「さきどり佐知子はバニラ」

そう。

あの映画…

大事な仕事だからって、チャイニーはいつになく厳しく、台本の読み合わせに付き合ってくれた。映画のタイトルを聞いた時、どうせ売れない映画だろうなって思ったわ。

だって…

レッドローズ〜愛しき者よ去れ〜

ってタイトルで、なんか、古臭く感じて。

大事な仕事って、もっとお洒落な映画かな〜って、勝手に思ってたから。

でも、準主役だったから。
物凄く頑張ったわ。

チャイニーも、巨額の資金がプロモーションに使われるって言ってたから、もしかして私、売れるのかな〜なんて思って、何度もエステにも通ったわ。

でね。
キャストの顔合わせの日に、あの人が来たの。

そう。

プリマ…

プリマ・インザクライシス。

あの、大スターの。

キャスト顔合わせの日は、いきなり記者会見だったの。主要なキャスティングされてる役者さん達が揃って、大きなホテルの大会場で、たくさんのフラッシュを浴びて。

でも、殆んどのフラッシュは、プリマに向けられていたの。

初めてプリマを見た時。
凄く紳士でハンサムだって思った。

白いスーツと白いハットでバッチリ決めて。

本当の映画スターだった。取り巻きが何人もいて、でも全然、偉そうじゃなくて。

撮影を楽しみましょうって。

私に、笑顔で言ってくれた。
顔が、凄く赤くなったのを覚えてる。