「さきどり佐知子とライオンの子供」
大変だったでしょ?
今まで。
人の視線の動き、ちょっとした気持ちの変化、そして、弾丸の行方。
全て、あなたは、無意識に見えている。
だから、苦しかったのよ。
エリーは、私にそう言って、またキャンディ弾をいくつもピストルに詰めた。
私は、今までの人生を少し振り返った。
確かに、そうかも知れない。
特段に運動神経も無かったのに、相手のサインがよめるってだけでバレーボールチームのキャプテンをさせれた事や、小さい頃、飛び立つ鳥達の目の動きが、凄く色んな所を見ている事に気づいて怖くて仕方なかった事。
才能と言われれば、そうかも知れない。
でも、知らなかったら何の意味もない。
そんな事を少し考えてたら、エリーが私に、キャンディ弾の詰まったピストルを渡したの。
撃ってみて。
私が動揺していると、新しいワンダーピープルの部隊が、次々に現れた。
エリーは、大きな声で言ったわ。
足を開いて、腰を落として、ゆっくり狙って!
私は、無我夢中だった。
とにかく、エリーの指示通りに動いた。
気づけば、全てのキャンディ弾はワンダーピープル達の足の小指に正確にヒットしていたの。
しばらくして、ワンダーピープル達は、全て地面にうずくまっていた。
こわばってピストルから離れない私の指を、優しく丁寧に、エリーは、外してくれた。
完璧ね。
そのピストルは、もう、あなたのものよ。
そう言って、エリーは、とても大きなバイクに乗って、去って行った。
チャイニーは、エリーの迅速な応急処置のおかげで、見事に回復してくれた。
私の手は、まだ震えていたわ。
僕達も、先へ急ぎましょう。
チャイニーは、そう言って立ち上がって、私の手を引っ張ってくれた。
ボロボロになったベスパは、何とか動いてくれて、私達は先を急いだ。
鈍感になるように、無意識に意識して来たのかも知れない。小さい頃から。なんだか、色んな事が、いつも恐くて。
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