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「さきどり佐知子の恋じゃない」

毎日、決まった時間に彼は訪れるの。

ラバリッツホテルの格式高い1階のカフェに。

いつも険しい顔してさ。

キャメルマキアートをオーダーするの。

毎日ビシッとした黒のスーツで、髪は綺麗に横分けててさ。


また、会いたいって思うようになったの。


でも高いホテルでさ、お金も少なくなってきて、そろそろホテルに居るのも、やめなきゃって思いはじめてた。

もっと稼いでればよかった。なんて思ったわ。

あと3日。

あと3日でこのホテルを出なくちゃ。

それまでに、何か、ひと言でも彼と話がしたい。


そう思ってた。

でも、無理ね。ただ見てるだけ。


優雅な人生を送ってるフリしてさ。
余裕のある生活なんて、別に憧れてなかったけど、あの場所は嘘でもそうせざるおえないのよ。


わかるかな?こんな気分。

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