「さきどり佐知子にチャイム」
ラバリッツホテルの、あの銃撃戦の日から、誰かにお金を支払ってもらって、まだホテルにいたわ。
色んな事がこんがらがって、部屋で身支度をしてた。そして、部屋のベルが鳴ったの。
恐くて、声が出せないでいると、ガチャっとドアノブの回る音がして。
部屋に入ってきた足音がして。
すみません、先を急ぐので、ドアを開けさせていただきました。
そう言って、入ってきたのが、あの目つきの鋭くて、いつもキャメルマキアートをホテルのカフェで飲んでいて、銃撃戦の時、真っ先にウェイトレスをかばって、助けて消えて行った、あの男だった。
阿部チェリーと申します。
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