風景の連続に、涙が止まらなかった。


映画じゃない本当の世界がずっと続いて、そこには、悲しみも苦しみも、そして、時に大きな喜びもあると、勝手に思ってた。


そう、勝手に。


何も知らないくせに。

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