第3話 「もうひとりのお母さん」
僕のピアノの先生は、家では兄達だった。
特に、1番上の兄は、細かく教えてくれたけど僕には普通に教えても、無理だという事が早くに分かっていたと思う。
ある時から、譜面の読み方や、指使いの細かい指導は、しなくなった。
自分が当たり前に出来た事が、こんなに出来ないものなのかと、途方に暮れている表情を何度かしていた。
怒ってみたり、褒めてみたり。
とにかく、僕は全然上手くならなかった。
だから、そのうち、1番上の兄は、新しい練習法を編み出した。
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