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「さきどり佐知子と遊園地」

とても穏やかで、誰からも愛されるような人。


それが、ジョンペルチアーノの表の顔。


私が出演した新しい映画の舞台挨拶に、彼は来ていたの。VIP席に、パートナーと手をつないで座っていたわ。


舞台に立っている間に、そっと共演者の人に聞いたの。


あの人は、どんな人?


って。

そしたら、絶対に誰も逆らえない人だって、小さな声で教えてくれたわ。


その日の夜に、豪勢なパーティーがあったの。


映画の協賛についてくれた資本家や、企業家の人達と、その映画に出演した私達や、監督、スタッフの人達。他にも、たくさん色んな人達がシャンパンを楽しんでいたわ。

そこに、彼は、ひとりで来てたの。

私は、遠目で彼の挙動をずっと見てたの。どんな権力を持っているのか、本当に誰も逆らえないのか。それを少しでも確認したかったの。


たくさんの人達に話しかけられたけど、私はずっと、うわの空だった。

そのうち、ステージではショーが始まった。

華やかな楽団が、誰もが踊れるようなダンスナンバーを次から次へと演奏したの。みんな、楽しそうに、思い思いに踊っていたわ。


私は、ステップなんて、ひとつも知らなかったから、ただシャンパン片手にじっとしてたの。

その時、急に私の手を取って彼が言ったの。

しばらく、君の手を借りてもいいかな?


って。

そして、ジョンペルチアーノと私は、しばらくの間、楽団の音楽に任せて踊ったの。


とても、上手なステップだった。


踊る事を何も知らない私を、透き通るような眼差しで、ゆっくりと丁寧に、時に強引にエスコートしてくれた。


しっとりとした音楽に変わった時に、私の耳元で彼は、言ったの。

お金が無くても、君を幸せにする。

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