「さきどり佐知子のテーブル」
ラバリッツホテルは、あの街でもっとも高級なホテルのひとつよ。
ピロティのシャンデリアは天まで高く、上品な輝きを忘れないの。毎日、16階の部屋から見える最高の景色。
そう。
昼は遠くに海が見えて、ヨットがちらほら。夕暮れには、カモメが鳴くの。綺麗に。
夜になると、耳を澄ますの。
微かにトランペットの音が聞こえるの。
にぎわう夜の社交場から、微かに洩れて聞こえる楽しそうなトランペットの音色。
そして、朝早くから人でごった返す、1階の大きなカフェ。
そのカフェは全て、白で統一されてて、中二階の大きな窓から洩れる柔らかい陽射しがそれぞれに模様をつけるの。
テーブルや、バターナイフ、誰かの上着まで。
大金をはたいて豪華で優雅なホテル住まいもあと1日になった頃。
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